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2015年「全国社長出身地」調査

 都道府県別の社長「輩出率」で徳島県が2年連続でトップになった。また、社長が出身地にとどまる「地元率」のトップは、沖縄県の94.2%だった。


  • 本調査は、東京商工リサーチの企業データベース280万社(2015年12月時点)の代表者データ(個人企業を含む)で出身地を抽出し、集計した。調査は2010年から実施し、今回が6回目。

社長の出身地、最多は東京都、最少は鳥取県

 社長の出身地の都道府県別は、最多が東京都の7万8,925人だった。次いで、北海道5万3,132人、大阪府4万8,282人、愛知県4万5,866人、神奈川県3万1,441人、福岡県2万9,617人、広島県2万8,914人と大都市や中核都市が続く。一方、最も少なかったのは鳥取県の4,520人で、6年連続で最少になった。次いで、滋賀県6,325人、佐賀県6,445人、島根県7,163人の順だった。

2015年社長出身地

社長「輩出率」 徳島県が2年連続トップ

 社長数は人口数に比例しやすいため、出身地別の社長数を都道府県別人口(総務省「人口推計」2014年10月1日現在)で除し、「輩出率」を算出した。この結果、最も比率が高かったのは徳島県の1.37%(前年1.28%)で、2年連続のトップになった。
 徳島の県民性は堅実・実利を尊び、お金をコツコツ貯める気風が強いとされ、この質素・倹約のストレス発散が「阿波踊り」との説もあるほど。現在は、全国トップクラスのブロードバンド環境を進め、先端産業・ベンチャー企業の集積を目標に掲げ、「進取の気性」に富んでいる。
 一方、徳島県の人口は17年連続で減少をたどり75万人(2016年1月1日時点)にとどまり、出生が死亡数を下回る「自然減」が続く。さらに大阪などの関西圏に近いことも影響し住民の転出が転入を上回る状況にも歯止めがかかっていない。社長「輩出率」トップも、こうした人口動向が関わっている可能性もあり、手放しでは喜べない面もある。

「輩出率」が低いのは、首都圏のベッドタウン

 次いで、2位が山形県の1.33%。「辛抱強くて、堅実」な県民性に加え、江戸時代から商工業が活発な土地柄で、絹織物「米沢織」や「山形鋳物」などの伝統工芸品を数多く有している。
 だが、1985年に126万人だった人口は、2015年10月には112万人に減少し、人口減少に歯止めがかかっていない。以下、香川県1.25%、秋田県1.19%、愛媛県1.09%と、四国が上位を占めている。一方、輩出率が低いのは47位に埼玉県(0.26%)、46位千葉県(0.28%)、45位神奈川県(0.34%)で、首都圏のベッドタウンが顔をそろえた。

2015年社長輩出率

地区別の社長「輩出率」、四国がトップ

 地区別の社長「輩出率」で最も比率が高かったのは、四国の1.16%(前年1.10%)で6年連続でトップになった。
 次いで、北海道0.98%(同0.91%)、東北0.95%(同0.89%)とトップ3は前年と同じだった。以下、北陸0.92%(同0.84%)、中国0.89%(同0.85%)、九州0.80%(同0.76%)、中部0.70%(同0.67%)、近畿0.56%(同0.53%)、関東0.49%(同0.47%)の順。

社長の「地元率」、沖縄県が6年連続トップ

 地元出身者が地元企業の社長を務める「地元率」は、最も高かったのが沖縄県の94.2%(前年94.4%)で6年連続トップだった。地理的条件に加えて、公共投資・観光・基地の「3K」に依存した経済で、「製造業の不毛の地」と揶揄される産業構造など固有の事情が影響しているようだ。他県からの企業進出が少なく、雇用の受け皿も少ないなか、全国平均より高い失業率が地元での開業率を高める状況が続いている。さらに血縁のつながりが強く、親族からの支援が得られやすい土地柄も地元での創業を促進しているのかもしれない。

基幹産業が「地元率」を高める

 地元率の上位は沖縄県のほか、愛知県89.7%、北海道87.9%、広島県86.9%の順だった。愛知県や広島県は、自動車産業などの基幹産業が成長したことでお膝元に関連業種が集中し、地元で就職や創業、または跡を継いで社長になるケースも多いことが背景にある。
 一方、「地元率」が最も低かったのは奈良県の66.8%。次いで、佐賀県67.8%、長崎県67.8%と続く。全国平均は79.9%で、21道府県で平均を上回った。

地区別の社長「地元率」、北海道が87.9%で断トツ

 地区別の「地元率」では、北海道が87.9%で断然トップ。次いで、中部84.3%、四国81.7%、北陸81.3%、東北81.1%、中国80.6%、関東78.1%、九州77.0%、近畿75.6%と続き、9地区のうち関東と近畿を除く7地区で前年より比率が上昇した。


 少子化と高齢化の同時進行で、地方は活性化の源になる人口減少が続いている。このまま進むと地方と大都市との経済格差が拡大していく可能性が高い。政府の「地方創生」は、地方経済の立て直しを目標としているが、地方のニーズを踏まえた創業支援や地域発の次世代産業の創出などで人材流出を防ぐ有効な手立てが急務になっている。今後、自治体や地場財界などを中心に、地域を巻き込んだ動きとなって機能すると、社長「輩出率」が名実ともに地方の活性化を測る一つのバロメーターになるだろう。

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