2018年「電力事業者」の新設法人調査
2018年(1-12月)に新しく設立された法人 (以下、新設法人)12万8610社(前年比2.7%減)のうち、電力事業者は1733社(同12.9%減)だった。2年ぶりの前年割れで、減少率は全業種を大幅に上回り、「固定価格買い取り制度」(FIT)導入以降の「電力事業バブル」の鈍化が鮮明になった。
1733社のうち、「太陽光」、「ソーラー」を利用エネルギーとする新設法人は1113社(同3.3%減)だった。一方、「風力」は234社(同25.4%減)、「バイオ」は129社(同30.6%減)で、ともに急速にしぼみ前年を大幅に割り込んだ。「ガス」は26件(同4.0%増)で、唯一前年を上回った。再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)の固定買い取り価格は、「太陽光」では事業用・家庭用ともに下落し、経済産業省は大規模な事業用の「太陽光」と「風力」を買い取り対象から外す意向を示している。これらは電力事業者の参入や新設をけん引してきただけに、2019年の新設数は一段の減少気配が濃厚になっている。
- ※本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(対象345万社)から、2018年に新しく設立された法人データのうち、日本標準産業分類に基づく中分類から「電気業」を抽出し、分析した。
利用エネルギー別 「太陽光」は前年比3.3%減
2018年に新設された電力事業者1733社を利用エネルギー別に分類した。主な利用エネルギーが「太陽光」と「ソーラー」(以下、太陽光)の新設法人は1113社(前年比3.3%減)で、2年ぶりに減少した。「風力」は234社(同25.4%減)と大幅に減少した。一方、「ガス」は26社(前年25社)、「火力」は7社(同8社)で、旧来のエネルギー源は前年と同水準にとどまった。
資本金別 「1百万円未満」が5割弱
資本金別では、「1百万円未満」が779社(構成比44.9%)で、半数近くを占めた。これを含め、「1千万円未満」(その他除く)は1570社で、全体の約9割(同90.5%)を占めた。
法人格別 「合同会社」が6割
法人格別では、最多は合同会社の1042社(前年比12.5%減)。次いで、株式会社の646社(同11.8%減)、一般社団法人の36社(同14.2%減)と続く。これらを含めて、すべての法人格で前年を割り込んだ。 利用エネルギーが「太陽光」の企業は、同一住所に複数の合同会社を設立するケースも少なくない。このため、合同会社は法人格別で唯一、1000社を超えた。
2018年(1-12月)に新設された電力事業者は1733社(前年比12.9%減)で、2年ぶりの前年割れとなった。2012年7月のFIT導入で続いた「太陽光」を中心とした電力事業バブルだったが、固定買い取り価格の段階的な引き下げなどが影響し、法人設立では終焉が鮮明になった。
経済産業省は、買い取り価格が過度に優遇されているとの指摘も上がっていた「太陽光」や「風力」の一部について、固定買い取り制度から外す方針で、今後もこれらを中心に新設数は減少基調をたどる可能性が高い。
ただ、2018年7月に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」では、2030年に全電源のうち、再生可能エネルギーが占める比率が22-24%になることを目指すと明記された。今後は、太陽光以外の電源の拡充や太陽光偏重による出力制限の回避、既存の再生可能エネルギー発電所の安定稼働などが課題となってくる。
既存発電所の安定稼働には、メンテナンス水準の維持と既設発電所の売買など「セカンダリー市場」の活性化も必要だろう。