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【特別寄稿】中小企業白書のポイント(第2回/全3回)~付加価値の創出に向けた取組~

 2020年版中小企業白書(以下、「白書」)の第2部第1章では、中小企業を対象としたアンケート調査等を基に、付加価値の創出に向けた取組について分析を行っている。以下、付加価値の増大の必要性を確認した上で、それぞれの取組について見ていく。

◆付加価値増大の必要性

 企業は事業活動により生み出した「付加価値」を基に、人件費などの諸費用を賄い、利益を得ているが、中小企業の労働分配率(生み出した付加価値のうち、どれだけが労働者に分配されているかを表す指標)は8割前後で高止まりしている。労働者への分配に対する意識が高まる中、起点となる付加価値の増大が不可欠となる。

◆中小企業の競争戦略と差別化による付加価値創出の取組

 まず、付加価値の創出に向けた取組の前提として、競争戦略を検討することが必要である。企業の競争戦略は、「対象とする市場が広いか、狭いか」、「優位性として低価格、差別化のいずれを志向するか」の2つの軸で、4つの類型に分けることができるが、中小企業ではこのうち、特定の狭い市場を対象とし、製品やサービスの差別化で優位性を構築する「差別化集中戦略」を採る企業の割合が高い。
 また、白書では、差別化に成功している企業ほど労働生産性が高い傾向にあることを示しているが、差別化に成功した企業はどのような取組を行っているだろうか。国内でニッチトップ製品・サービスを保有している企業では、保有していない企業と比較して、「類似のない新製品・サービスの開発」、「製品・サービスの高機能化」、「用途・デザイン・操作性で差別化された製品の開発」、「特定顧客向けの製品・サービスの開発」などに取り組んでいる割合が高く、独自の技術開発や新製品・サービスの開発に注力して、差別化を図っていることが分かる。(第1図)

中小企業白書のポイント2_1

◆新事業展開による付加価値創出への取組

 一般に販売数量と販売単価はトレードオフの関係と考えられているが、新たな事業領域に進出した企業の約4割で、販売数量と販売単価が共に向上していることが分かる。(第2図)
 白書では、業界初となるサービスの企画・開発により、脱下請を達成し、売上・利益面双方で業績向上を実現した企業の事例(脚注1)などを紹介している。顧客に新たな価値を提供するような取組は、付加価値の増大につながり、生産性の上昇にも貢献すると考えられる。

  • 1)白書事例2-1-5「株式会社ハーツ」

中小企業白書のポイント2_2

◆無形資産の有効活用

 これまで述べた差別化や新事業展開に取り組むため、大企業に比べ経営資源に乏しい中小企業においては、いかに限られた経営資源を有効に活用できるかが重要になる。
 経営資源の中で最も重視している要素として、技術者・エンジニア、営業・販売人材など「人材」を挙げる中小企業は半数以上に上る。我が国の人的資本投資(OFF-JT)は他国と比べて少ないとされているが、白書では、人材への投資により生産性を更に伸ばせる可能性について指摘している。
 また、白書では知的財産権の活用についても分析を行っており、中小企業向けの支援施策についても紹介している(脚注2)。

  • 2) 白書コラム2-1-4「産業財産権専門官による知的財産活用の普及・支援」

◆オープンイノベーションの推進

 外部の技術やノウハウの活用は、中小企業の可能性を拡大し、新たな技術開発や製品・サービス創出のきっかけとなる。白書では、オープンイノベーションの取組に当たって、特に、異業種企業や大学と連携している企業で労働生産性が大きく向上していることを示している。また、実際に産学官連携を通じて新たな分野に挑戦し、環境に優しい「もみ殻処理炉」の共同開発に成功した企業の事例(脚注3)などを紹介している。

  • 3) 白書事例2-1-17「北陸テクノ株式会社」

◆まとめ

 多くの中小企業にとって、市場を絞り、低価格ではなく差別化を目指した中小企業ならではの戦い方が重要になってくる。その際には、業界俯瞰的な視点で自社のポジショニングを絶えず見直しながら、社会課題・顧客ニーズ起点で、製品・サービスの開発も含めた差別化の取組を継続していくことが必要となる。また、質・量の両面での人材の不足に直面する中では、競争の源泉となる人の育成に意識を向けながら、異業種も含めた外部の力を積極的に活用することを意識したい。
 白書では、付加価値の獲得に向けた「適正な価格設定」や「取引関係の構築」についても分析しているので参考にされたい。
 次回は、中小企業における経営課題への取組と支援機関の活用について取り上げる。

(著者:中小企業庁 事業環境部 調査室 花井泰輔氏、東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年6月23日号掲載予定)

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