• TSRデータインサイト

「負債1,000万円未満の倒産」調査(2020年1-11月)

 2020年1-11月の「負債1,000万円未満」の企業倒産が、583件(前年同期比20.9%増)と、600件が目前に迫った。すでに、10月には2000年以降で年間最多だった2010年の537件を上回っている。
 産業別では、最多がサービス業他の282件(前年同期比39.6%増)で、全体のほぼ半数(構成比48.3%)を占めた。業種別では、繊維工業(1→6件)、繊維・衣服等卸売業(6→11件)、織物・衣服・身の回り品小売業(12→15件)など、コロナ禍で打撃を受けたアパレル関連や飲食業(56→95件)などで増加が目立つ。
 原因別では、「販売不振」が416件(構成比71.3%)で最も多かった。業歴が浅く、事業基盤を確立できないまま、本業不振で躓いた「事業上の失敗」も37件(同6.3%)発生した。
 新型コロナ感染拡大に伴い、国や自治体、金融機関からの支援策で一時的に資金繰りが緩和した企業は多い。負債1,000万円以上の企業倒産は、7月から5カ月連続で前年同月を下回り、2020年は31年ぶりに7,000件台にとどまる可能性が高まった。その一方で、負債1,000万円未満の企業倒産は小・零細規模の企業、商店を中心にしており、2020年は年間で初めて600件を突破することが確実になった。
 コロナ禍の収束が見えないなか、『新型コロナ』第三波の広がりも懸念材料だ。もともと過小資本で、経営基盤が脆弱な小・零細規模の経営環境はより厳しさを増している。業績回復が遅れるなかで、新型コロナの支援効果は次第に薄れつつあり、負債1,000万円未満の倒産動向に注意が必要だ。

  • 本調査は2020年1-11月に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、通常の「倒産集計」(負債1,000万円以上)に含まれない負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。

1-11月で合計583件、年間で600件の大台に乗せる可能性

 2020年1-11月の「負債1,000万円未満」の企業倒産は、583件(前年同期比20.9%増)に達した。2000年以降、年間最多の2010年(537件)を10月に上回り、年間で600件台がほぼ確実になった。
 四半期別では、1-3月134件(前年同期比0.7%増)と微増だったが、緊急事態宣言発令で外出自粛や営業時短などの影響が直撃した4-6月は168件(同51.3%増)に急増、7-9月も187件(同36.4%増)と大幅に増えた。
 10-11月は緩やかに経済活動が戻り、94件(同6.9%減、前年同期101件)と減少に転じた。
だが、かき入れ時のクリスマス商戦、年末商戦を迎えた時期に第三波が襲来し、動向は再び流動的になってきた。
 負債1,000万円未満の倒産は、甘い経営計画で創業から日が浅い企業、後継者が不在で事業承継がスムーズに進まない企業も少なくない。その分、環境への耐性が弱く、推移が注目される。

1000万未満

産業別 10産業のうち、6産業で増加

 産業別では、建設業、小売業、金融・保険業、不動産業を除く6産業で、前年同期を上回った。
 最多は、飲食業(56→96件)などを含む「サービス業他」が282件(構成比48.3%)で、ほぼ半数を占めた。
 次いで、「建設業」81件(同13.8%)、「小売業」59件(同10.1%)、「卸売業」52件(同8.9%)、「情報通信業」50件(同8.5%)と続く。
 増加率では、最高が「卸売業」の67.7%増(31→52件)。次いで、「サービス業他」39.6%増(202→282件)、「情報通信業」31.5%増(38→50件)、「運輸業」30.0%増、「農・林・漁・鉱業」25.0%増、「製造業」11.1%増の順。

形態別 破産の構成比が97.0%

 形態別では、「破産」が566件(前年同期比20.4%増、前年同期470件)で最多。倒産の97.0%(前年同期97.5%)を占めるが、前年同期より0.5ポイント低下した。
 次いで、「民事再生法」の11件で、すべてが個人企業の小規模個人再生手続きで、法人はなかった。
 このほか、「取引停止処分」「特別清算」が各3件。
 負債1,000万円未満は、体力が乏しい小・零細企業がほとんどだ。業績低迷から抜け出せず、先行き見通しも立たずに事業継続を断念し、消滅型の破産を選択するケースが多い。
 また、代表者の個人破産に合わせた法人(企業)の処理、代表者の死亡や体調不良、長年にわたり実質的に休眠状態だった企業の清算も散見される。

原因別 販売不振が7割以上

 原因別では、「販売不振」が416件(前年同期比14.2%増、前年同期364件)。倒産に占める構成比は71.3%(前年同期75.5%)で、前年同期より4.2ポイント低下。
 次いで、「他社倒産の余波」が63件(前年同期比50.0%増、前年同期42件)。グループの中核企業に連鎖し、倒産するケースが大半。
 また、「事業上の失敗」が37件(同23.3%増、同30件)。業歴が浅く、事業基盤を築くまでには至らなかった企業も多い。
 そのほか、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」が25件(同212.5%増、同8件)。代表者の死亡・病気などを含む「その他」が21件(前年同期16件)。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

建材販売業の倒産 コロナ禍の2倍のハイペース コスト増や在庫の高値掴みで小規模企業に集中

木材や鉄鋼製品などの建材販売業の倒産が、ジワリと増えてきた。2025年1-7月の倒産は93件で、前年同期(75件)から2割(24.0%)増加した。2年連続の増加で、コロナ禍の資金繰り支援策で倒産が抑制された2021-2023年同期に比べると約2倍のハイペースをたどっている。

2

  • TSRデータインサイト

「転勤」で従業員退職、大企業の38.0%が経験 柔軟な転勤制度の導入 全企業の約1割止まり

異動や出向などに伴う「転勤」を理由にした退職を、直近3年で企業の30.1%が経験していることがわかった。大企業では38.0%と異動範囲が全国に及ぶほど高くなっている。

3

  • TSRデータインサイト

女性初の地銀頭取、高知銀行・河合祐子頭取インタビュー ~「外国人材の活用」、「海外販路開拓支援」でアジア諸国との連携を強化~

ことし6月、高知銀行(本店・高知市)の新しい頭取に河合祐子氏が就任した。全国の地方銀行で女性の頭取就任は初めてで、大きな話題となった。 異色のキャリアを経て、高知銀行頭取に就任した河合頭取にインタビューした。

4

  • TSRデータインサイト

ダイヤモンドグループ、複数先への債務不履行~蔑ろにされた「地域イベントの想い」 ~

ライブやフェスティバルなどの企画やチケット販売を手掛けるダイヤモンドグループ(株)(TSRコード:298291827、東京都、以下ダイヤモンドG)の周辺が騒がしい。

5

  • TSRデータインサイト

2025年1-8月の「人手不足」倒産が237件 8月は“賃上げ疲れ“で、「人件費高騰」が2.7倍増

2025年8月の「人手不足」が一因の倒産は22件(前年同月比37.5%増)で、8月では初めて20件台に乗せた。1-8月累計は237件(前年同期比21.5%増)に達し、2024年(1-12月)の292件を上回り、年間で初めて300件台に乗せる勢いで推移している。

TOPへ