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2018年「負債1,000万円未満の倒産」調査

 2018年(1-12月)「負債1,000万円未満」の企業倒産は521件(前年比6.5%増)で、リーマン・ショック直後の水準に戻していることがわかった。
 2009年以降では、2010年(537件)に次いで2番目に多く、3年連続で前年を上回った。
 一方、「負債1,000万円以上」の企業倒産は8,235件(前年比2.0%減)で、2009年から2018年まで10年連続で前年を下回っている。負債1,000万円未満の小・零細企業の倒産は、2015年を底に増勢に転じているだけに、負債規模で対照的な動きをみせている。
 また、「休廃業・解散」も2年ぶりに前年を上回り、小・零細企業を取り巻く経営環境は中堅以上の企業に比べ、いち早く厳しさを増している状況が浮かび上がった。
 負債1,000万円未満の倒産は、「負債500万円未満」が204件と全体の約4割(構成比39.1%)を占め、次いで「500万円以上600万円未満」が116件(同22.2%)だった。売上規模でも「売上高1,000万円未満」が412件(同79.0%)で、2,000万円未満は全体の9割(同90.4%)と、小・零細規模を中心にしている。
 産業別の最多は、創業資金をさほど必要としない飲食業などを含む「サービス業他」が241件(同46.2%)と半数近くを占めた。また、形態別では「破産」が500件(同95.9%)と大半を占めた。負債1,000万円以上の倒産の「破産」の構成比は85.9%で、負債1,000万円未満の構成比は10ポイント上回り、小・零細企業ほど事業の立て直しが難しいことを示している。原因別でも、「販売不振」が357件(同68.5%)と多く、価格、商品力、サービスなどで競争力が劣勢に立つ小・零細企業の脱落が加速している。


  • 本調査は2018年(1‐12月)に全国で発生した倒産(法的、私的)のうち、通常の倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。

負債1,000万円未満の企業倒産 3年連続で前年を上回る

 2018年(1-12月)「負債1,000万円未満」の企業倒産は521件(前年比6.5%増)だった。
 2015年(358件)を底に、2016年から3年連続で前年を上回り、2011年(502件)以来、7年ぶりに500件を超え、2010年(537件)に次ぐ2番目の高水準となった。
 負債1,000万円以上の企業倒産は10年連続で前年を下回っているが、負債1,000万円未満は増勢をたどり対照的な動きをみせている。
 負債1,000万円未満の倒産には、代表者の個人破産に合わせて法人(企業)を処理するケースや、長年にわたり実質的に休眠状態だった企業の整理も散見される。
 「人手不足」関連倒産は31件(前年24件)だった。代表者の病気や死亡による「後継者難」は27件(同22件)と「人手不足」関連倒産の87.0%を占め、事業承継が大きな課題になっている。

負債1,000万円未満倒産 件数推移

【産業別】10産業のうち、7産業で前年より増加

 産業別は、10産業のうち、「製造業」「卸売業」「運輸業」を除く7産業で前年を上回った。最多は「サービス業他」の241件(構成比46.2%)で、ほぼ半数を占めた。以下、「小売業」79件(同15.1%)、「建設業」66件(同12.6%)、「卸売業」41件(同7.8%)、「製造業」30件(同5.7%)と続く。
 最多のサービス業他では、「医療,福祉事業(19→24件)」「飲食業(70→87件)」「エスティック業などを含む生活関連サービス業,娯楽業(32→38件)」で、増加が目立った。
 増加率では、「農・林・漁・鉱業」が前年比200%増(1→3件)で最高。次いで、「金融・保険業」の同33.3%増(3→4件)、「情報通信業」の同27.2%増(22→28件)、「サービス業他」の同13.6%増(212→241件)、「不動産業」の同13.3%増(15→17件)の順。

負債1,000万円未満倒産 件数推移

倒産と休廃業・解散 2年ぶりの5万件超

 2018年の企業倒産は、「負債1,000万円以上」が8,235件(前年比2.0%減)、「同1,000万円未満」が521件(同6.5%増)で、合計8,756件(同1.5%減)だった。負債で区分しない倒産全体は2017年に8年ぶりに増加し、2018年は再び減少した。だが、減少幅は縮小し、倒産の「底打ち感」が強まっている。
 一方、2018年の「休廃業・解散」は4万6,724件(同14.2%増)で、2年ぶりに増加に転じた。
 2018年の全倒産と休廃業・解散の合計は5万5,480件で、2017年の合計4万9,803件から11.3%増加した。5万件台に乗せるのは2016年以来、2年ぶり。
 業績改善が遅れ、後継者難から事業継続が困難な企業は少なくない。市場から撤退する形態はM&Aや事業譲渡の他には、「倒産」と「休廃業・解散」が中心になるが、判明するデータでは2014年を底に、16年から増勢トレンドにある。
 代表者の高齢化は進み、2018年の平均年齢は61.73歳(前年61.45歳)に上昇している。生産性向上や人手不足など、立ちはだかる課題に向かうには後継者や資金面の高いハードルへの支援が急務になっている。

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