• TSRデータインサイト

2017年9月中間決算 上場企業「継続企業の前提に関する注記」調査

 2017年9月中間決算を発表した3月期決算の上場企業2,431社のうち、決算短信で「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン注記)」(以下、GC注記)を付記した上場企業は21社だった。前年度本決算(2017年3月期、23社)より2社減少した。
また、事業継続に重要な疑義を生じさせる事象がある場合に記載する「継続企業に関する重要事象」(以下、重要事象)は38社で、前年度本決算(41社)より3社減少した。
GC注記と重要事象が記載された企業数は、リーマン・ショック直後の2009年3月期に過去最多の145社を記録し、その後は減少をたどっていた。しかし、2015年3月期に6年ぶりに増加に転じ、以降は一進一退で推移し2017年9月中間期は過去最少だった2014年3月期、2014年9月中間期、2016年9月中間期に並ぶ59社だった。
GC注記や重要事象の記載企業は、業績回復が遅れた新興・中堅企業が大半。上場企業は大手の輸出関連を中心に好決算が相次いだが、一方で業種や規模格差の二極化が拡大している。

  • 本調査は、全証券取引所に株式上場する3月期決算企業を対象に、2017年9月期中間決算短信で12月7日までに発表された「GC注記」及び「重要事象」を記載した企業の内容、業種を分析した。

GC注記 重要事象の付記企業は合計59社 前年度本決算から5社減少

 2017年9月中間決算でGC注記が記載されたのは21社で、前年度本決算(23社)から2社減少した。前年度本決算でGC注記が付いた23社のうち、6月に民事再生法を申請したタカタ(株)(東証1部、品川区)と、自主廃業を決議し9月30日に解散した中部証券金融(株)(名証2部、名古屋市中区)の2社が上場廃止となった。一方、前年度本決算にはなかったが、当中間期に新たにGC注記が付いた上場企業はゼロだった。

3月期決算企業 GC・重要事象件数推移

ジャパンディスプレイに初めて重要事象の記載

 重要事象の記載があった上場企業は38社で、前年度本決算(41社)より3社減少した。前年度本決算で記載された企業のうち5社が解消、1社が上場廃止となった。一方、新たに重要事象が記載されたのは、(株)ジャパンディスプレイ(東証1部、東京都港区)、(株)省電舎ホールディングス(東証2部、東京都港区)、(株)やまねメディカル(JASDAQ、東京都中央区)の3社だった。
液晶パネル大手で再建中のジャパンディスプレイは、事業構造改革費用の計上などから680億円の最終赤字(連結)を計上し、初めて重要事象が記載された。

GC注記・重要事象記載 本業不振が8割

 GC注記・重要事象の記載企業59社を理由別に分類すると、48社(構成比81.3%)が重要・継続的な売上減や損失計上、営業キャッシュ・フローのマイナスなどの「本業不振」を理由としている。次いで「再建計画遂行中・その他」が8社(同13.5%)、「資金繰り・調達難」が4社(同6.7%)と続く。
売上や損益の悪化など、本業面で苦戦が続く企業が大半を占めている。
債務超過は(株)東芝(東証2部、GC注記)と(株)丸順(名証2部、重要事象)の2社。債務超過は1年内に解消できない場合、原則として上場廃止になるが、経営危機に揺れる東芝は12月5日、約6,000億円の第三者割当増資の払い込み完了を発表。今年度末時点での債務超過解消を目指している。

GC注記・重要事象記載企業 理由別

  • 注記理由が重複記載されており、構成比合計は100%とならない。

業種別では製造業が約5割 新興市場と中堅規模が中心

 GC注記・重要事象の記載企業59社の業種別は、製造業が28社(構成比47.4%)と半数を占め、大手の下請けメーカーなど中堅規模が中心となっている。上場区分別では、JASDAQ、マザーズ、名証セントレックスの新興市場が27社(同45.7%)と、ほぼ半数を占めた。事業基盤がぜい弱なベンチャーなどの新興企業、景気拡大の波に乗れない中堅企業への偏在が特徴。


 上場企業の倒産はリーマン・ショック時の2008年の33件をピークに減少し、2014年は1990年以来、24年ぶりに発生がなかった。その後も、2015年は3件、2016年は発生ゼロ、2017年は12月7日時点で2件と低水準で推移している。
倒産の減少とともにGC注記と重要事象の記載企業は減少し、2017年9月中間期は集計を開始以来、過去最少に並ぶ59社だった。上場企業の業績が上向いた結果とみることもできるが、一方で業績不振から抜け出せず倒産や上場基準に抵触し上場廃止となったケースもある。
また、GC注記企業21社のうち、半数の11社が3年前の2014年9月中間期決算でもGC注記か重要事象を記載していた。業績が浮上しない不振企業の固定化が顕著となっている。大手と中堅以下との間での格差拡大や二極化進行の表れで、引き続き経営の重大な局面から抜け出せないGC注記企業や重要事象の記載企業の動向から目が離せない。

(GC注記・重要事象記載のあった上場企業リストは、東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2017年12月12日号に掲載予定)

 TSR情報とは

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【破綻の構図】マツオインターナショナル~膨らんだ債務と抜本再生への移行~

婦人服ブランド「ヴィヴィアン タム」「慈雨(じう)」「t.b2」などを展開し、ピーク時には国内外で約400店を構えていたマツオインターナショナル(株)(TSRコード:292635265、以下マツオ)が12月11日、大阪地裁に会社更生法の適用を申請した。

2

  • TSRデータインサイト

交響楽団の収益悪化、来場者戻らずコスト上昇 ~ 綱渡りの自助経営、草の根のムーブメントへの期待 ~

交響楽団が存立の危機に立たされている。多くの交響楽団で収入が落ち込んでおり、赤字が目立つ。会場費や団員などの人件費、楽器の輸送コストなどが上昇のうえ、寄附金や補助金による収入は頭打ちで綱渡りの運営だ。東京商工リサーチは、3期連続で業績が比較できる20団体を調査した。

3

  • TSRデータインサイト

地場スーパー倒産 前年同期の1.5倍に大幅増 地域密着型も値上げやコスト上昇に勝てず

2025年1-11月の「地場スーパー」の倒産が22件(前年同期比46.6%増)と、前年同期の約1.5倍で、すでに前年の年間件数(18件)を超えた。

4

  • TSRデータインサイト

長渕剛さん側、イベント会社の破産申立に続き代表を刑事告訴 ~長渕さん「徹底追求」、イベント会社代表「横領でない」と反論~

歌手の長渕剛さんが代表を務める個人事務所の(株)オフィスレン(渋谷区)が、イベント運営を委託していたダイヤモンドグループ(株)(東京都中央区)の代表を業務上横領罪で刑事告訴したことがわかった。東京商工リサーチの取材で長渕さん側が明らかにした。

5

  • TSRデータインサイト

「ペット・ペット用品小売業」倒産が過去2番目の14件 実質賃金の低迷と物価高がペットの世界にも影響

2025年11月の「ペット・ペット用品小売」の倒産は、1件(前年同月ゼロ)にとどまったが、1-11月累計は14件(前年同期比27.2%増)に達した。

TOPへ