• TSRデータインサイト

「地域興しではなく、地域残し」「セコマ」丸谷智保社長 独占インタビュー(下)

-昨年秋の胆振東部地震での対応が話題になった

 我々は茨城県にも店舗がいくつもあるのだが、2011年の東日本大震災のときに、震災後最も早く店を開いた。北海道は当時、被害が少なかったから、まず水を現地に迅速に送った。当時は一時期、ガスが使えず電気は使用できたので、電気で賄えることをやった。
 昨年の場合は、電気が使えなかった。一方、元々お米はガス釜で炊いていたので、おにぎりは作れた。具材も海苔もなかったら「塩むすびにしよう」と決めた。東日本大震災後に作成したマニュアルには、具材がない場合「ごま塩で握りましょう」と書いてある。そこで、胆振東部地震のときに「でかい塩むすび1個170円」として売った。多くの反応を頂いた。「こんな真っ暗闇の中、温かいものが食べられた」と感謝の声。ツイッターの書き込みもすごい数だった。

-マニュアル化が功を奏した

 2011年(東日本大震災)を経てマニュアル化できたことがよかった。胆振東部から1年経ったけれど、「冬場にああいう地震が起きたらどうしよう」とか、お店から「こういう備えがあれば良い」という意見をたくさん吸い上げた。例えば、胆振東部のときは、配送センターの受発注システムが停電でダウンした。これを停電させないように、無停電装置を導入した。工場の停電に備え、可搬式の発電機も増やした。
 現場からの声としては、暗い中でも両手で作業できるよう“ヘッドランプ”を導入した。

-道内では過疎地域が増えている。今後どのように向き合うか

 最近だと2014年に、道北にある人口1,200人ほどの初山別(しょさんべつ)村に出店した。今回出店したのは、村役場のある中央地域。商圏は北部地域と合わせて900人ほどだ。初山別は南、中央、北と3つの浜にくっつくようにして住宅がある。南の浜は、南隣の羽幌(はぼろ)町に買い物に行ける。問題は中央と北の地域で買い物する場がないということだった。出店まで、村長が4回も私を訪ねてくださって「村の最後の店がなくなる。なんとか出店してほしい」と。もう悲壮だった。
 地方は車社会とはいえ、お年寄りが多い。彼らが連日のように片道20キロ運転して日々の買い物に出かけるのは困難だ。だから、高齢者は、週に1回、スーパーのある町まで若い人に車に乗せてもらって買い物に行く。

人口1,200人の初山別村に出店(セコマ提供)

‌人口1,200人の初山別村に出店(セコマ提供)

-出店する上で採算面が問題だ

 人件費、光熱費、建物の減価償却を売上がいくらあったらカバーできるかと算出すると、初山別の場合、1日当たり30万円売ればなんとかなると分かった。30万円だと、商圏900人のうち3分の1の人が1000円使ってくれたら達成する。コンビニで1000円を使うことは結構難しい。平均単価なんて恐らく500円ちょっとだろう。
 だが、うちは生鮮も置いているので、スーパーのように利用する人も多い。周囲に店がない地域だと単価1500円に届くケースもあり、初山別も1日当たり30万円をクリアした。レジャーシーズンは、キャンプ利用等もあるので日によっては50万円近く売る日も。

-出店して印象的だったことは

 店で一番売れたのが、アイスだった。これには驚いた。不思議に思い、買い物に来たおばあちゃんに「なんでアイスを買うの?」と聞いた。そうしたら「私らの年代で、買ったその場でアイスを食べるのも恥ずかしいし、ドライアイスを入れてもらって持ち帰っても途中で溶ける。だから、これまで買うのを我慢してきた」という。「歩いて5分で来られてよかった」と。あまりに好評なので、アイスストッカーを1台追加したほどだ。

-近年、地方創生が叫ばれている

 よく地域“興し”と言うが、まず地域“残し”だろう。残すには、やはりリアル店舗が大事。とくに田舎は、ネット通販も届くまで時間を要する。だが、過疎地に積極的に出店しようという話でもない。ただ、住民や行政からの要望があれば、出店しても赤字にならず、トントンでやっていけると分かれば、協力したいと思っている。最近は、Aコープ(農協で運営する店舗)の撤退も相次ぐ。私の出身の池田町でも、要望がありAコープ店舗の建物を利用して新規出店している。地場野菜を販売する“もぎたて市”も併設し、好評だ。

