地方圏中心に減少が続く測量業者 高齢化が続くなか技術・ノウハウの承継が課題
~ 2025年度 「測量業」業況調査 ~
道路や河川などの社会インフラ整備にとどまらず、土地利用、災害発生時の被害把握から復旧まで、測量は社会を支える基礎的な業務の一つだ。だが、その担い手である測量業者は長期にわたり減少が続いている。これは特定の地域に限らず全国に広がっており、代表者や技術者の高齢化も進行している。
需要は底堅いが、急速に進む技術革新への対応も求められる地域の測量業界を誰が支えていくのか。測量業を取り巻く現状を、各種データから探った。
※本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(約440万社)から、直近の動向が確認できた「測量業」企業(2025年度7,555社)を抽出し、分析した。
測量業者数は2003年をピークに22年連続で減少
国土交通省の「建設関連業登録業者数調査(令和7年度)」によると、2025年度末の測量業の登録業者数は1万924業者で、前年度末から216業者(1.9%)減少した。2025年度中の新規登録は271業者に対し、登録消除は487業者にのぼり、登録消除が新規登録を大きく上回った。登録消除の内訳は、廃業などの届出が212業者、更新切れが275業者だった。
測量業者数は2003年度末の1万4,750業者をピークに減少が続き、2025年度末まで22年連続で前年を下回っている。ピークからの減少数は3,826業者、減少率は25.9%に達する。減少率は2023年度の1.4%、2024年度の1.5%から2025年度は1.9%へ拡大し、足元では減少ペースがやや強まっている。

本社地別の企業数は9地区すべて減少、北陸は10年で2割近く減少
測量業者の減少は、特定の地域に偏った動きではない。国土交通省の「建設関連業登録業者数調査(令和7年度)」によると、2025年度末の測量業者数は、地方整備局等の所管地域別で北海道から沖縄まで全地域が前年度を下回った。都道府県別でも37都道府県で減少し、業者数の減少は全国に広がっている。
東京商工リサーチ(TSR)が保有する企業データベース(約440万社)から、直近の動向が把握できた測量業者を抽出した。ここでも全国9地区の10年間の推移は、同様の傾向がみられた。2015年と2025年を比較すると、北海道、東北、関東、中部、北陸、近畿、中国、四国、九州の全9地区で企業数が減少した。減少率は、北陸が18.4%減と最大で、中国9.8%減、中部9.5%減と続く。
一方、関東は5.0%減、近畿は3.5%減の減少率にとどまり、他地区と比べて抑制されている。地域によって減少の程度に差があるが、測量業者が増加した地区はなかった。
測量業者は、道路や河川をはじめとする社会インフラの整備や土地利用を支えている。測量業者の地域性が特に重要になるのが災害時だ。国土交通省中部地方整備局の富士砂防事務所では、災害発生時の被害拡大防止や被災施設の早期復旧に向け、測量や設計、観測などの応急対策業務を担う企業について、「災害発生時等に早期対応が可能な地理的条件」を選定条件としている。関東地方整備局の日光砂防事務所でも、災害協定の締結先に「即時対応が可能な地理的条件」を求めており、災害対応は技術力だけでなく、現場に迅速に駆け付けられる体制も重視されている。
近年は地震や大雨などの災害が目立つ。気象庁によると、1時間降水量50ミリ以上の大雨の年間発生回数は、1976~1985年と2015~2024年を比べると約1.5倍に増えている。地区別の企業数から、地域の測量体制が不足しているとは即断できないが、全国的に測量業者の減少が続くなか、災害対応やインフラの維持管理を担う企業が地域ごとに確保されているか、今後の重要な論点になりそうだ。

10年前から代表者の高齢化が深刻
東京商工リサーチ(TSR)が保有する企業データベース(約440万社)から測量業者を抽出し、代表者年齢の推移を分析した。2025年は60歳代が963社(構成比32.5%)で最も多く、次いで70歳代が883社(同29.8%)、50歳代が663社(同22.4%)と続いた。60歳以上は2,003社で、年齢が判明した企業全体(2025年2,956社)の7割近く(67.7%)を占めた。
国内のあらゆる産業で、経営者の高齢化や後継者不足が深刻な課題に浮上している。測量業でも、代表者の高齢化は最近始まったものではない。2015年(判明3,445社)にはすでに60歳代が1,634社と突出して多く、60歳以上が2,140社(構成比62.1%)と6割を占めていた。その世代がさらに年齢を重ね、70歳以上は2015年の506社から2025年には1,040社(105.5%増)へ倍増した。構成比も14.6%から35.1%へ大きく上昇している。
一方、60歳未満は2015年の1,305社から2025年には953社へ減少し、構成比も37.8%から32.2%へ低下した。代表者の世代交代が進まず、高齢層がさらに上の年代へ移行している状況がうかがえる。
代表者の高齢化が進む一方で、測量業は技術の高度化が加速している。加えて、現場を支える測量技術者も高齢化が進み、人材の確保や技術継承、新技術への対応を早急に進めることが必要だ。こうした変化への対応力の差が、今後の事業継続や業界再編に影響するとみられる。

