• TSRデータインサイト

2020年に周年記念を迎える企業

 東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年。一つの節目でもある創業100周年を迎える企業は、マツダやイトーヨーカ堂、近鉄百貨店など全国で1,458社だった。  100年前の1920年(大正9年)は、東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)がスタートした年で、筑波大学の流れをくむ東京高等師範学校が初の栄冠をつかんだ。だが、第一次世界大戦の好景気から一転し、恐慌も発生した苦難の年でもある。
他の創業100周年は、コンコルディア・フィナンシャルグループの横浜銀行、カーナビのデンソーテン、自動車用ヘッドライトのスタンレー電気、熱エネルギー機器のリンナイ、オートオークションの荒井商事など1,458社。
このほか、2020年に創業50周年(1970年創業)を迎える企業は、三菱重工業から分離した三菱自動車工業など3万2,417社を数える。さらに200周年(1820年創業)は、繊維製品卸の伊吹(京都府)、仏壇製造販売の永楽屋(滋賀県)など15社。300周年(1720年創業)は、織・染・繍の着物の矢代仁(京都府)、社寺等の屋根工事の児島工務店(岡山県)など4社。最も古い400周年(1620年創業)は、どら焼きの虎屋本舗(広島県)の1社だった。
周年に関係なく、2020年に業歴100年超となる老舗企業は、3万5,018社ある。

  • 東京商工リサーチの企業データベース(約380万社)から、2020年に創業100周年など「周年」を迎える企業
    (個人企業・各種法人を含む)を抽出し、分析した。50周年以外は、100周年単位でまとめた。

都道府県別周年企業

周年企業 最古の周年企業は400周年の虎屋本舗(広島県)

 2020年に周年(50周年および100年単位)を迎える企業は、全国で3万3,895社だった。50周年が3万2,417社(構成比95.6%)、100周年が1,458社(同4.3%)、200周年が15社(同0.04%)、400周年はわずか1社だった。
最古の周年企業は、創業が元和6年(1620年)、創業400周年を迎えるどら焼き「虎焼」などを手掛ける虎屋本舗(広島県)。
次いで、300周年を迎えるのは、矢代仁(京都府)や児島工務店(岡山県)、タテソース製造の豊島屋(岡山県)、旧:高木酒造の流れを汲む日本酒「奥飛騨」などの奥飛騨酒造(岐阜県)の4社。
200周年は、伊吹(京都府)や永楽屋(滋賀県)のほか、線香やローソク製造の三清本店(愛知県)、日本酒「喜楽長」の喜多酒造(滋賀県)など15社。
50周年は三菱自動車工業や、自動車用変速機のジヤトコ(静岡県)、システム開発の日立ソリューションズ(東京都)など3万2,417社。

周年企業数

産業別周年企業 50周年は建設業、100周年は製造業がトップ

 周年企業を産業別でみると、創業50周年で最多の建設業は構成比38.6%(1万2,513社)。次いで製造業の同15.4%(4,994社)、サービス業他の同14.9%(4,833社)の順。
対して100周年は、トップが製造業の同27.3%(398社)で、卸売業が同18.7%(274社)、小売業が同17.4%(255社)の順。200周年、300周年もトップは製造業で、高い技術力を背景に歴史を重ねている。

地区別 100周年は関東が構成比34.6%でトップ

 地区別では、50周年は関東が1万1,180社(構成比34.4%)で最多。近畿が5,226社(同16.1%)、中部が4,531社(同13.9%)の順。100周年も、トップは関東の505社(同34.6%)。次いで、近畿が274社(同18.7%)、中部が183社(同12.5%)の順だった。
都道府県別では、50周年は東京都が3,649社(同11.2%)、大阪府が2,576社(同7.9%)と続く。100周年では、東京都が256社(同17.5%)、大阪府が126社(同8.6%)、北海道が82社(同5.6%)の順。

