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「第三セクター等」の収益(売上高)が7兆円を突破 借入金、損失補償・債務保証は計5兆3,757億円

~2024年度「第三セクター等」経営状況調査~


 総務省が2025年12月に公表した2024年度の「第三セクター等(以下、三セク等)」は7,113法人で、2012年度(8,056法人)から943法人減少(11.7%減)したことがわかった。

 2024年度決算が判明した三セク等は5,926法人で、売上高にあたる収益総額は7兆4,045億円と過去最高を記録した。2022年度(6兆9,493億円)から6.5%増えた。

 損益は、経常赤字は2,352法人で、赤字率は39.6%だった。2012年度以降で最大だった前回から1.0ポイント低下したが、2017年度以降、ほぼ横ばいで推移。赤字率の最高は、 「地方独立行政法人」(医療機関、公立大学法人、産業技術センターなど)の57.2%で、医療機関などのひっ迫状況を示している。

 債務超過は246法人(構成比4.1%)で、債務超過率は前回から0.2ポイント低下し、前回に引き続き改善した。地方公共団体から補助金を受けている三セク等は2,823法人で、うち2,632法人が収益に計上している。

 三セク等は、発足母体の地方公共団体からの補助金収入や借入金に加え、損失補償・債務保証に依存するケースが少なくない。損失補償や債務保証の残高は、2022年度比で9.7%低下したが、1兆9,360億円に達する。

 住民サービスの観点から、生産性や採算性だけで判断すべきではないが、地方自治体の財政リスクに直結するだけに、三セク等の在り方について見直しを迫られる可能性もある。

※ 本調査は、総務省が公表した「第三セクター等の出資・経営等の状況」(最新は2024年度決算データ、2020年度より隔年公表)に基づき、業績が判明した「第三セクター等」を対象にした。

※ 「第三セクター等」は次の法人と定義した。(1)法律等の規定に基づき設立された一般社団法人、一般財団法人および特例民法法人のうち、地方公共団体が出資している法人、(2)株式会社、合名会社、合資会社、合同会社および特例有限会社のうち、地方公共団体が出資している法人、(3)地方住宅供給公社、地方道路公社、土地開発公社 (4)地方独立行政法人。


「第三セクター等」の減少ペースは鈍化

 自治体の財政健全化を促すため、政府は2009年度から5年間の時限措置(経過措置対象団体は2016年度まで)で「第三セクター等改革推進債(以下、三セク債)」を創設。経営改善が見込めない三セク等の整理に乗り出した。

 三セク債の活用で整理が進み、三セク債の創設直前の2008年度末に8,729法人を数えた全国の三セク等は、2024年度末は7,113法人と1,616法人減少した。

 三セク債の起債期限の2013年度の減少率は、前年度比3.8%減とピークに達したが、隔年公表となった2020年度は前々年度比2.2%減、2022年度は同1.5%減、2024年度は同1.0%減と、減少ペースは鈍化している。

「第三セクター等」の法人数推移

第三セクターや地方三公社が減少、一方で地方独立行政法人は増加

 三セク等の法人区分別では、最多は第三セクター(社団法人・財団法人、会社法法人)で6,336法人(構成比89.0%)。次いで、地方三公社が611法人、地方独立行政法人が166法人の順。

 2012年度からの12年間で第三セクターは635法人減少(2012年度比9.1%減)した。内訳は、社団法人・財団法人が421法人減(同12.1%減)、株式会社など会社法法人が214法人減(同6.0%減)。

 地方三公社も370法人減少(同37.7%減)した。内訳は、地方住宅供給公社が12法人減(同24.4%減)、地方道路公社が7法人減(同19.4%減)、土地開発公社が351法人減(同39.1%減)。

 前回調査(2022年度)との比較では、地方住宅供給公社と地方道路公社は増減がなく、土地開発公社は40法人減と際立つ。

 一方、公共性の高い事業の効率的な行政サービス提供と自主的・自律的な運営を目的として、自治体から分離・独立した地方独立行政法人は、2012年度から62法人増加(同59.6%増)と、対照的に増加となっている。

第三セクター等の法人数推移

収益総額(売上高)は過去最高の7兆4,045億円

 2024年度の三セク等の総売上高を示す収益総額は、過去最高の7兆4,045億円(前々年度比6.5%増)だった。内訳は、第三セクター(同9.5%増)、地方独立行政法人(同2.9%増)、地方三公社(同1.8%増)のすべてで増加した。第三セクターは法人数が減少しているにも関わらず、収益は4兆3,000億円台に達した。