残る企業も楽ではない、資本金1,000万円未満で収益力低下
測量業者の減少が続くなか、事業を継続して残っている企業の経営環境も楽観できない。
東京商工リサーチ(TSR)の企業財務データから、2020年度から2025年度まで6期連続で売上高と純利益を確認できた測量業者3,890社の業績を分析した。
測量業者3,890社の2025年度の売上高は5,482億円、純利益は256億円だった。売上高は2020年度の4,865億円から12.6%増加し、2021年度以降、5年連続で前年を上回った。
純利益は2020年度の295億円を13.2%下回り、2022年度の319億円をピークに3年連続で減少した。2020年度以降では、売上高が最大となる一方で、利益は伸び悩んでいる。
収益低下の傾向も鮮明に出ている。2025年度の純利益率は4.6%で、2020年度の6.0%から1.4ポイント低下した。2021年度に6.3%まで上昇した後、2022年度6.1%、2023年度5.8%、2024年度5.6%、2025年度4.6%と4年連続で低下した。受注を確保して売上高を伸ばしても、最終的に利益として残る割合は縮小している。
企業規模別では、特に資本金1千万円未満の規模の小さい企業で収益低下が著しい。資本金1千万円未満(1,753社)の2025年度の売上高は854億円で、2020年度の801億円から6.6%増加した。しかし、純利益は28億円と、2020年度の48億円から41.6%減と大幅に減少している。
純利益率も2025年度は3.2%にとどまり、2020年度の5.9%から2.7ポイント低下するなど、「利益なき成長」の典型的な実態を映し出している。
資本金1千万円以上の企業でも利益は低下している。売上高は2020年度の4,064億円から2025年度は4,628億円へ13.8%増加した一方、純利益は減少し、純利益率は6.0%から4.9%に低下した。ただ、資本金1千万円未満でさらに利益率の低下幅が大きく、2025年度は両者の利益率は1.7ポイントの差が生じている。
測量業は、人件費などのコスト負担に加え、人材の確保・育成や設備投資、新たな測量技術への対応も求められる。収益力が低下すれば、こうした将来に向けた投資に回せる余力は乏しくなる。特に、小規模企業は売上を確保しても利益を残しにくい状況が続き、事業承継や技術者不足への対応に足かせとなっている。

測量業者の減少が、直ちに測量機能の低下を意味するわけではない。業者数が減っても、業務の効率化などで必要な測量体制が維持されるならば、短絡的に問題とはいえないだろう。ただ、測量業は全国一律にサービスを供給する仕事ではなく、道路や河川、土地など、それぞれの地域の状況を把握しながら業務を行う。特に、災害時は、いち早く被災現場に入り、復旧に必要な測量を始めることが求められる。実際、国土交通省の災害対応でも、応急対策を担う企業には早期対応が可能な地理的条件が求められており、地域に担い手が残っているかという視点が重要になる。
ただ、その担い手を維持するハードルが年々高くなっている。国土地理院が発表した「令和5年度測量業における測量士・測量士補に関する実態調査」では、従業員10人未満の企業が過半数を占め、測量士・測量士補は50歳代が最も多い。5年前と比べても技術者の高齢化が進み、人手不足を理由に採用を行う企業が多いが、募集人数に対する応募者、採用者は圧倒的に少ない。ベテランが持つ技術や地域の知識を、次の世代へどう引き継ぐか業界共通の課題になっている。
さらに、測量の仕事そのものも技術の進歩で変わりつつある。人材の育成だけでなく、新しい機器や技術への投資が急務になっている。だが、資本金1千万円未満の低収益の企業は、売上高が増えても利益率は大きく低下しており、人材や設備への投資余力を確保できるかも課題となる。
災害対応やインフラの維持管理など地域に必要な測量機能を残しながら、技術者を育成し、蓄積された技術を次世代へ引き継ぐ。測量業界は、新たな測量技術にも対応できる体制をつくれるかが問われている。長期にわたる業者数の減少が続くなか、高度経済成長期に造られて老朽化が進む橋、道路、トンネルなどのインフラは、今後20年から30年にわたり修繕や更新が見込まれる。さらに、大都市では再開発案件も相次ぐ。底堅い公共事業、民間需要の中で、地域の測量を持続的に担える企業・人材をどう育成していくか。測量業界は大きな課題に直面している。