-地域を“残す”大義とは

 東京に住んでいたら分からないと思うが、過疎地といえども、その地域の多くは“生産空間”だ。例えば、酪農家は牧草地が必要。彼らは1ha、2ha土地がある。隣地と離れていて当然の環境だ。その恩恵を受けているのが、東京にある大田市場であり、豊洲市場だ。だから、過疎をどうするかという議論は、都会に住んでいる人の食をどうするのかという問題にもなる。身体に良い食、質の高い酪農製品、海産物、これらの多くを必要とするのは、田舎ではなく都会のはずだ。

-本州に出店してほしいとの要望もある

 そういう声は多いし、ありがたい話と思っている。現実問題、今でこそ知名度が上がったが、大手に比べたら高くない。本州だと新店を出しても、一定の固定客を得るまでに3年かかる。道内だったら、開店当日から来店が多いから、すぐ投資回収に入れる(笑い)。現状で、本州では大手スーパーやドラッグストアチェーンに商品を販売している。大変好調で、今、東京で作っている売上を店舗であげようとすると、50軒ぐらい出店しなければならないほど。なので、当面、本格的な店舗進出は予定してない。


 24時間営業の是非をはじめ、人手不足など社会問題化するコンビニ業界。丸谷社長は、大手コンビニチェーンが直面するフランチャイズをめぐる諸問題に対し、業界の構造を「FCと本部の共存共栄を壊す制度をこの数十年ずっと続けている」と一刀両断する。
 一方、セコマが拠点を置く北海道の多くの地域で過疎に頭を抱える。丸谷社長は地方“残し”の観点から、実店舗の大切さを訴える。大都市と地方の利便性の格差について述べた「最も恩恵を受けているのはどこか」との問いには頷かざるをえなかった。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年10月24日号掲載「Weekly Topics」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

ハウスメーカーの倒産、26年上半期9割増の衝撃 ~ 踏み切れない抜本再生、施主の権利保護も重要 ~

コスト高や人手不足などでハウスメーカー(木造建築工事業)の倒産が急増している。2026年上半期(1-6月)は118件発生し、前年同期から約9割増えた。

2

  • TSRデータインサイト

倒産と無縁の税理士業界に異変、2026年上半期は4件発生 粉飾は詐欺罪も、コンプラ違反と健康問題がリスクに

過去、税理士事務所の倒産は半年で、概ね1~2件にとどまっていた。景気状況に相関せず、倒産と無縁の税理士業界だったが、2026年上半期(1-6月)はすでに4件発生した。

3

  • TSRデータインサイト

エブリライブの元従業員、「突然の解雇」に困惑

6月初旬から連絡が取りにくくなっているライブ配信のエブリライブ(株)(東京都港区)が、同時期に大半の従業員を解雇していたことがわかった。  解雇を通知の際、エブリライブ側は従業員に「破産予定のため」と説明したという。解雇された元従業員が東京商工リサーチの取材に応じた。

4

  • TSRデータインサイト

2026年上半期「医療機関」倒産 増勢続く 上半期で2番目の38件、「後継者難」は最多

医療機関の倒産が止まらない。2026年上半期(1-6月)に倒産した病院・クリニック(診療所)・歯科医院などの「医療機関」は、38件(前年同期比15.1%増)と大幅に増加した。上半期では、2006年以降の20年間で、2024年と2025年の33件を上回り、2009年の39件に次ぐ2番目の高水準となった。

5

  • TSRデータインサイト

愛媛県のいよぎんHDと愛媛銀が経営統合へ  メインバンク取引社数 金融Gでは国内21位に

愛媛県内にある企業のメインバンクシェア57.5%(県内メインバンク取引社数1万966社)の伊予銀行を傘下に持ついよぎんホールディングスと、県内2位で18.5%(同3,542社)の愛媛銀行が、7月24日開催の取締役会で経営統合を付議することを発表した。

TOPへ