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破産した「白鳥エステ」、インフルエンサーを活用した宣伝活動

 10月1日に、約1億5,000万円の負債を抱えて東京地裁から破産開始決定を受けた「白鳥エステ」運営の(株)アキュートリリー(TSR企業コード:300584920、渋谷区)。倒産前の人件費率が85%と異常な経営だったことが東京商工リサーチ(TSR)の取材で判明している。だが、従業員への給与遅配も常態化し、多くの従業員に給与が支払われないまま破産した。
 2019年半ばまで中枢部門にいた元従業員A氏がTSRの独占インタビューに応じた。A氏は、「給与遅配は1年以上前から始まっていた」と給与未払いの実態を赤裸々に明かした。
 別の関係者はTSRの取材に、「従業員の給与は業界平均より高めに設定されていた」と話すが、実際は「高め」の給与は約束通りに支払われていなかった。


バックオフィスの給与遅配は2018年から

 A氏は給料遅配について、「2018年には始まっていた。幹部社員、バックオフィス、エステティシャンとコールセンターの順で遅配していった」と語る。
 A氏は総務などのバックオフィス業務を担当していた。アキュートリリーの財務内容を断片的に見聞きし、「経営の異常性は早いうちから感じていた」という。さらに「経理はほぼ社長が握っていたが、“収支管理”の概念がすごく乏しかった。次にどの支払いがあり、その支払いにいくらの資金をプールしておくという考えがまったくなかった。現金が入れば、出店費用に回す。その繰り返しだった」と、計画性がなく放漫な資金繰りを指摘した。
 「社長は監査役の税理士と月に1度打ち合わせていた。だが、誰も社長におかしいと言えなかった」と語り、創業社長に意見できない環境が破綻を招いたと断罪した。
 2018年から次第に遅配が始まり、「最初は2回分割で入金された。給料日に一部が入金され、1週間後に残りが振り込まれた。だが、2019年の春からは完全に未払いだった」(A氏)。

年金事務所からの電話

 事態は日を追うごとに悪化する。A氏は2019年3月、新店舗オープンに備えて不動産会社と折衝していた。その最中に年金事務所から電話が入り、「差押えます」と告げられたと語る。これをきっかけに一部の従業員は年金保険料の未払いに気付いた。A氏は驚きながらも、給料が支払われない状況では「やっぱり・・・という気持ちもあった」と当時を振り返る。これを機に退職を決意した。
年金事務所から電話が入るひと月前。ある社員はアキュートリリーの幹部から約10万円の経費立て替えを要請され、自分のクレジットカードで決済したという。そして年金事務所から差押えの電話もあったことで、「(会社に)立て替えた10万円の返済を申し出たが、結局10万円は返ってこなかった」という。

“これ以上の被害”を食い止めたい

 2019年春以降、twitterで給与未払いを訴えるエステティシャンの投稿が相次いだ。
 A氏がアキュートリリーを退職した頃(春)でも、エステティシャンの半数は在籍していたという。A氏は、「ブライダルのお客様を抱え、先までの予約を頂いている現場の人はお客様への義務感から辞めるに辞められない状況だった。もっと早い段階で倒産の決断ができなかったのか」と社長の無責任さを憤る。

インフルエンサーを活用した宣伝活動

 なぜアキュートリリーは、多くの顧客やエステティシャンを短期間で獲得できたのか。安価な施術価格と同業より高い給与以外にも要因があるようだ。
 2014年に設立されたアキュートリリーは手元資金が乏しく、大手のような大掛かりな広告宣伝は難しかった。そのため、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で多くのフォロワーを抱えるインフルエンサーに目を付けた。インフルエンサーをPRに積極的に活用し、「有名人に無償で施術やサービスを提供して、施術後1週間以内にSNSに感想を書き込んでもらっていた」と内情を明かす。
 若い世代に人気のアイドルバンドグループのメンバー、若手女性ファッションデザイナーなどがよく来店していたという。10月30日現在、当時の投稿の一部はまだ閲覧することができる。


 「破産申立書」によると、債権者数は286名。このうち、労働債権は約160名にのぼる。ネットでは高い給与の提示を「従業員思いのいい経営者」などと評価する声もある。だが、給与は支払われて、初めて評価される。給与を払わず、従業員に経費を立て替えさせるのは本末転倒だ。
 多くの被害者を出したアキュートリリーの破産は、社長のズサンな経営感覚とインフルエンサーの影響力など、現代の要素が複合的に絡み合って被害を拡大させた。

アキュートリリーの破産申立書

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年11月1日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)

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