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2019年「手形・でんさい」動向調査

 手形の流通量が減少している。2019年(1-12月)の全国の手形交換高は、183兆9,808億円(前年比29.5%減)で、ピークの1990年(4,797兆2,906億円)から96.1%も減少した。
2019年の手形交換高は2017年から3年連続で減少、1966年(164兆6,702億円)以来、53年ぶりの低水準となった。ピークの1990年に比べ、約4%(3.9%)に激減している。
全国の手形交換所数は、2017年に2カ所廃止されて以降、107カ所で変わらなかった。
2013年2月に始まった全国銀行協会の電子記録債権(以下、でんさい)は、2019年5月の利用者の登録数が初めてマイナスに転じた。2019年の発生記録請求金額(以下、でんさい額)は、21兆2,720億8,800万円(前年比15.2%増)と2ケタの伸び率だったが、前年の伸び率から8.3ポイント鈍化した。浸透の遅れからでんさい額は、手形交換高の1割(11.5%)にとどまり、従来の手形に置き換わるには相当な時間を要しそうだ。
なお、金融庁と日本銀行は4月16日、新型コロナウイルス感染拡大の資金繰り支援策として、「不渡・取引停止処分猶予」を全国銀行協会(全銀協)に要請した。全銀協は「不渡報告への掲載・取引停止処分が猶予された」手形・小切手の実績を発表しているが、4月は92枚、1億7,357万円、5月は60枚、1億616万円、合計152枚、金額累計は2億7,973万円だった。
手形は決済の主役から外れているが、中小企業の資金繰りにはまだ欠かせない存在でもある。新型コロナの支援策としても使われ、新型コロナで手形やでんさいの存在感が増している。

  • 本調査は、一般社団法人全国銀行協会の全国手形交換高・不渡手形実数・取引停止処分(1960年~)と、でんさいネット請求等取扱高(2013年2月~)を基に分析した。「でんさいネット」は、全国銀行協会が設立した電子債権記録機関「株式会社全銀電子債権ネットワーク」の通称で、「でんさい」は同社の登録商標である。

手形は200兆円割れ、ピーク時のわずか4%

 2019年の手形交換高は、183兆9,808億円で、前年比29.5%減だった。3年連続の大幅減少で、1966年の164兆6,702億円以来の低水準。200兆円割れは、1967年(188兆5,942億円)以来、52年ぶり。
手形交換高は、バブル期の1990年に4,797兆2,906億円のピークを記録した。しかし、大手企業の現金決済への移行に伴い、急激に減少。2019年はピーク時の3.9%にまで縮小している。
手形交換枚数は4,763万枚で、過去最低だった前年(5,136万枚)から、さらに7.2%減少し、最低記録を塗り替えた。
手形交換枚数のピークは、1979年の4億3,486万枚。1987年に4億枚、1996年に3億枚、2002年2億枚、2009年1億枚を、それぞれ割り込み、2019年は初めて5,000万枚を下回った。
手形交換所は、手形交換枚数の上昇に伴い 1987年、1988年、1997年に最多の185カ所を数えた。以降、枚数の減少などで統廃合が進み、2017年から107カ所体制が続いている。

手形表0624

「でんさい」登録数 初のマイナス月も

  「でんさい」の利用者登録数は、毎月微増をたどり、2019年4月の45万8,127社をピークに同年5月、初めて減少した。
2020年2月まで10カ月連続で減少が続き、3月は11社増えたが、4月24社、5月は280社減少した。
でんさいの発生記録請求は、増減しながら伸長。2020年4月は、2兆1,593億6,900万円と単月最大を記録した。
ただ、同じ4月の手形交換高は11兆3,043億1,100万円で、でんさいは手形の2割(19.1%)の水準にとどまっている。

でんさい利用者登録数0624

手形や小切手の新型コロナで不渡猶予は計152枚、金額2億7,973万円

 新型コロナの影響を受けている事業者に対する資金繰り支援策の一環で4月16日、金融庁と日銀は全銀協に「不渡・取引停止処分猶予」を要請した。翌日には全銀協が不渡報告への掲載や取引停止処分を猶予するよう全国の手形交換所に通知した。
東日本大震災発生時にも同様の措置が取られ、不渡猶予は2011年3-4月の2カ月間の累計で、枚数1,521枚、金額13億3,533万円だった。
新型コロナの不渡猶予は、2020年4-5月の2カ月間合計、枚数152枚、金額2億7,973万円で、東日本大震災時と比べ枚数、金額ともに大きく下回っている。でんさいの不渡猶予は2カ月間で件数はゼロだった。

  政府や全銀協は、手形や小切手の電子化を推進している。2020年3月に全銀協が公表した「手形・小切手機能の電子化状況に関する調査報告書(2019年度)」では、2023年度までに約6割を電子的な方法に移行する目標を掲げるが、2019年度の達成度は60%と未達だった。
全銀協では、「さらなる電子化の推進には、金融界だけではなく、産業界、関係省庁等を含めたオールジャパンでの取り組みが不可欠」とし、電子化推進にアクセルを踏んでいる。
新型コロナ感染拡大に伴う緊急事態宣言は解除されたが、休業や外出自粛、消費低迷などで業績が悪化した企業は多い。新型コロナ関連破たんも300件に迫り、今後は二次連鎖の動向にも注意が必要だ。
不渡りや取引停止の処分が厳密な手形やでんさいは、中小企業にとって回収の枠組みが明確なだけに、期日責任が曖昧になりがちな現金決済の弱点を補えるか注目される。

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