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弁護士の実務経験を活かし、大学院で教授職を担う ~ 髙井総合法律事務所・髙井章光弁護士 単独インタビュー ~

 2025年度の倒産が1万505件(前年度比3.5%増)と、2年連続で1万件を超えた。2013年以来、12年振りの高水準で、抜本再生の局面にある企業が少なくない。
 こうしたなか、企業法務や倒産法に強みを持ち、存在感を高めているのが髙井総合法律事務所(東京都港区)だ。
 長年、さまざまな事業再生案件に携わってきた代表の髙井章光弁護士は、一橋大学大学院の客員教授、東京大学大学院の講師を務める指導者としての顔も併せ持つ。
 東京商工リサーチ(TSR)は、髙井弁護士に事務所の特色や取り組みなどを聞いた。


髙井章光(たかいあきみつ)弁護士
1995年弁護士登録。あさひ法律事務所などを経て、2016年に髙井総合法律事務所を開設。事業再生や企業法務、企業間訴訟などに幅広く対応するほか、一橋大学大学院法学研究科客員教授なども務める。


―事務所の特色は
 私自身、日弁連中小企業法律支援センターの事務局長を5年ほど勤めた。中小企業の法務や事業再生、事業承継、創業支援などに注力する事務所だ。クライアントは大企業もあるが、中小企業が多く、私を含め5名の弁護士が在籍している。事業再生や倒産などの案件を希望して入所した若手の弁護士もおり、事業再生や倒産が1つの柱になっている。
 私的整理の場合、金融機関との交渉が中心になるが、法的整理は労働問題や取引関係、知財、金融など多種多様な問題が複雑に絡み合い、同時多発的に発生する。法的整理が「法律問題のるつぼ」と称される所以だ。
法的整理は、私的整理以上に時間が限られる部分も多く、問題が起きた際の瞬発的な対応力が求められる。我々が迅速に対応すれば、それだけ問題に対応できる可能性が広がる。同時並行的に対応しなくてはならない難しさもあるが、企業そのものを扱う面は非常に魅力があると思う。大小さまざまな事案を経験し、それぞれの規模で違った苦労がある。例えば、中小企業であれば資金繰り表がない場合や、必要な情報が出てこない場合もある。


インタビューに応じる髙井弁護士

―倒産動向、債務整理の課題は
 少しずつ倒産が増えている実感はあるが、リーマン・ショック後などと比べるとそこまで急激に増加している感覚はない。ただ、規模の大きな企業の倒産は金融機関の支援体制にもよるところが大きいのではないか。
 また、第二会社方式を用いて、優良事業のみを新会社に引き継がせ、旧会社を清算して再生する場合に特別清算を使うことがあるが、特別清算の手続きは株式会社しか使えず、医療法人などの特殊法人だと使うことができない。特殊法人の私的整理を進め、事業譲渡をしたにも関わらず、最終的に破産に移行せざるを得ないことは課題だ。
 
―印象に残っている案件は
 2022年に債権者から会社更生法を申し立てられたイセ食品(株)(TSRコード:311024971、千代田区) がある。
 イセ食品は国内大手の鶏卵販売業者だったが、従来からの金融債務の負担に加え、飼料価格の高騰やコロナ禍の外食産業の不振などで業績が悪化していた。私的整理を目指したが調整が難航し、債権者から会社更生法を申し立てられていた。
イセ食品は全国に鶏のいる農場があり、3日間何もしなければ鶏が死んでしまう切羽詰まった状況だった。管財人に選任されると事業体制をすぐに整え、会社や組織をコントロールした。関連の資産管理会社は管財業務を継続中だが、イセ食品の国内事業はスポンサーの支援を受け、2025年に早期に終結した。
 また、2003年に民事再生法の適用を申請した(株)東ハト(TSRコード:291103197、渋谷区) の事例では、主力のお菓子事業は堅調だったが、オーナーがゴルフ場事業に乗り出し、多額の負債を抱えていた。プレパッケージ型でスポンサーを決めたうえで民事再生に進んだが、スポンサー選定のやり直しが発生。当初のスポンサー候補からの支援が途絶え、資金支援まで途絶えてしまう危険が生じた。
 当時は数日後に資金ショートが見込まれるほど資金繰りが悪かったが、急遽、信頼できる金融機関の担当者に相談したら、二つ返事で融資を決断してくれた。結果的にこの融資を依頼することには至らなかったが、他の事件を通じた相互の信頼関係がベースにあり、支援の受託を即断してもらえたのだ。倒産事件は困難なことも多いが、必ずどこかに解決の糸口がある。

―今後の展望、中小企業にメッセージを
 事務所の弁護士は現在5名だが、組織が大きくなるとそれぞれの弁護士の関係性が希薄化する問題もあり、増えても10名前後までと考えている。共通する分野もありながら、それぞれが独自の強みを持って力を発揮してくれることが望ましい。
基本的に中小企業の事業再生や倒産の場合は、保証債務の整理に経営者保証ガイドラインを活用している。だが、事業再生に特化した弁護士は少なく、それを活用できない弁護士もいる。
 弁護士は、専門分野に知見を有しているので、早めの相談が肝心だ。実際、あと1カ月、2カ月早ければ、破産を回避できた案件も多い。相談にくるタイミングが早ければ早いほど選択肢が増えることは間違いない。


事業再生や企業法務に強み


 髙井弁護士は、民事紛争手続きと倒産法について社会人向け大学院で教鞭に立っている。受講生の年齢は幅広く、企業の法務部や弁護士、税理士や会社役員など多様な人材が講義を受けているという。髙井弁護士が培ってきた経験や知見は、着実に次代に紡がれている。

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