• TSRデータインサイト

山形の老舗百貨店「大沼米沢店」が8月15日で閉店

不採算店の閉鎖

 300年を超える歴史を持つ山形県唯一の百貨店「大沼」を運営する(株)大沼(TSR企業コード:210002948、山形県)は、8月15日で米沢店を閉店した。米沢店の不動産売却までの間、一部サービスは8月22日から1階の特設コーナーで継続する。
 閉店セール最後の日、米沢店には古くからのファンが多数詰めかけ、閉店を惜しんだ。閉店時間の午後6時30分、従業員が入り口に整列。米沢店の西名浩子店長が「地域の方の支えでここまでやってこられた。49年間本当にありがとうございました」とお礼を述べた。涙を浮かべる従業員もみられた。
 米沢店は1970年にオープンし、地域唯一の百貨店として親しまれた。しかし、建物の老朽化や人口減少、中心街の衰退、若者離れなどで深刻な販売不振に陥り、赤字経営が続いていた。
 2018年4月、大沼の経営権を都内の投資会社が取得し、再建を目指していた。しかし、投資会社の出資金を巡るトラブルや再建遅れなどで、今年3月22日に経営権が投資会社から大沼の幹部らが出資した会社に移り、経営再建策の一環として米沢店の閉店を発表していた。
 ただ、新体制となっても大沼の経営は不安定な状況が続いている。新体制に積極的に関与していた大沼の幹部が7月12日、取締役を解任されている。また、経営権が変わっても大沼の資金状況を懐疑的にみている取引先も多い。
 全国的に百貨店の衰退が叫ばれる中、大沼の経営陣が信頼を取り戻せるのか注目される。


大沼米沢店・閉店時の様子(8月15日撮影)

大沼米沢店・閉店時の様子(8月15日撮影)

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年8月9日号掲載予定「SPOT情報」を再編集)

 TSR情報とは

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