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「コロナ特例リスケ」、4月1日付で一部改訂

 

 中小企業庁は、コロナ禍での中小企業向け資金繰り支援策の一つである「新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール」(特例リスケ)を4月1日付で一部改訂する。
既存の金融債務の返済猶予の調整に加え、「ウィズ・ポストコロナ」を見据えて、事業再構築に向けた取り組みも後押しする。

◇4月1日付で一部改訂
制度を所管する中小企業庁は、昨年末からコロナ禍の長期化を見据えて枠組みの再検討を進めていた。すでに中企庁は支援窓口である中小企業再生支援協議会(支援協)に意向を伝えており、4月1日付で正式に改定される。
新制度の名称は「改訂版新型コロナ特例リスケジュール支援」(以下、改訂版特例リスケ)。現行の特例リスケは、コロナ禍で業況が悪化した企業の資金繰り維持に重きを置いていたが、改定版特例リスケでは、事業の維持や改善に向けた企業の取り組み支援を強化する。具体的には、事業の現状認識や今後の計画などを記載する「事業継続アクションプラン」の策定を支援協が支援し、モニタリングする。アクションプランの策定は任意。
これまで支援協は、企業と金融機関との間の調整を支援の軸にしてきたが、改訂版特例リスケでは事業面の助言にも踏み込む。
改定版特例リスケは、企業と金融機関の対話の円滑化に繋がり、金融機関の持ち込みによる一次対応の増加も期待される。一方、アクションプラン策定や対話による事業価値毀損の「気付き」が、再チャレンジや廃業も含め、存続以外の選択に繋がることも予想される。今後はこうした企業へのサポートが必要になる可能性もある。

◇窓口相談、過去最多を突破
現行の特例リスケは、新型コロナによる緊急事態宣言や移動制限などを受け、資金繰りが急速に悪化した企業への支援が目的で、2020年4月1日から運用が始まった。コロナ禍で外部環境が大きく変動したことを踏まえ、事業改善の可能性を支援決定の判断材料としていないことが特徴だ。
支援協には、20年4月の運用開始から21年2月末までに4,262件の窓口相談(特例リスケのみ)が寄せられている。全ての窓口相談の総数は5,197件にのぼり、03年に支援協が設置されて以降、最多だった13年度の4,128件をすでに突破している。

◇「ゾンビ企業」批判も念頭に
リスケ支援を巡っては、リーマン・ショック後の2009年12月に施行された「中小企業金融円滑化法」が企業倒産の抑制に大きく繋がった。
特例リスケを含め、政府や自治体、金融機関の手厚い資金繰り支援が奏功し、2020年4月-21年2月の倒産件数は6529件(前年同時期比17.2%減)にとどまっている。年度(4-3月)でも1990年度(7157件)以来、30年ぶりに8000件を下回る公算だ。
金融円滑化法は、事業が改善せずリスケを繰り返す「ゾンビ企業」を生み出したとの指摘もある。改訂版特例リスケはこうした批判も念頭に、事業改善へのサポートを強化する。

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