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2020年1-9月「負債1,000万円未満の倒産」調査

 2020年1-9月に「負債1,000万円未満」の企業倒産は、489件(前年同期比28.3%増)に達した。
このペースをたどると、10月にも2000年以降で年間最多の2010年(537件)を超える可能性が出てきた。
 産業別では、すでに2019年通年の倒産を上回った飲食業(79件)、宿泊業(4件)などを含むサービス業他が234件(前年同期比46.2%増)と突出、ほぼ半数(構成比47.8%)を占めた。
 形態別では、破産が474件(同96.9%)と大半を占めた。負債1,000万円以上の企業倒産では、「破産」の構成比は88.8%で、1,000万円未満が8.1ポイント上回る。マーケティングや事業計画が甘い安易な起業や、資金力が乏しい小・零細企業ほど新型コロナ感染拡大で打撃を受け、先行きの見通しが立たず、行き詰まるケースが多いようだ。
 原因別では、「販売不振」が341件(構成比69.7%)で最も多かった。また、創業から日が浅く、事業基盤の確立に至らず本業で躓いた「事業上の失敗」も34件(同6.9%)発生した。
 新型コロナ感染拡大で、国や自治体、金融機関からの資金繰り支援策で、多くの企業が資金繰りが一時的に緩和した。この結果、負債1,000万円以上の企業倒産は、四半期別で1−3月2,164件(前年同期比12.9%増)、4−6月1,837件(同11.4%減)、7−9月2,021件(同7.3%減)と、4月以降は倒産が沈静化している。
 ところが、負債1,000万円未満の企業倒産は、1-3月134件(同0.7%増)、4-6月168件(同51.3%増)、7-9月187件(同36.4%増)と、4月以降に急増している。
 ニューノーマルに向けて動き出すが、負債1,000万円未満の倒産は企業体力が脆弱な小・零細企業、商店が厳しい経営環境に巻き込まれ、増勢を持続している。この動きは今後、負債1,000万円以上の企業倒産の動向を示す可能性が高く、注意が怠れない。

  • 本調査は2020年1-9月に全国で発生した倒産(法的、私的)のうち、通常の「倒産集計」(負債1,000万円以上)に含まれない負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。

負債1,000万円未満の企業倒産 2000年以降、通年で最多の可能性も

 2020年1-9月の「負債1,000万円未満」の企業倒産は、489件(前年同期比28.3%増)だった。
 2020年1-9月は、1月(前年同月比9.6%減)、5月(同48.4%減)、8月(同4.0%減)が前年同月を下回ったが、残る6カ月が前年同月を上回った。四半期別では、1-3月は134件(同0.7%増)と微増にとどまったが、4-6月168件(同51.3%増)、7-9月187件(同36.4%増)と急増した。
 月平均54件で推移し、10月には2000年以降で通年最多だった2010年の537件を抜き、年間600件台に乗せる可能性も出てきた。
 負債1,000万円未満の倒産は、代表者の死亡や体調不良など事業承継がうまく進まない企業も多い。なお、「新型コロナウイルス」関連破たんは、2-9月で累計26件が判明している。

1000万未満

産業別 10産業のうち、8産業で増加

 産業別では、10産業のうち、小売業、不動産業を除く8産業で前年同期を上回った。
 最多はサービス業他の234件(構成比47.8%)で、ほぼ半数を占めた。飲食業(45→79件)、理容業を含む生活関連サービス業,娯楽業(23→32件)などで、増加が目立った。
 次いで、建設業69件(構成比14.1%)、小売業48件(同9.8%)、卸売業46件(同9.4%)、情報通信業44件(同8.9%)と続く。
 増加率では、卸売業が142.1%増(19→46件)で最も高い。次いで、農・林・漁・鉱業50.0%増(2→3件)、サービス業他47.8%増(160→234件)、情報通信業37.5%増(32→44件)、運輸業33.3%増(9→12件)の順。

形態別 破産の構成比が96.9%

 形態別では、破産が474件(前年同期比27.4%増、前年同期372件)。倒産に占める構成比は96.9%(前年同期97.9%)で、前年同期より0.7ポイント低下。
 次いで、民事再生法の11件で、すべてが個人企業の小規模個人再生手続きで、法人の手続きはなかった。
 このほか、取引停止処分3件、特別清算1件。
 負債1,000万円未満では、企業体力が乏しい小・零細企業が多く、業績低迷から抜け出せず、事業継続を断念し、消滅型の破産を選択するケースが多い。
 また、代表者の個人破産に合わせた法人(企業)の処理、代表者の死亡や体調不良、長年にわたり実質的に休眠状態だった企業の整理も散見される。

原因別 販売不振が約7割

 原因別は、販売不振341件(前年同期比14.8%増、前年同期297件)で、最も多かった。倒産に占める構成比は69.7%(前年同期77.9%)で、前年同期より8.2ポイント低下した。
 次いで、他社倒産の余波が59件(前年同期比118.5%増、前年同期27件)。グループ内の中核企業に連鎖するケースが大半。
 事業上の失敗34件(同54.5%増、同22件)で、業歴が浅く、事業基盤を築くまでには至らなかった企業も多い。
 また、既往のシワ寄せ(赤字累積)が20件(同185.7%増、同7件)。代表者の死亡・病気などを含む「その他」が19件(前年同期11件)だった。

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