大手ホテル好調 客室単価と稼働率が同時上昇 客室単価はコロナ禍の2倍超、稼働率は83.3%
~ 2025年度 上場ビジネス・シティホテル「客室単価・稼働率」調査~
インバウンド需要と国内旅行の復活で、大手ホテルの客室単価と稼働率が、コロナ禍以降で最高を更新した。ホテル運営の上場12社(13ブランド)の、2025年度の客室単価は、1万7,818円(前年度比8.6%増)で、前年度より1,424円上昇した。また、稼働率は83.3%(前年度82.3%)で、高水準を維持した。
人件費や光熱費が上昇し、客室単価を押し上げるが、インバウンド(訪日外客数)やイベントによる旺盛な需要がホテル業界の活況を支えている。
日本政府観光局によると、2025年の年間訪日外客数は4,268万3,837人(前年比15.8%増)で、年間最多を更新した。これまで最多だった2024年の3,687万148人を約580万人上回った。2026年1-4月は、1,437万5800人(前年同期比0.5%減)で、引き続きインバウンド需要がホテル業界を潤いを与えている。
2025年度(4月-3月)の上場12社(13ブランド)の客室単価は、すべてのブランドで前年度の客室単価を上回った。また、客室稼働率も、13ブランドすべて70%を超えた。このうち、8ブランドが80%台で推移した。なかでも、「ベストウェスタン」など運営のポラリス・ホールディングス(株)は90.2%と唯一、90%台で好調だった。
ことし7-9月は夏休みやお盆休みに加え、祝日の並びでシルバーウィークも長期休暇を取りやすい日程になっている。このため、国内の旅行需要とインバウンド需要の取り込みで、ビジネスホテル、シティホテルの客室は好調な稼働率を維持するとみられる。
※本調査は、国内の上場ホテル運営会社12社の客室単価と稼働率を集計した。2026年2月に次いで8回目の調査。稼働率・客室単価は開示資料をもとに集計した。藤田観光は12月決算(1-12月)、グリーンズは6月決算だが、4-3月の公表値を集計。それ以外は3月決算(4-3月)となっている。
※集計対象の企業・ブランドは以下の通り。藤田観光(株)(ワシントンホテル)、相鉄ホールディングス(株)(相鉄フレッサ・サンルート)、東急不動産ホールディングス(株)(東急ステイ)、(株)共立メンテナンス(ドーミーイン)、(株)グリーンズ(コンフォートホテル、ホテルエコノなど)、西日本鉄道(株)(西鉄ホテル)、ポラリス・ホールディングス(株)(ベストウェスタン)、大和ハウス工業(株)(ダイワロイネットホテル)、(株)西武ホールディングス(プリンスホテル)、阪急阪神ホールディングス(株)(阪急阪神ホテルズ)、三井不動産(株)(三井ガーデンホテル)、九州旅客鉄道(株)(THE BLOSSOMなど)
客室単価(前年度比) 全社が堅調
2025年度の客室単価を前年度と比較した。
全13ブランドで、客室単価が前年度より上昇した。
上昇率は、5%以上10%未満が最多の9ブランド。次いで、10%以上15%未満が3ブランド、15%以上20%未満が1ブランドで続く。
2023年度と2024年度との比較では、10%以上15%未満が7ブランドで最も多かった。客室単価の伸びは落ち着きつつあるようだ。
最も上昇したのは、「阪急阪神ホテルズ」(阪急阪神HD)で、16.2%上昇だった。

客室単価(2021年度比) コロナ禍の2倍超も
コロナ禍の2021年度と2025年度で客室単価を比較した。比較可能な12ブランドすべてで客室単価が上昇した。
コロナ禍からの上昇率の最多は、150%以上200%未満と、50%以上100%未満の各4ブランド。次いで、200%以上が2ブランド。
200%以上は、 「三井ガーデンホテル」(三井不動産)の231.4%上昇、「東急ステイ」(東急不動産HD)の221.0%上昇だった。

【ビジネスホテル(9ブランド)】客室単価がコロナ禍の2倍超に
ビジネスホテル(9ブランド)の2025年度の稼働率は83.9%(前年度82.8%)で、客室単価は1万4,463円(前年度比8.9%増、前年度1万3,273円)だった。コロナ禍の2021年度は、外出規制などで宿泊機会が激減し、稼働率は57.0%にとどまった。客室単価は、宿泊客を確保するため低料金が広がり、6,325円まで落ちていた。
だが、コロナ禍が落ち着き、円安によるインバウンド需要の本格化などで、稼働率は2022年度は76.8%に急伸。2023年度以降、80%台を維持している。
客室単価は人件費や物価の上昇などで、客室単価の値上げが続き、2025年度は2021年度の約2.3倍となった。

【シティホテル(3ブランド)】稼働率は80%超が続く
シティホテル(3ブランド)の2025年度の客室単価は、2万5,490円(前年度比9.4%増、前年度2万3,298円)と上昇が続き、コロナ禍の2021年度の1万1,057円の2.3倍まで上昇した。
2025年度の客室稼働率は、81.2%(前年度80.2%)で、ここ5年間で最高だった。
国内旅行客は、コロナ禍前に戻りつつある。
さらに、円安の恩恵で訪日旅行者には割安感が強まっている。このため、客室単価の値上げと客室稼働率の上昇が、同時に侵攻している。

観光庁がまとめた「インバウンド消費動向調査」によると、2025年の訪日外国人旅行消費額は総額で9兆4,549億円(前年比16.3%増)だった。国・地域別の消費額は、中国が2兆58億円(構成比21.2%)で最も多く、以下、台湾、韓国とアジアが続く。
2025年11月の政治家による発言で日中関係が悪化し、事態は急変した。中国政府が渡航自粛を勧告し、中国の春節時期にあたる2026年1月~3月までの訪日中国人旅行客は、140万4,300人と前年の同時期に比べ55.1%減と半減以上も落ち込んだ。
中国以外からの宿泊客は増え、インバウンド比率が60%を超え、日中関係の悪化の影響が限定的なホテルもあり、上場企業12社(13ブランド)のビジネスホテル・シティホテルは高い稼働率を維持した。
ただ、人件費や光熱費などのコスト上昇が、ホテル収益を圧迫している。こうしたコスト増を背景に、客室単価の上昇と稼働率アップが同時に押し寄せている。
国内旅行やビジネスの復活や、円安を追い風にしたインバウンド需要の拡大で、2026年度に新たな出店や既存施設のリニューアルを計画するホテルは多く、需要の獲得競争は激しさを増している。
日本の観光資源の魅力や観光振興策で、今後も宿泊需要は底堅く推移するとみられる。6月15日、米国とイランは戦闘終結に向けて合意したとされるが、事態が収束するかは不透明な状況が続く。訪日旅行者がさらに増える期待もあり、ホテル業界の活況はしばらく続きそうだ。