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『後継者難』の倒産状況調査(2020年1-11月)

 国や自治体、金融機関の資金繰り支援で、企業倒産はバブル期並みの低水準に抑えられている。しかし、代表者の高齢化が進み、後継者不在の『後継者難』倒産が急増している。
2020年1-11月の『後継者難』倒産は340件(前年同期比45.2%増、前年同期234件)に達し、調査を開始した2013年以降、初めて300件台に乗せた。
代表者の平均年齢が年々上昇し、2019年は62.1歳に上昇した。経営不振の企業では同族継承や後継者育成が進まず、事業承継の準備が後回しになっている。こうした状況を反映し、代表者の死亡や、体調不良など健康問題で事業継続を断念し、倒産や廃業を決断するケースが増えている。
2020年1-11月までの『後継者難』倒産は、代表者などの死亡が149件(前年同期比29.5%増)、体調不良が120件(同41.1%増)と、この2要因だけで269件(同34.5%増)を数え、 『後継者難』倒産の約8割(構成比79.1%)を占めた。
産業別では、最多が建設業の78件(前年同期比69.5%増)。次いで、サービス業他68件(同19.2%増)、卸売業60件(同66.6%増)と続く。
また、業歴別では、1980年代以前の設立(創業)で業歴30年以上の老舗が167件(前年同期比56.0%増)と、半数(構成比49.1%)を占めた。
新型コロナ感染拡大の収束が見えず、中小企業の「社長不足」は倒産だけでなく、廃業を加速する可能性も高まっている。

  • 本調査は「人手不足」関連倒産(後継者難・求人難・従業員退職・人件費高騰)から、2020年1-11月での「後継者難」倒産を抽出し、分析した。

1-11月の『後継者難』倒産が340件

 2020年1-11月の『後継者難』倒産は340件(前年同期比45.2%増)で、前年同期(234件)の1.4倍増と急増した。10月に、集計を開始した2013年以降で年間最多の2015年(279件)をすでに上回り、最多件数を大幅に上回っている。
リーマン・ショック後、企業倒産は減少をたどり、2013年は企業倒産1万855件のうち『後継者難』倒産は234件(構成比2.1%)にとどまっていた。
新型コロナ感染拡大のなか、政府の支援策などで企業倒産は低水準に抑え込まれ、2020年1-11月の企業倒産は7,215件(前年同期比6.0%減)と減少した。
だが、この流れの中で『後継者難』倒産は1-11月で合計340件に達し、構成比は4.7%まで上昇した。

ここ最近、金融機関に企業の将来性を見て貸出を判断する「事業性評価」が徐々に浸透し、後継者の有無も重要事項の一つになっている。
中小企業の代表者は、経理だけでなく、営業や人事など経営全般を担うケースが多い。このため、代表の死去や、病気などで体調不良に直面した場合、事業継続に支障をきたすリスクを常に抱えている。

要因別 「死亡」と「体調不良」は約8割

 『後継者難』倒産の要因別では、代表者などの「死亡」が149件(前年同期比29.5%増、構成比43.8%)で最も多かった。次いで、「体調不良」が120件(同41.1%増、同35.2%)、「高齢」が38件(同80.9%増、同11.1%)と続く。
代表者などの「死亡」と「体調不良」の合計は269件(前年同期200件)で、『後継者難』倒産に占める構成比は79.1%と約8割を占めた。
中小企業は代表者の高齢化が進んでおり、事業承継や後継者の育成が急務になっている。

後継者難1

業歴30年以上の企業が約5割

 『後継者難』倒産企業の設立時期(個人企業は創業)では、1980年代が76件(構成比22.3%)で最も多い。次いで、1990年代が67件(同19.7%)、2000年代が54件(同15.8%)、1970年代が49件(同14.4%)、1960年代以前が42件(同12.3%)の順。
最少は、2010年代以降の39件(同11.4%)だった。
業歴30年以上となる1980年代以前の設立は167件で、全体の約5割(同49.1%)を占めた。
増加率は、1970年代が前年同期比96.0%増、1980年代が同72.7%増と、業歴の長いレンジで増加率が高い。
一方、業歴10年未満の2010年代以降の設立も同50.0%増(26→39件)と高い。これは自治体などの積極的な創業支援を背景に、経営計画が甘い起業も多いようだ。

産業別 最多が建設業の78件

 産業別では、10産業のうち、「金融・保険業」「不動産業」を除く8産業で前年同期を上回った。
最多が「建設業」の78件(前年同期比69.5%増、構成比22.9%)だった。
次いで、「サービス業他」が68件(同19.2%増、同20.0%)、「卸売業」が60件(同66.6%増)、「製造業」が54件(同92.8%増)、「小売業」が40件(同25.0%増)の順。
業種別(件数10件以上)では、繊維・衣服等卸売業が前年同期比366.6%増(3→14件)、飲食業が同141.6%増(12→29件)と、際立つ。

負債額別 負債1億円未満が7割以上

 負債額別では、負債1億円未満が252件(前年同期比52.7%増)だった。『後継者難』倒産に占める構成比は74.1%(前年同期70.5%)と、7割以上が小・零細規模だった。
内訳は、1千万円以上5千万円未満が178件(前年同期比45.9%増)、5千万円以上1億円未満が74件(同72.0%増)だった。
このほか、1億円以上5億円未満が75件(同25.0%増)、5億円以上10億円未満が7件(同75.0%増)、10億円以上が6件(同20.0%増)だった。

形態別 消滅型の破産が約9割

 形態別では、破産が304件(前年同期比48.2%増、前年同期205件)で最多。『後継者難』倒産に占める構成比は89.4%で、約9割を占めた。
また、特別清算が8件(同14.2%増、同7件)。破産と特別清算の消滅型の倒産が合計312件(前年同期比47.1%増)と、9割以上(構成比91.7%)を占めた。
一方、再建型の民事再生法は2件(前年同期比50.0%減)、会社更生法はゼロで、後継者不在の企業の再建が難しいことを浮き彫りにした。

後継者難2

資本金別 1,000万円未満が5割強

 資本金別では、1,000万円未満(個人企業他を含む)が187件(前年同期比35.5%増、前年同期138件)だった。『後継者難』倒産に占める構成比は55.0%(前年同期58.9%)で、前年同期より3.9ポイント低下した。内訳は、100万円以上500万円未満が96件(前年同期比33.3%増)、500万円以上1,000万円未満が51件(同37.8%増)、個人企業他が25件(同19.0%増)、100万円未満が15件(同87.5%増)だった。
このほか、1,000万円以上5,000万円未満が141件(同56.6%増)、5,000万円以上1億円未満が11件(同83.3%増)。
1億円以上は、1件(前年同期ゼロ)だった。

都道府県別 増加32、減少10、同数5

 都道府県別は、増加が32都道府県、減少が10県、同数が5県だった。  都道府県別の最多は、東京の55件(前年同期比12.2%増、前年同期49件)で、近畿2府4県の46件を上回った。次いで、福岡21件(同61.5%増、同13件)、大阪19件(同5.5%増、同18件)、愛知18件(同100.0%増、同9件)、広島17件(同112.5%増、8件)と続く。
『後継者難』倒産が10件以上は、12都道府県だった。
東京商工リサーチの企業データベースから約18万社を無作為抽出し、分析した『2020年「後継者不在率」調査』(11月13日公表)によると、「後継者不在率」は57.5%(2019年55.6%)と、前年よりも1.9ポイント上昇している。
国や自治体、金融機関などによる『後継者難』企業の事業承継支援が加速すると、地域での雇用の受け皿や技術伝承など、地域経済の下支え効果が期待される。

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