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銀行114行「2017年3月期 預証率調査」(単独決算ベース)

 銀行の資金運用状況を示す「預証率」が2017年3月期は26.9%に低下した。2013年3月期から5年連続で前年同期を下回り、調査を開始した2006年3月期以来、最低を記録した。これは各行がマイナス金利で金利リスクの抑制策として国債売却を進め、保有する有価証券額が大幅に減少したこと。さらに、業績回復で手元資金が厚くなった企業、将来に備えた高齢者などの個人資金が貸出金の増加を上回るペースで預金として流入したことが背景にある。
 貸出や証券投資に運用されない余剰資金である「現金預け金」は、前年同期より2割増に積み上がり、資金運用難の苦境に陥った銀行の姿を映し出している。


  • 本調査は、国内銀行114行を対象に2017年3月期単独決算の預証率を調査した。預証率は預金残高に対する有価証券残高の比率で、金融機関の資金運用状況を示す指標の一つ。預証率=有価証券÷(預金+譲渡性預金)で算出し、有価証券は貸借対照表の資産の部に計上される「国債」、「地方債」、「社債」、「株式」、「その他の証券」を合計した。「預金」と「譲渡性預金」は、貸借対照表の負債の部から抽出し、合計した。
  • 2012年4月1日に住友信託銀行・中央三井信託銀行・中央三井アセット信託銀行の合併で発足した三井住友信託銀行は、過去データとの比較ができないため、調査対象に含まない。

2017年3月期の預証率26.9%、5年連続減少

 銀行114行の2017年3月期単独決算の預証率は26.9%で、5年連続で前年同期を下回った。
 3月期決算の預証率は、2012年は歴史的な円高水準で大手企業の設備投資意欲が減退し、急速な市場悪化で株式、社債の比率も低下した。また、銀行の中小企業向け貸出も慎重になり資金が国債へ流入したため、預証率は42.4%にまで上昇した。
 2013年4月に日銀が「異次元金融緩和」を発表。銀行等から積極的に国債を買い入れ、その代金を金融機関の日銀当座預金に振り込む形で実施した。さらに2014年10月に長期国債の買い入れ拡大などの追加金融緩和を決定、大手銀行を中心に国債売却が進み、有価証券残高が減少した。

銀行114行 預証率と有価証券残高推移

「国債」残高は79兆円に減少、9年ぶりの80兆円割れ

 銀行114行の2017年3月期の資産運用、投資目的で保有する「有価証券残高」は、211兆6,966億5,700万円(前年同期比9.7%減)で、2年連続で前年同期を下回った。
 内訳は、「国債」(構成比37.9%)が79兆4,962億5,700万円(前年同期比18.0%減)と大きく減少。3月期では、2008年(74兆3,245億2,000万円)以来、9年ぶりの低水準となった。/p>

「有価証券残高」、大手銀行が18兆円減らす

 業態別の保有する「有価証券残高」は、大手銀行9行が119兆9,478億4,900万円(前年同期比13.5%減、同18兆7,497億9,100万円減)、地銀64行が75兆9,067億9,600万円(同4.0%減、同3兆2,167億8,700万円減)、第二地銀41行が15兆8,420億1,200万円(同4.7%減、同7,941億4,400万円減)と、三業態すべて残高が前年同期より減少した。減少幅は大手銀行が最大だった。
 「国債」残高は114行のうち、105行(構成比92.1%)と9割以上の銀行で前年同期を下回った。

銀行114行 預証率と国債他の残高推移

約8割の銀行で預証率低下

 個別の預証率は、114行のうち、86行(構成比75.4%)で前年同期を下回った。比率が低下したのは、三菱UFJ信託銀行の31.5ポイント低下(97.2→65.7%)を筆頭に、東京スター銀行10.1ポイント低下(24.1→14.0%)、みずほ信託銀行10.0ポイント低下(43.7→33.7%)、山梨中央銀行10.0ポイント低下(53.3→43.3%)の順。
 一方、前年同期より預証率が上昇したのは27行(構成比23.6%)、同率が1行だった。
 上昇した銀行は、紀陽銀行の3.2ポイント上昇(29.8→33.0%)を筆頭に、近畿大阪銀行2.1ポイント上昇(17.7→19.8%)、福邦銀行2.1ポイント上昇(27.3→29.4%)など。

資金運用難を反映、「現金預け金」が2割増

 銀行114行の2017年3月期の「現金預け金」(日銀当座預金が中心で、通貨、手形などを含む)の総額は、195兆4,135億8,000万円(前年同期比23.3%増、前年同期158兆4,383億3,800万円)に達し、前年同期比で2割増と大幅に増加した。個別では114行のうち89行(構成比78.0%)で前年同期より増加した。
 増加額が最も大きかったのは、三菱東京UFJ銀行の11兆3,963億5,100万円増。次いで、みずほ銀行の8兆7,869億3,700万円増、三菱UFJ信託銀行の4兆977億4,700万円増と続く。増加額が1,000億円以上は39行(同34.2%)にのぼった。


 銀行114行の2017年3月期決算の預証率は、5年連続で前年同期より低下した。これは貸出増加によるものでなく、主に銀行が国債売却を進めた結果、有価証券残高が減少したことが大きい。
 6月発表の東京商工リサーチの「銀行114行の預貸率」調査では、2017年3月期決算の預貸率は調査を開始以来、最低の66.4%にとどまった。預金と貸出金の差である「預貸ギャップ」は過去最大の263兆円に拡大し、貸出金の増加以上に預金残高が伸びていることを示した。
 これまで貸出に回らない銀行の余剰資金は、主に国債で運用されてきたが、日銀の異次元金融緩和やマイナス金利導入で様相が変わった。銀行は運用できない余剰資金を抱え込み、日銀当座預金などの「現金預け金」の積み上げが加速している。
 2017年3月期の「預証率」が調査開始以来、最低を記録したのは銀行資金が設備投資や個人消費に活用されず滞留している実態を示すもので、銀行の資金運用難が深刻化していることを浮き彫りにしている。

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