2025年度の「鉄鋼業」 3期連続で減収 “内憂外患“広がり、大企業の業績が悪化
~ 2025年度「鉄鋼業」業績動向調査~
全国の鉄鋼業1,248社の2025年度の売上高合計は16兆1,886億円(前期比5.4%減)と、 3期連続で減少した。一方、最終利益(純利益)合計は7,108億円(同3.6%増)と3年ぶりに増加したが、ピークの2022年度(1兆229億円)から約3割下回った。
国内では建設コストの上昇が需要を抑える一方、輸出面では各国の保護主義の強まりや鋼材需給バランス悪化が逆風となり、鉄鋼業の業績に重くのしかかっている。
政府は、韓国、中国産の溶融亜鉛めっき鋼帯・鋼板を巡り、8月8日から12月7日の期間で暫定的な不当廉売関税を課した。財務省と経済産業省は2025年8月から調査を進め、2026年7月に不当に安い価格で貨物が輸入され、国内産業に与える実質的な損害等の事実を推定できたと公表した。
このダンピング問題は溶融亜鉛めっき鋼帯・鋼板を対象としているが、国内の鉄鋼業全体でもここ数年、売上高や利益の縮小が目立つ。
特に、資本金1億円以上の企業は、売上高が2022年度をピークに減少をたどり、純利益も同年度から大きく落ち込んでいる。製造業は円安を追い風に、輸出企業を中心に業績を伸ばす企業も多いが、鉄鋼業は大企業ほど業績悪化が先行しており、異なる動きがみられる。
厳しい事業環境が続くなか、アンチダンピング措置の効果や鋼材需要の動向が、今後の業績を左右しそうだ。
※本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(約440万社)から、2025年4月期-2026年3月期を最新期として、5期連続で売上と純利益が判明した1,248社を抽出し、分析した。
2022年度をピークに3年連続で減収
2025年4月期-2026年3月期を最新期とし、5期連続で売上と純利益が判明した鉄鋼業1,248社を対象に業績を分析した。
2025年度の「鉄鋼業」の売上高は16兆1,886億円(前期比5.4%減)で、3年連続で前年度を下回った。純利益は7,108億円(同3.6%増)と3年ぶりに増加したものの、2022年度の1兆229億円からは3,121億円減少している。
利益率は2022年度の5.6%から2024年度には4.0%まで低下したが、足元の2025年度は4.3%とやや持ち直した。
規模別では、資本金1億円以上の大企業で業績悪化が目立つ。売上高は2022年度の15兆6,516億円をピークに減少が続き、2025年度は13兆9,573億円まで落ち込んだ。
純利益も2022年度の9,588億円から2024年度には6,245億円まで落ち込み、2025年度も6,514億円と2年連続で6,000億円台にとどまっている。

2024年度以降は減収企業数が増収企業数を上回る
売上高の増減別では、2025年度は1,248社のうち、減収が664社(構成比53.2%)と、増収の468社(同37.5%)を上回った。
2022年度は増収が943社(同75.5%)に達したが、2024年度は減収が676社(同54.1%)に増え、増収企業数458社と逆転した。2025年度も減収が増収を上回り、2022年度から事業環境が一変している。
資本金1億円以上は、変化がより鮮明に表れている。2022年度は180社のうち、166社(同92.2%)が増収だったが、2023年度は82社(同45.5%)まで減少し、減収が96社(同53.3%)と逆転した。さらに2024年度は減収115社(同63.8%)、2025年度は同124社(同68.8%)と増加し、大手企業が先行する形で売上高が縮小し、減収企業も増え続けている。
一方、資本金1億円未満は、2025年度に減収が540社(同50.5%)と半数を占めたが、前年の561社(同52.5%)からは減少した。増収が393社(同36.7%)から412社(同38.5%)に増え、足元ではわずかながら持ち直しもみられる。大手で減収企業の割合が高まる一方、中小では悪化にいったん歯止めがかかるなど、企業規模で異なる動きも出ている。
利益は、2025年度は増益が570社(同45.6%)、減益が563社(同45.1%)と拮抗した。2022年度は増益が647社(同51.8%)と過半を占めたが、2023年度以降は増益企業の割合が低下し、2024年度は減益が617社(同49.4%)と増益の511社(同40.9%)を上回った。足元の2025年度は少し持ち直している。
規模別では、資本金1億円以上は、2025年度は増益、減益ともに90社(同50.0%)で並んだ。資本金1億円未満は増益480社(同44.9%)、減益473社(同44.2%)と、前年度から増益企業が増加し、利益では改善した企業が増えている。

売上高1,000億円以上は21社、売上高全体の68.2%を占める
売上高別の社数分布では、1億円以上5億円未満が342社(構成比27.4%)で最も多く、10億円以上50億円未満が327社(同26.2%)、5億円以上10億円未満が186社(同14.9%)と続く。売上高100億円未満は1,092社と全体の87.5%を占め、1,000億円以上は21社(同1.6%)だった。
一方、金額では大企業のシェアが圧倒的で、寡占化が進んでいる。1,000億円以上の21社の売上高は11兆522億円に達し、全体の約7割(68.2%)を占めた。100億円以上の156社まで広げると、売上高は全体の90.0%に達する。売上上位1割強の企業群が、鉄鋼業の売上高の大半を占める構図が浮かび上がる。

業歴50年以上が75.5%、新規参入のハードル高い
業歴別では、60年以上70年未満が212社(構成比16.9%)で最も多く、70年以上80年未満が192社(同15.3%)、50年以上60年未満が189社(同15.1%)と続いた。100年以上の老舗企業も131社(同10.4%)にのぼる。業歴50年以上の企業は943社(同75.5%)と7割以上を占めた。
一方、10年以上20年未満は44社(同3.5%)、10年未満は13社(同1.0%)で、業歴20年未満は57社(同4.5%)にとどまった。鉄鋼業は比較的規模の大きい生産設備が必要な装置産業で、設備投資の負担も大きい。こうした事業特性から新規参入のハードルは高く、長い業歴を持つ企業が業界の中心を占める構造となっている。

鉄鋼業を取り巻く事業環境は、国内需要の縮小と海外事業者との競争激化が重なる構造的な厳しさを映している。
経済産業省「2026年度第2四半期(2026年7-9月期)鋼材需要見通し」によると、鋼材需要は1,805万トンと前年同期比3.1%減が見込まれている。国内では、建築分野で人手不足や建設コスト上昇の影響が続くほか、輸出では各国の保護主義的な動きの強まりや中国の鋼材需給バランス悪化による影響が下振れ要因として挙げられている。
こうしたなか、8月8日から溶融亜鉛めっき鋼帯及び鋼板に対する暫定的な不当廉売関税の課税が実施された。安価な輸入材との価格競争が国内メーカーの採算を揺さぶる構図を象徴している。
さらに、経済産業省「『トランジション・ファイナンス』に関する鉄鋼分野における技術ロードマップ」によれば、脱炭素に向けた製鉄プロセスなどの大規模転換も将来的に求められている。国内需要の伸び悩みと海外からの供給圧力が重なり、収益が圧迫されるなか、足元の採算確保と将来に向けた設備投資の両立が、鉄鋼各社の大きな課題となっている。
政府による需要創出や事業環境の整備も含め、国内鉄鋼業の競争力をどう立て直していくかが今後の焦点となりそうだ。