• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

銀行114行「建設業向け貸出金」調査

 アベノミクス効果もあって建設市場が活況をみせ、銀行114行の2015年3月期の建設業向け貸出金残高は、前年同期を上回り3月期決算ベースで減少傾向に歯止めがかかった。
 ただし、銀行全体の貸出しの伸びに比べて増加率は低く、地域によってもバラツキがみられた。今後も建設業向け貸出しが右肩上がりで拡大していくかは不透明さも残している。


  • ※本調査は、銀行114行を対象に、2015年3月期連結決算ベースの建設業向け貸出金残高を調べた。なお、信託銀行2行、りそな銀行、沖縄銀行は信託勘定を含む。傘下の銀行が連結子会社となっている場合や単体データのみ公表の銀行は、単独決算の業種別貸出状況を比較した。
  • ※2012年4月1日に住友信託銀行・中央三井信託銀行・中央三井アセット信託銀行の合併で発足した三井住友信託銀行は、過去データとの比較ができないため、調査対象に含まれていない。

建設業向け貸出金残高推移

建設業向け貸出金残高、前年同期比1.0%増

 銀行114行の2015年3月期連結決算ベースの建設業向け貸出金残高は、11兆2,201億4,000万円(前年同期11兆1,074億6,100万円)。1年前の2014年3月期と比べて1.0%増(前年同期比1,126億7,900万円増)になった。
 ただし、銀行114行の総貸出金残高が、433兆207億300万円(前年同期423兆2,302億2,600万円)と前年同期に比べて2.3%増(前年同期比9兆7,904億7,700万円増)になったのに対し、建設業向けは全体の貸出しの伸びを下回っている。

貸出金増加行が前年同期より倍増

 前年同期比では、114行のうち72行(構成比63.1%、前年同期37行)で貸出残高を伸ばし、増加行が倍増した。増加額が最も大きかったのは、京葉銀行の171億2,000万円増。次いで、七十七銀行の150億9,600万円増、北海道銀行(単体)が135億5,300万円増、みずほ銀行124億円増と続く。増加額100億円以上は8行(前年同期ゼロ)と前年同期より増加ぶりが目立った。
 また、増加率のトップは、長崎銀行(単体)の28.2%増。次いで、佐賀銀行17.1%増、愛媛銀行15.7%増、東日本銀行14.8%増の順。増加率10%以上は12行(前年同期5行)にのぼった。
 一方、減少額の最大は北洋銀行(単体)の334億7,700万円減。また、減少率が最も大きかったのは、みずほ信託銀行の18.4%減だった。

貸出比率、前年同期比0.03ポイント低下の2.59%

 こうしたなか、総貸出金に占める建設業向け貸出比率は、2015年3月期が平均2.59%。前年同期(2.62%)より0.03ポイント低下し、建設業向け貸出しは前年同期より増加したが、全体の貸出しの伸びと比べると、増加ペースが鈍いことを裏付けた。
 個別でみると、福岡中央銀行(単体)が11.2%でトップ。次いで、神奈川銀行10.5%、筑邦銀行10.4%、東北銀行8.4%、仙台銀行(単体)7.8%、愛知銀行7.6%と続く。
 一方、建設業向け貸出比率が低かったのは、新生銀行0.2%、東京スター銀行0.3%、スルガ銀行0.7%、あおぞら銀行0.9%、三菱UFJ信託銀行1.0%の順だった。

第二地銀の7割で建設業向け貸出を増やす

 業態別では、地銀64行は5兆9,439億2,100万円で前年同期比0.8%増。第二地銀41行は2兆3,748億100万円で同1.9%増。大手銀行9行は2兆9,014億1,800万円で同0.5%増になり、3業態すべてで建設業向け貸出金が前年同期を上回った。
 内訳では、地銀64行のうち、貸出増加が36行(構成比56.2%)、減少が28行だった。第二地銀41行は、増加が30行(同73.1%)、減少が11行になり、第二地銀の7割で建設業向け貸出を増やした。大手銀行9行は、増加が6行、減少が3行だった。

地区別、地域によって温度差

 本店所在地の地区別では、全国10地区の北海道、中部、北陸を除く7地区で貸出金が前年同期を上回った。前年同期比の増加率では、東北15行の4.1%増を筆頭にして、九州21行が2.6%増、中国9行が2.5%増、関東17行が1.5%増、東京11行が1.4%増、四国8行が1.1%増、近畿11行が0.9%増の順だった。一方、減少率は北海道2行が5.5%減、中部14行が2.1%減、北陸6行が0.2%減の順で、地域によって温度差がみられた。
 地区別の増減行では、北海道(増加行1、減少行1)、東北(増加行11、減少行4)、関東(増加行10、減少行7)、東京(増加行8、減少行3)、中部(増加行5、減少行9)、北陸(増加行3、減少行3)、近畿(増加行8、減少行3)、中国(増加行7、減少行2)、四国(増加行4、減少行4)、九州(増加行15、減少行6)だった。


 銀行の建設業向け貸出しは、3月期決算ベースで前年同期より増加に転じた。増加の一因には、東京オリンピック関連など将来の建設需要を見込んで、建設会社が設備投資を増やしているためとの指摘がある。しかしこの一方で、全体の銀行貸出しの伸びより増加率が鈍い動きになっている。公共事業の一巡による受注量の減少や地域間格差の拡大が懸念されるなか、銀行の建設業向け貸出しが、本格的な復調をみせるかは、今後の推移をみる必要がある。

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「最低賃金」改定で、51.3%の企業が「給与変更」 2020年代の1,500円 「対応不可能」が4割切る

厚生労働省は9月3日、2026年度の全国の最低賃金額(平均)を1,177円(56円増)に引き上げた。 1978年度に目安制度が始まって以降、平均引き上げ額56円は前年度に続き2番目の高さで、これを受けて給与改定を迫られる企業が半数に達することがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

1-9月「医療機関」倒産 過去最多の59件 身近なクリニック、歯科医院で苦境が鮮明

医療機関の倒産が再び勢いを増している。2026年1月-9月に倒産した病院・クリニック(診療所)・歯科医院などの「医療機関」は59件(前年同期比28.2%増)と、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

「税金滞納」倒産が168件、前年同期の2倍に大幅増 2026年度上半期の「税金滞納」倒産 破産が97.6%

2026年度上半期(4-9月)の「税金滞納(社会保険を含む)」倒産は、168件(前年同期比100.0%増)と、前年同期の2倍に達し、この10年で最多を記録した。物価や人件費などのコストアップが企業収益を圧迫し、納税原資を確保できない小・零細企業の行き詰まりに拍車を掛けている。

4

  • TSRデータインサイト

「社会保険の適用拡大」 中小・零細企業ほど負担増 企業の44.9%が「働き控え」懸念、「未対応」も半数

2026年10月から非正規従業員にも社会保険の適用が拡大された。「月収8万8,000円以上」の賃金要件が撤廃され給与額に関わらず条件を満たす社員は、新たに厚生年金や健康保険の加入対象となる。10月1~8日企業を対象に「社会保険適用の基準変更」に関するアンケート調査を実施した。

5

  • TSRデータインサイト

2026年1-9月「デイサービス」倒産47件 同期間で過去最多、介護業界の苦境鮮明

デイサービスなど「通所・短期入所介護事業」の倒産が増加している。2026年は9月までに47件(前年同期比34.2%増)と大幅に増加し、1-9月で過去最多を更新した。多様化するサービスなど、他社との競争が激化するほか、物価高に人手不足も重なり、苦境が深まっている。

TOPへ