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第3回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査(速報値)

 感染拡大が続く「新型コロナウイルス」の影響が、日増しに深刻さを増している。
 東京商工リサーチが国内企業を対象に実施した「新型コロナウイルス」のアンケート調査で、「すでに影響が出ている」と回答した企業は62.5%、「今後影響が出る可能性がある」は34.8%で、合計97.3%の企業が何らかの「影響がある」と答えた。3月27日~31日15時までの回答(速報値)を集計、分析した。
 前回(3月2日~8日実施、回答1万6,327社)は、「すでに影響が出ている」が54.8%、「今後影響が出る可能性がある」が39.8%で、「影響がある」は合計94.6%だった。3週間余りでさらに比率は上昇し、国内のほぼ全ての企業で影響を受けていることが明らかになった。  また、2020年3月の売上(単月)は、75.2%の企業で前年同月(2019年3月)を下回ったと回答した。2月売上が下回ったと回答した企業は67.6%で、1カ月で7.6ポイント悪化した。
 2月27日、政府が小中高校の一斉休校を要請し、3月25日には東京都が外出の自粛を要請した。新型コロナの影響は、市民生活だけでなく企業活動も直撃している。今回の調査で、3月の企業業績の一層の落ち込みが明らかになった。早く、広範囲の、資金繰り支援策が求められる。

  • 本調査は2020年3月27日からインターネットを通じて実施しているアンケートで、3月31日15時までに回答のあった1万1,404社を集計、速報値として分析した。
  • 前回(第2回)の「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査は、3月12日発表。
  • 資本金1億円以上を大企業、1億円未満や個人企業等を中小企業と定義した。

Q1.新型コロナウイルスの発生は、企業活動に影響を及ぼしていますか?(択一回答)

大企業の約8割、中小の約6割で「すでに影響あり」
 最多は、「現時点ですでに影響が出ている」で62.5%(1万1,404社中、7,128社)。次いで、「現時点で影響は出ていないが、今後影響が出る可能性がある」が34.8%(3,973社)で、全体の97.3%の企業が企業活動への影響を答えた。
 規模別では、「現時点ですでに影響が出ている」は、大企業(資本金1億円以上)で75.2%(1,944社中、1,463社)に対し、中小企業(同1億円未満)は59.8%(9,460社中、5,665社)で、大企業が15.3ポイント上回った。
 前回調査との比較では、大企業が11.0ポイント、中小企業が7.1ポイント、それぞれアップした。

新型コロナウイルスに関するアンケート1

産業別 卸売業への影響が顕著
 産業別で、「すでに影響が出ている」との回答が最も高かったのは、宿泊業や旅行業を含むサービス業で71.1%(2,010社中、1,431社)だった。次いで、小売業の70.1%(657社中、461社)で、2産業が7割を超えた。インバウンドの減少に加えて、外出自粛の影響が直撃したことがわかる。
 一方、農・林・漁・鉱業で14.2%(49社中、7社)、建設業で5.7%(1,364社中、78社)が「影響なし」と回答した。前回調査で建設業は「影響なし」が9.7%で、約3週間で4.0ポイント減少した。サプライチェーンや物流の混乱による建設資材の滞りなどが影響を及ぼしたとみられる。卸売業は「影響なし」が1.5%(2,482社中、38社)で、全産業で最低だった。小売業と製造業の間に位置する特性上、双方の影響を受けていることがわかる。
 規模別では、大企業の小売業は「影響なし」がゼロ(全65社)だった。最もインバウンドの恩恵を受けていた反動に加え、広く店舗展開する企業ほど外出自粛などの内需減退の影響が大きく出ている。中小企業の建設業は「今後出る可能性」が58.2%で、今後を懸念している。

新型コロナウイルスに関するアンケート2

Q2.「東京オリンピック・パラリンピック」開催延期の影響はありますか?(択一回答)

4割を超える企業が影響を懸念
 「すでに影響が出ている」は4.6%(1万969社中、514社)にとどまった。3月24日の延期決定から日が浅いため、影響が表面化している企業は少数だった。ただ、「今後影響が出る可能性がある」は37.1%(4,074社)にのぼり、合計41.8%の企業に影響が及ぶ可能性がある。

「製造・工事スケジュールの変更」が最多
 「すでに影響が出ている」、「今後影響が出る可能性ある」と回答した企業に内容を聞いたところ、4,525社から回答があった。
 最多は「製品の製造や工事のスケジュールの変更」の2,602社(構成比57.5%)だった。「その他」は、「選手村の再開発に参加予定だが今後が見えない」や「事前合宿がなくなることでの来県客数減」、「出版物の内容訂正」など。

Q3.今年(2020年)3月の売上高は前年同月を「100」とすると、どの程度でしたか?

75.2%が前年割れ、中小の33.6%が2割以上減
 外出自粛が広がった3月の売上を聞いた。Q1で「すでに影響が出ている」と回答した企業のうち、4,274社から回答を得た。
 「100以上」の増収は、24.8%(1,060社)にとどまり、75.2%が前年割れ。「80未満」では中小企業が33.6%(3,652社中、1,228社)に対し、大企業は19.2%(622社中、120社)。「50未満」は中小企業が8.3%(306社)だった。
 中央値は全企業が85、大企業が90.5、中小企業が85だった。ほとんどの企業が深刻な売上減に見舞われている。

新型コロナウイルスに関するアンケート4


 「新型コロナウイルス」の企業活動への影響は、第1回アンケート(2月7日-16日)では66.4%が「すでに出ている」、または「今後出る可能性がある」と回答した。第2回(3月2日-8日)では94.6%、今回は97.3%まで上昇した。もはや新型コロナの影響がない企業はない状況だ。
 特に、外出自粛が広がった3月単月の売上高は75.2%の企業が前年割れとなった。東京商工リサーチの企業データベースでは、2019年3月期の業績は、増収「5」:減収「4」:横這い「1」の割合で、今年3月の厳しさを示している。特に、中小企業の3割超が20%以上の減収は深刻だ。
 業種により濃淡はあっても、大半の企業が単月赤字に陥り、営業キャッシュフローはマイナスと推測される。
 夏に開催予定だった東京オリンピック・パラリンピックは、3月24日に延期が正式に決定した。この影響が「すでに出ている」企業は4.6%にとどまるが、「今後出る可能性がある」は37.1%に及ぶ。人手不足、原材料費の高騰による製造・建設コスト等の押し上げが続くなかで、製造スケジュールや工期変更は、さらなるコスト増を招く。インバウンド減少や外出自粛の影響による売上減だけでなく、将来的なコスト増を含めた資金繰り支援が急務になっている。

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