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銀行の中小企業等貸出 2年連続で微増

銀行112行の2013年3月期単独決算の中小企業等貸出金残高は、2年連続で前年同期を上回った。だが、貸出金に占める中小企業等貸出金の比率は68.3%と、前年同期より1.0ポイント低下した。
業態別では、大手行が2008年3月期から6年連続で減少し、地銀・第二地銀は3年連続で前年同期を上回った。しかし、総貸出に占める中小企業等貸出比率50%未満が3行(前年同期1行)に増え、地銀18行(構成比28.5%)、第二地銀13行(同31.7%)とそれぞれ約3割の銀行で貸出が減少し、中小企業等への貸出は依然として慎重なことがわかった。

  • 本調査は、5月17日までに2013年3月期決算短信が公表された国内銀行112行を対象に2013年3月期単独決算の中小企業等貸出金残高を分析した。「中小企業等」は、資本金3億円(ただし、卸売業は1億円、小売業、飲食業、物品賃貸業等は5千万円)以下の会社または常用する従業員が300人(ただし、卸売業、物品賃貸業等は100人、小売業、飲食業は50人)以下の会社および個人を指す。なお、決算短信で中小企業等貸出金の比率しか記載されていない場合は、比率から金額を算出した。調査開始は2005年3月期から。

中小企業等貸出金残高 2年連続で前年同期を上回る

銀行112行の2013年3月期単独決算の中小企業等貸出金残高は、272兆5,879億円だった。2012年3月期と比べ0.6%(1兆8,211億円)増加し、2年連続で前年同期を上回った。
2013年3月期の総貸出金残高は、大手行を中心に大手企業や地方公共団体向けの貸出を増やし前年同期比2.1%増(同8兆4,746億円増)と伸びたが、これに比べ中小企業等貸出金の増加率は鈍いものとなった。

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中小企業等貸出金増加行が約7割

前年同期比の増減額では、112行のうち78行(構成比69.6%)で中小企業等貸出金残高を増やした。増加額が最も大きかったのは、横浜銀行の2,954億円増。次に、りそな銀行2,503億円増、福岡銀行1,963億円増、埼玉りそな銀行1,875億円と続き、増加額100億円以上は57行(同50.8%)だった。
これに対し、34行(構成比30.3%)が前年同期を下回った。最も減少したのは三菱東京UFJ銀行の1兆375億円減。次いで、三井住友銀行1,389億円減、もみじ銀行1,349億円減、十六銀行877億円減、みずほコーポーレート銀行694億円減と、大手行が目立った。

増加率1%未満が14行

増加した78行を前年同期比の増加率でみると、西京銀行の9.9%増が最も大きかった。次に、熊本銀行7.5%増、仙台銀行6.9%増、トマト銀行6.0%増、群馬銀行5.7%増の順。増加率では、5%以上が7行、4%以上5%未満が10行、3%以上4%未満が5行、2%以上3%未満が22行、1%以上2%未満が20行、1%未満が14行。1%以上3%未満で全体の53.8%を占めた。
減少した34行の前年同期比の減少率は、もみじ銀行の10.1%減を筆頭に、福井銀行3.8%減、大光銀行3.6%減、東京スター銀行3.3%減の順だった。

貸出金比率68.3% 前年同期比1.0ポイント低下

総貸出金残高に占める中小企業等貸出金比率は平均68.3%で、前年同期(2012年3月期69.3%)より1.0ポイント低下した。
中小企業等貸出金比率は90%以上が5行(前年同期8行)、80%以上90%未満が28行(同29行)、70%以上80%未満が33行(同33行)、60%以上70%未満が30行(同27行)、50%以上60%未満が13行(同14行)、50%未満が3行(同1行)だった。中小企業等貸出金が増加するなかで、貸出金比率90%以上が3行減少し、50%未満は2行増加しており、中小企業等貸出金の先行きは依然として不透明感を払拭できずにいる。

中小企業等貸出比率50%未満 みずほコーポ、岩手銀、青森銀の3行

総貸出金残高に占める中小企業等貸出金比率を個別でみると、最高はスルガ銀行の95.3%だった。次いで、大正銀行92.9%、南日本銀行92.2%、関西アーバン銀行92.1%、静岡中央銀行92.0%と続く。一方、中小企業等貸出金比率が低かったのは、みずほコーポレート銀行36.2%、岩手銀行49.4%、青森銀行49.6%、山口銀行50.1%の順。全国平均の68.3%を超えたのは72行。これを業態別に平均を上回った銀行数をみると、大手行が8行中4行(構成比50.0%)、地方銀行は63行中30行(同47.6%)、第二地銀は41行中38行(同92.6%)だった。

地銀と第二地銀で中小企業等貸出金が増加

中小企業等貸出金を業態別でみると、大手行が121兆3,677億円で前年同期を0.3%(4,288億円減)下回った。一方、地元企業を主力取引先とする地域銀行は、地方銀行が115兆6,791億円で前年同期比1.7%増(2兆148億円増)、第二地銀が35兆5,409億円で同0.6%増(2,351億円増)と、そろって前年同期を上回った。大手行の中小企業等貸出金は2008年3月期以降、6年連続で前年同期を下回っている。地方銀行や第二地銀は3年連続で増加し、大手行と地方銀行、第二地銀で中小企業等に対する貸出姿勢の違いが浮き彫りになった。

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中小企業等貸出金 北陸・北海道を除く7地区で増加

銀行の本店所在地の地区別では、全国9地区のうち7地区で中小企業等貸出金が前年同期を上回った。前年同期比の増加率は九州の3.1%増を最大に、中部が1.5%増、東北が0.9%増、近畿が0.8%増、中国が0.5%増、関東が0.2%増、四国が0.08%増の順。これに対し減少は、北陸が0.6%減、北海道が0.1%減の2地区だった。


2013年3月末で中小企業金融円滑化法は期限切れを迎えた。これより前の2012年11月、金融大臣が金融円滑化法の期限切れ後も同様の対応を行うよう金融機関に通達を出した。さらに、資本性借入金やABL(動産・売掛金担保融資)等の活用で、中小企業等への貸出を促す方針を打ち出している。
しかし、中小企業等を取り巻く経営環境は厳しく、貸出金の伸びが鈍い状況が続くと同時に、金融機関ごとの対応はかなりの温度差が生じている。金融機関は過去の業績や債務者区分にとどまらず、企業の強みや将来性をいかに見出して成長に導くか、その存在感を問われている。

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