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2020年7月熊本豪雨「被災地企業5,509社」調査

 7月4日から続く記録的豪雨で熊本県南部の被害が深刻だ。熊本県のまとめた「7月4日(土)大雨に係る被害状況」によると、水俣・芦北・球磨・八代(坂本)の一部企業は浸水被害が甚大で、観光関連でも人吉市や水俣市などで宿泊施設や旅館が浸水被害を受けている。
 被災地域に本社を置く(以下、被災地企業)5,509社をみると、最多業種は飲食、旅館・ホテルなどの「サービス業他」で1,993社(構成比36.1%)だった。被災地企業は、資本金1億円未満(個人企業含む)の中小企業が全体の99.4%と大半を占め、資本金1千万円未満が54.5%、個人企業他が28.1%と、小・零細企業が多いことがわかった。
 7月3日までに熊本県では、「新型コロナウイルス」関連破たんが5件発生している。コロナ禍で観光産業など幅広い産業が打撃を受け疲弊していたところに、豪雨に襲われた。小・零細企業が多く、早期の復興に向けた新たな資金繰り・生活支援など、多面的な取り組みが急がれる。

  • 東京商工リサーチが保有する企業データベース(約480万社)から、記録的大雨に見舞われた八代市、人吉市、水俣市、球磨郡、葦北郡に本社を置き、消滅型倒産 (破産、特別清算)、休廃業・解散を除いた企業を抽出、分析した。

産業別、「サービス業他」が最多

 被災地域に本社がある5,509社のうち、産業別では、「サービス業他」が1,993社(構成比36.1%)で最多だった。このうち、大きな被害を受けた老人福祉介護・事業者は125社で、旅館,ホテルや簡易宿所は58社だった。
 次いで、建設業の1,072社(同19.4%)、小売業の765社(同13.8%)、製造業476社(同8.6%)、卸売業411社(同7.4%)と続く。  浸水被害を受けた地域は、旅館やホテル、商業施設、飲食店などが多く、復旧の遅れは多方面に影響が広がることが懸念される。

熊本豪雨地域 産業別

資本金別、1億円未満が99.4%

 5,509社の資本金別では、1百万円以上1千万円未満が2,605社(構成比47.2%)で、ほぼ半数を占めた。
 次いで、個人企業他の1,548社(同28.1%)、1千万円以上5千万円未満の856社(同15.5%)の順。
 個人企業を含めた資本金1億円未満が5,479社(同99.4%)に達し、小・零細企業が大半を占めている。

売上高別、10億円未満が95.8%

 5,509社のうち、2019年1月期以降の業績が判明している2,259社の売上高を分析した。
 最多は1億円未満の1,344社(構成比59.5%)だった。
 次いで、1億円以上5億円未満の702社(同31.0%)、5億円以上10億円未満の119社(同5.2%)と続く。
 売上高が10億円未満の企業は2,165社(同95.8%)と9割以上を占める。被災企業だけでなく、周辺企業や住民の生活復旧に早急な支援が求められる。

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