「GC注記」、「重要事象」記載 合計61社 GC注記は過去最少の17社、コロナ禍前の水準に戻す
~ 2026年3月期決算 上場企業「継続企業の前提に関する注記」調査 ~
2026年3月期決算を発表した上場企業約2,300社のうち、決算短信で「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン注記)」(以下、GC注記)を記載したのは、過去最少の17社(前年同期24社)だった。これまでの最少は、2018年3月期と2025年9月中間決算の19社。
また、GC注記に至らないが、事業継続に重要な疑義を生じさせる事象がある場合に記載する「継続企業に関する重要事象」(以下、重要事象)は44社(同45社)だった。
GC注記と重要事象の記載は合計61社で、前年同期(69社)から8社減少した。コロナ禍後では、最多だった2022年3月期本決算の94社から33社減少(35.1%減)した。
売上高別(連結決算)では、100億円未満が49社(80.3%)と8割を占め、上場企業でも中堅以下や、ベンチャー企業などに集中した。赤字経営から脱却できず、ビジネスモデルの転換も難しい企業が継続的にGC注記・重要事象を記載しており、経営の二極化が拡大している。
※ 本調査は、全証券取引所に株式上場する3月期決算企業を対象に、6月3日までに発表した2026年3月期決算の決算短信に「GC注記」および「重要事象」を記載した企業の内容、業種などを分析した。
GC注記の企業数は過去最少
2026年3月期決算で、GC注記・重要事象を記載した上場企業は合計61社だった。コロナ禍で不振企業が急増したが、収束に伴い減少をたどり、コロナ禍前の50~60社前後の水準に戻った。
GC注記企業は17社で、前年度本決算と比べて7社、中間決算と比べて2社減少し、過去最少となった。中間決算から4社のGC注記が解消したが、2社が新たに記載した。
重要事象の記載は、中間決算の41社から3社増加し、44社となった。経営改善が進み重要事象が解消したケースもある一方、中間決算では記載がなかったが、本決算で新たに重要事象を記載した企業が11社、上場廃止となった企業が2社あった。

本業不振が約8割、債務超過は2社
GC注記・重要事象を記載した61社を理由別に分類した。49社(構成比80.3%)が重要・継続的な売上減や損失計上、営業キャッシュ・フローのマイナスなどの「本業不振」を理由としている。売上減少や採算性の低迷から、赤字が常態化した企業が目立った。
次いで、「借入過多・財務悪化」と「財務制限条項に抵触」が同数の7社(同11.4%)だった。
債務超過は2社(個別決算含む)だった。経営再建中の(株)ジャパンディスプレイは事業構造改革に伴う費用等で大幅赤字を計上し、債務超過に転落した。債務超過は上場廃止基準にも抵触するため、利益確保や増資などによる資本増強策が求められる。
※重複記載のため、構成比合計は100%とならない

製造・情報通信・小売・サービスで約9割
GC注記・重要事象を記載した61社を業種別に分類すると、製造業が25社(構成比40.9%)と最多で、4割を占めた。中堅規模の電気機器・機械部品メーカー、医薬品ベンチャー、化学品メーカー、繊維製品メーカーなど多岐にわたる。
以下、情報通信業が12社(同19.6%)、小売業が10社(同16.3%)、サービス業が7社(同11.4%)と続く。
母数が多い製造業のほか、情報通信業、小売業、サービス業が全体を押し上げ、上位4業種で54社(同88.5%)と、約9割を占めた。

売上高別 100億円未満が8割
GC注記・重要事象を記載した61社を、売上高別(連結決算ベース)で分類した。
最多は10~100億円未満の40社(構成比65.5%)で、6割を超えた。次いで1~10億円未満と100~500億円未満が同数の8社(同13.1%)。また、売上高が1億円に満たなかった企業も1社あった。
売上高100億円未満が49社(同80.3%)で、GC注記・重要事象記載企業の8割を占めている。
東証の統計(2025年)によると、連結売上高100億円未満の上場企業は全体の約3割(28.4%)にとどまる。GC注記・重要事象の記載企業は、中規模クラス以下や小規模ベンチャーに集中している。

東証スタンダードが6割
上場区分別では、東証スタンダードが37社(構成比60.6%)で最多。以下、東証グロースが17社(同27.8%)、東証プライムが4社(同6.5%)と続く。このほか、名証(メイン、ネクスト)が合計3社だった。
業界中堅クラスの比率が高い東証スタンダード上場が6割を占め、次いで新興企業が多い東証グロースが続く。
業歴や実績があるものの、大手との格差が生じ不振続きの中堅クラスや、業歴が浅く経営基盤が不安定な新興ベンチャーなどが大半を占めている。

上場企業の倒産は低水準で推移している。背景には金融機関の支援や私的整理などの再建手法の多様化などがあり、信用毀損や多くの取引先を巻き込む法的整理を回避する傾向が強まっている。上場企業の倒産は、2025年に1件((株)オルツ、民事再生)、2026年は現時点で1件((株)トーシンホールディングス、会社更生)発生した。いずれも粉飾決算など内部統制の不備が露呈した挙げ句の倒産で、業績不振に加えて、ガバナンス不全による信用性の低下に起因している。
コロナ禍が落ち着き、GC・重要事象の記載企業数は減少の一途をたどっている。ただ、不振企業の定着化が顕著で、経営が改善しないまま上場廃止に至るケースも散見される。
歴史的な株高が続くなか、業績好調の大手と不振企業の格差は広がっており、経営の変動を示すシグナルとしてGC・重要事象の記載の重要性が増している。