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2017年1-9月「太陽光関連事業者」の倒産状況

 2017年1-9月までの「太陽光関連事業者」の倒産が68件(前年同期比61.9%増)に達し、過去最多だった2016年(1-12月)の65件を上回った。これで最多記録の更新は2015年から3年連続となった。
 2012年7月の再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)の固定価格買い取り制度(FIT)導入により急速に拡大した太陽光関連市場。しかし、事業者の乱立や度重なる買い取り価格の引き下げなどで状況が一変している。さらに太陽光以外の再生可能エネルギーへの緩やかな政策誘導も追い打ちをかけ、関連事業者を巻き込み淘汰が進んでいる。


  • ソーラーシステム装置の製造、卸売、小売を手がける企業、同システム設置工事、コンサルティング、太陽光発電による売買電事業等を展開する企業(主業・従業問わず)を「太陽光関連事業者」と定義し、集計した。
  • 太陽光関連事業者の倒産 年次推移

倒産件数 3年連続で過去最多を更新

 調査を開始した2000年以降、倒産件数の年間最多は2016年の65件だったが、2017年は1-9月までで68件を数え最多記録を更新した。このペースで推移すると年間90件に達する可能性がある。
 2017年1-9月の負債総額は215億6,300万円(前年同期比16.5%増)。年間で負債額が最も多かったのは2016年の242億4,100万円だったが、2017年は負債1億円未満が35件(前年同期20件)と小口倒産を中心にしており、件数の増加ほど負債は膨らんでいない。ただ、倒産件数の状況次第では年間の負債額も過去最悪を塗り替える可能性を残している。

負債額別 1千万円以上5千万円未満が3割増

 負債額別では、1億円以上5億円未満が最多で26件(構成比38.2%)だった。次いで、5千万円以上1億円未満の18件(同26.4%)、1千万円以上5千万円未満の17件(同25.0%)の順。
 2016年1-9月は、負債1億円未満が20件(同47.6%)だったのに対して、2017年1-9月は35件(同51.4%)で、構成比が3.8ポイント上昇した。一方、負債10億円以上も2016年1-9月の2件から5件へ増加し、太陽光関連事業者の倒産は事業規模を問わず幅広く発生している。

太陽光関連事業者の倒産 負債額別

原因別 「事業上の失敗」が高水準

 原因別では、最多は2016年1-9月に21件だった「販売不振」が34件(構成比50.0%)と急増、全体の半数を占めた。次いで、「事業上の失敗」8件(同11.7%)、「運転資金の欠乏」と「既往のシワ寄せ」が各5件(同7.3%)と続く。2016年1-9月は発生がなかった「売掛金回収難」も4件(同5.8%)発生した。
 一方、「運転資金の欠乏」は2016年1-9月の6件から5件へ、「金利負担の増加」は1件からゼロへそれぞれ減少した。太陽光関連事業を含め、金融機関の弾力的な与信姿勢を反映している。
 「既往のシワ寄せ」、「販売不振」、「売掛金回収難」の3つの原因を合わせた『不況型倒産』は43件(同63.2%)に達し、前年同期の24件(同57.1%)より6.1ポイントアップした。
 原因別でみる限り、金融機関からの資金調達の問題より、太陽光関連市場の厳しい経営環境が倒産に直結していることが見えてくる。

