GC注記27社、重要事象32社 ピーク時の6割減
2014年3月期決算を発表した上場企業2,467社のうち、監査法人から「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン注記)」(以下、GC注記)が付いた企業は27社だった。前年度本決算(2013年3月期、33社)より6社減少し、2013年9月期中間決算(26社)より1社増加した。また、GC注記に至らないが、事業継続に重要な疑義を生じさせる事象がある場合に記載する「継続企業に関する重要事象」(以下、重要事象)は32社で、前年度本決算(40社)、前中間決算(41社)より大幅に減少した。
上場企業の2014年3月期決算は大手を中心に好決算が相次ぎ、景気浮上の期待感も高まっている。これに伴いGC注記企業数の減少傾向が続いている。ただし、新興市場や東証2部などの中堅企業でGC注記が継続的に付くケースも多く、好不調の二極化が鮮明となってきている。
- ※本調査は、3月期決算で東証から新興市場までの全証券取引所に株式上場する企業を対象に、2014年3月期決算短信で「GC注記」及び「重要事象」が付いた企業の内容、業種を分析した。(6月3日までの決算短信発表分)
GC注記 重要事象の付記企業は合計59社 ピークから6割減
GC注記に関するルールは、2009年3月期からGC注記と重要事象の2段階に分けて開示するよう変更された。これによりGC注記企業は減少したが、重要事象を記載した企業との合計は2009年3月期で過去最多の145社となった。その後、GC注記、重要事象とも減少傾向をたどり、2014年3月期は合計59社(GC注記27社、重要事象32社)と、ピークから6割減でリーマン・ショック前の水準以下となった。
2014年3月期決算でGC注記が付いた上場企業は27社で、2013年9月期中間決算(26社)から1社増加した。前中間決算と比較すると3社のGC注記が解消した。また太陽商会(旧商号:NowLoading、名証セントレックス)は決算発表が遅延していたが、6月28日に上場廃止となることが決定した。
一方、前中間期はGC注記が付いていなかったが、3月期本決算で新たに付いた上場企業は、クボテック(東証1部)、浜井産業(東証2部)、アジア・アライアンス・ホールディングス(東証2部)、朝日工業(JASDAQ)、メッツ(東証マザーズ)の5社だった。このうち、老舗電炉メーカー、朝日工業は今年2月に北関東を襲った記録的大雪で工場設備が被災。埼玉県内の製鋼工場が操業停止に陥り、大幅な損失が発生したことが主要因でGC注記が付いた。
GC注記企業 本業不振が中心
GC注記27社のうち、26社(構成比96.2%)が「重要・継続的な売上減」、「損失計上」、「営業キャッシュ・フローのマイナス」など、本業不振を理由としている。次いで、「金融機関や取引先などへの支払条件変更・遅延」、「借入過多・財務悪化」「資金繰り懸念・資金調達難」がそれぞれ3社(同11.1%)と続く。売上減や赤字計上など、本業悪化を理由とした注記が9割を超え、深刻な業績不振から脱却できない上場企業に継続してGC注記が付いている。
債務超過企業は1社(同3.7%)で、前中間決算(3社)から2社減少した。債務超過は1年内に解消できなければ原則上場廃止となるため、早急な業績回復・資本増強策が求められる。
- ※注記理由は重複記載のため構成比合計は100%を超える
業種別では製造業が約5割 新興市場と中堅規模が中心
GC注記企業27社の業種別では、製造業が13社(構成比48.1%)と約5割を占め、突出した。中堅規模で大手の下請メーカーなどが中心で、業歴はあるものの体力に乏しい企業が多い。上場区分別では、27社のうち新興市場が16社(同59.2%)を占めた。業歴浅く小規模の新興企業が業績悪化から浮上できないケースも目立っている。
上場企業の倒産は年度別ではリーマン・ショック時の2008年度の45社をピークに2009年度7社、2010年度10社、2011年4社、2012年度6社と減少傾向で、2013年度は2社にとどまった。倒産の減少に伴い、GC注記と重要事象の記載企業は減少している。ただ、2013年度に倒産したインデックス(東京都、JASDAQ)、ワールド・ロジ(大阪府、JASDAQ)の2社にはそれぞれGC注記が付いていた。大手を中心に好決算が目立つが、業績不振企業との格差は拡がっており引き続きGC注記企業の動向が注目されている。