地区別100周年企業

老舗企業 全国で3万5,018社が業歴100年以上

 すでに業歴100年超(老舗企業)の企業は3万3,560社。新たに2020年に創業100年を迎える企業の1,458社が晴れて老舗企業の仲間入りし、2020年の老舗企業数は計3万5,018社になる。
宗教法人などを除く老舗企業の業歴ランキングでは、社寺建築の金剛組(大阪府)が578年創業で、2020年に業歴1443年。次いで、587年に創業した華道「池坊」の一般財団法人池坊華道会(京都府)が業歴1434年、705年創業の西山温泉慶雲館(山梨県)が業歴1316年、717年創業の旅館、古まんが業歴1304年、旅館運営の善吾楼は718年創業で、業歴は1303年と1000年以上の業歴を持つ歴史的な企業が上位を占めた。


 2020年に創業100周年を迎える企業は1,458社あった。創業間もなく関東大震災(1923年)が発生し、その後には第2次世界大戦、オイルショック、バブル崩壊、リーマン・ショック、東日本大震災など、幾多の災害や歴史的事件を乗り越えてきた企業群だ。柔軟な発想や骨太の経営など歴史を刻む企業から学ぶことは多い。
減少したとはいえ一年に約9,000社が倒産し、約5万社が休廃業・解散する時代を生き残ることは容易でない。100周年や老舗企業は、日本や地域の中核企業として経済だけでなく歴史、文化でも重要な役割を果たしている。
金融機関は、事業の将来性を重視した事業性評価を強めている。老舗でも成長が鈍化し、後継者難などで将来が見通せない企業が少なくない。創業100年を超える企業は、事業承継を乗り越え、持続している。企業理念に拘泥せず、柔軟で時には思い切った決断を下し、従業員だけでなくステークホルダーを大切にし、信頼を積み上げている。
2020年は、56年ぶりに日本でオリンピック・パラリンピックが開催される。周年記念の足跡に学ぶ企業群が後に続くことが期待される。

都道府県別周年企業

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【破綻の構図】マツオインターナショナル~膨らんだ債務と抜本再生への移行~

婦人服ブランド「ヴィヴィアン タム」「慈雨(じう)」「t.b2」などを展開し、ピーク時には国内外で約400店を構えていたマツオインターナショナル(株)(TSRコード:292635265、以下マツオ)が12月11日、大阪地裁に会社更生法の適用を申請した。

2

  • TSRデータインサイト

交響楽団の収益悪化、来場者戻らずコスト上昇 ~ 綱渡りの自助経営、草の根のムーブメントへの期待 ~

交響楽団が存立の危機に立たされている。多くの交響楽団で収入が落ち込んでおり、赤字が目立つ。会場費や団員などの人件費、楽器の輸送コストなどが上昇のうえ、寄附金や補助金による収入は頭打ちで綱渡りの運営だ。東京商工リサーチは、3期連続で業績が比較できる20団体を調査した。

3

  • TSRデータインサイト

地場スーパー倒産 前年同期の1.5倍に大幅増 地域密着型も値上げやコスト上昇に勝てず

2025年1-11月の「地場スーパー」の倒産が22件(前年同期比46.6%増)と、前年同期の約1.5倍で、すでに前年の年間件数(18件)を超えた。

4

  • TSRデータインサイト

長渕剛さん側、イベント会社の破産申立に続き代表を刑事告訴 ~長渕さん「徹底追求」、イベント会社代表「横領でない」と反論~

歌手の長渕剛さんが代表を務める個人事務所の(株)オフィスレン(渋谷区)が、イベント運営を委託していたダイヤモンドグループ(株)(東京都中央区)の代表を業務上横領罪で刑事告訴したことがわかった。東京商工リサーチの取材で長渕さん側が明らかにした。

5

  • TSRデータインサイト

「ペット・ペット用品小売業」倒産が過去2番目の14件 実質賃金の低迷と物価高がペットの世界にも影響

2025年11月の「ペット・ペット用品小売」の倒産は、1件(前年同月ゼロ)にとどまったが、1-11月累計は14件(前年同期比27.2%増)に達した。

TOPへ