太陽光関連事業者の倒産 原因別

 2017年1-9月の「太陽光関連事業者」倒産は68件(前値同期比61.9%増)に達し、年間で過去最多だった2016年の65件をすでに上回った。9月単月では9件(前年同月は6件)発生しており、発生ペースは勢いを増している。
 2011年3月の東日本大震災を機に、再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)の固定価格買い取り制度(FIT)が成立。政府も自給エネルギーの確保と低炭素社会の実現に向け、化石燃料や原子力に依存し過ぎないエネルギーミックスを推し進めてきた。
 買い取り価格の太陽光優遇などでメガソーラーの運営やソーラーシステム装置の販売、設置工事など、多様な形態で参入が相次いだ。
 だが、段階的な買い取り価格引き下げ、参入過多による同業者の増加などで業界環境は一変した。風力や地熱、バイオマスなどの太陽光以外の買い取り価格の大半は、FIT導入当初から据え置かれているなど緩やかな政策誘導もあり、太陽光関連事業者を取り巻く環境は一段と厳しさを増している。
 当初、優遇措置を目当てに太陽光市場には参入が相次ぎ、バブルの様相を呈していたが、厳しい市場に変化した現在、関連事業者の倒産はさらに増えることが危惧される。

2017年1-9月「太陽光関連事業者」の主な倒産事例

PVG Solutions(株)(TSR企業コード:352251875、神奈川県、負債約22億円)

 2007年に太陽電池セルなど太陽光発電製品の製造・販売を目的に設立。当初はコンサルティングや製品分析などを手掛けていた。2011年にベンチャーキャピタルなどからの出資金や金融機関からの借入を基に、約20億円を投じて愛媛県西条市に工場を建設。太陽電池セルなど太陽電池関連製品の製造に本格参入した。だが、安価な海外製品の流入や固定価格買い取り制度(FIT)見直しによる買取価格の下落、工場建設による借入負担などで資金繰りが逼迫し、2017年2月に横浜地裁から破産開始決定を受けた。

(株)ZEN POWER(TSR企業コード:872097005、福岡県、負債約52億円)

 2005年に設立され、福岡県久山町に工場を開設。太陽光発電モジュールの組立、販売を手掛けていた。国内外に販路を築き、2014年12月期の売上高は約74億円を計上していた。しかし、大口取引先だったドイツ企業に不良債権が発生し、急激に資金繰りが悪化。さらに欧州でのモジュール価格の下落、国内での固定買い取り価格の引き下げなどで受注が大幅に落ち込み、2017年4月に福岡地裁から破産開始決定を受けた。

(株)りょうしん電気(TSR企業コード:576244562、大阪府、負債4億7,700万円)

 2009年に設立。当初はオール電化製品及び住宅設備機器の販売施工を主体にしていたが、その後、太陽光発電関連事業に参入。太陽光発電システムの販売施工や大阪府内の電器店などを対象に勉強会を通じたコンサルタント業務、アフターフォローのメンテナンス事業部を立ち上げていた。また、和歌山県でメガソーラー事業を開始し、2015年9月期の売上高は44億5,932万円を計上していた。
 ところが、太陽光発電関連ブームの収束で、2016年9月期の売上高は29億5,660万円にまで落ち込み、関連会社への出資金や貸付金の処理などで赤字を計上。自社保有のメガソーラー発電所や関連会社の売却を進めたが奏効せず、2017年5月に大阪地裁に破産を申請した。

(株)ISHIO(TSR企業コード:612117200、和歌山県、負債約6,000万円)

 2013年に設立され、住宅の新築工事やリフォーム、太陽光発電装置の設置工事などを手掛けていた。設立が浅く財務内容や資産背景が脆弱だったところに、リフォーム工事の案件で回収不能が生じ、資金繰りが逼迫。2017年6月に和歌山地裁から破産開始決定を受けた。

(株)にしもと(TSR企業コード:890236321、大分県、負債4,044万円)

 1990年の設立で、塗装工事などを建設工事業者から受注、年商は約4,000万円を維持していたが、利益率は低調で脆弱な財務内容が続いていた。2015年6月期から太陽光発電設備の設置工事にも本格的に参入し、売上高は1億5,354万円に急伸したが、不慣れな面もあり赤字から脱却できず、早々に同事業から撤退した。その結果、2016年6月期の売上高は3,764万円に急減し赤字幅が拡大。その後も業況は改善せず、2017年9月4日に大分地裁へ破産申請した。

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