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2019年「業歴30年以上の『老舗』企業倒産」調査

 2019年の倒産企業の平均寿命は23.7年で、前年の23.9年より0.2年短縮した。前年を下回ったのは2017年以来、2年ぶり。産業別の平均寿命は、最長が製造業の34.9年(前年33.9年)、最短は情報通信産業の16.7年(同17.5年)で、その差は18.2年だった。
 全倒産のうち、業歴30年以上の「老舗」企業が占める割合は32.4%(同32.7%)で、前年から0.3ポイント低下した。一方、業歴10年未満の「新興」企業は構成比が26.7%で、過去最高を更新した。
 老舗企業の構成比は、地区別では四国が48.4%(前年比3.4ポイント低下)で最も高く、都道府県別では秋田県の58.9%(同3.6ポイント上昇)が最高だった。
 代表者の高齢化が進む老舗企業では、後継者育成などの課題を抱えた企業は少なくない。国や自治体は創業支援に積極的に動いているが、甘い事業計画で創業する企業もあって、創業企業は玉石混交の状態だ。それだけに、創業支援と同時に、創業後の育成支援もまた重要な課題に浮上している。

  • 本調査は、2019年(1-12月)に全国で倒産した8,383件(負債1,000万円以上)のうち、創業年月が不明の1,269件を除く、7,114件を対象に分析した。
  • 業歴30年以上を『老舗企業』、同10年未満を『新興企業』と定義し、業歴は法人企業が設立年月、個人企業は創業年月から起算とした。

「老舗」企業 倒産の構成比は32.4%

 2019年に倒産した8,383件のうち、業歴が判明した7,114件を対象に分析した。
 業歴30年以上の「老舗」企業は2,308件(構成比32.4%)で、前年の32.7%から0.3ポイント低下。ただ、倒産に占める「老舗」の構成比は2011年から9年連続で30%以上で推移している。
 「老舗」企業は、長年の事業経験に加え、不動産や内部留保など資産形成が進み、金融機関や取引先の信用を維持しやすい。だが、過去の成功体験への固執や、変化する環境対応に遅れやすい課題を抱えている。ここにきて代表者の高齢化もあり、事業承継の遅れや後継者不足の場合、生産性向上への設備投資など、効率的な経営が後手に回り、倒産に至るケースも少なくない。
 一方、業歴10年未満の「新興」企業の倒産構成比は26.7%で、前年の24.8%より1.9ポイント上昇し、過去最高を更新した。国や自治体、金融機関が創業支援に取り組んでいるが、事業経験の乏しさや甘い経営計画の創業が少なくないことを示している。
 今後、創業支援の段階から、次のステップへの成長支援に向けた取り組み強化も求められる。

業歴別 企業倒産件数構成比推移

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