第三セクター等の収益(売上高)推移

「経常赤字法人率」2024年度は前々年度比1.0ポイント減

 2024年度の決算が判明した三セク等(対象:5,926法人)のうち、経常赤字は2,352法人で全体の39.6%を占めた。前々年度(40.6%)から1.0ポイント減少し、2012年度以降で3番目に低い水準だった。俯瞰すると、2015年度に35.5%まで低下したが、その後は緩やかな上昇に転じ、ほぼ横ばいで推移していることには変わりはない。

 業務分類別の経常赤字法人率は、2024年度は「社会福祉・保健医療」が56.9%で最も高く、「公害・自然環境保全」56.7%、国際交流協会などの「国際交流」48.0%が続く。対照的に、システム開発などの「情報処理」は14.9%で最も低く、公営住宅管理などの「住宅・都市サービス」22.9%、水道事業やごみ処理業などの「生活衛生」32.2%の順だった。

「第三セクター等」の経常赤字法人率

「債務超過法人率」は4.1%、2020年度以降4%台で推移

 2024年度の三セク等の債務超過は246法人で、全体(5,926法人)の4.1%だった。前々年度(4.3%)から0.2ポイント低下したものの、4%台にとどまった。

 業績不振が続く三セク等の経営改善や整理のため、政府は2009年度から三セク債利用を促し、抜本的改革に向けた動きが進んだ。その結果、債務超過に陥った法人比率は2011年度の5.1%から2017年度は3.7%まで低下した。しかし、経営改善が一巡したところへ、コロナ禍や物価高が追い打ちをかけ、やや改善はみられるものの、2020年度から4%台で推移している。

「第三セクター等」の債務超過法人率

債務超過法人比率 地方独立行政法人で悪化

 三セク等の赤字法人比率を区分ごとにみると、「地方独立行政法人」(医療機関、公立大学法人、産業技術センターなど)が57.2%で最も高い。次いで、「第三セクター」(社団法人・財団法人、会社法法人など)が39.3%、「地方三公社」が37.4%だった。

 債務超過法人比率では、「地方独立行政法人」が6.6%(前々年度1.8%)で最も高く、「第三セクター」4.1%(同4.4%)、「地方三公社」が3.6%(同4.6%)の順。「地方独立行政法人」で財務内容の悪化が目立った。

第三セクター等の経常利益状況、資産超過、債務超過法人状況

決算判明の約半数が補助金交付あり

 2024年度に地方公共団体から補助金を交付された三セク等は2,823法人で、決算が判明した三セク等の47.6%を占めた。前々年度(2,958法人)から135法人減少し、前々年度に引き続き3,000法人を下回った。

 補助金の合計額は8,842億9,200万円で、前々年度(9,679億5,300万円)から8.6%減少した。

 補助金を交付された三セク等のうち、93.2%の2,632法人が収益に補助金を充てている。その合計は8,310億3,100万円で、補助金全体の9割超(93.9%)を占める。今後、補助金が見直される場合、赤字法人数の増大につながる可能性がある。

第三セクター等に対する地方公共団体からの補助金交付額状況

地方公共団体からの借入金は3兆4,397億円、損失補償・債務保証は1兆9,360億円

 2024年度で、地方公共団体から借入金を導入する三セク等は640法人(構成比10.7%)で、1割を占めた。借入残高は3兆4,397億円に達する。借入残高は前々年度(3兆5,535億円)から1,138億円減少(3.2%減)したが、減少幅は前々年度(3.5%減)と同程度にとどまり、依然として地方公共団体への資金的な依存度は高い。

 借入金とは別に、地方公共団体が金融機関などに損失補償や債務保証を設定する三セク等は393法人(構成比6.6%)で、残高は1兆9,360億円(前々年度比9.7%減)に達する。前々年度から法人数と残高ともに減少した。

 三セク等が破綻や清算などに追い込まれた場合、地方自治体が多額の不良債権や保証債務を負うリスクを伴う。地方公共団体のバックアップを背景に、本来は存続が困難な法人の整理・淘汰が先送りされている可能性もある。

第三セクター等の借入状況と損失補償・債務保証の状況


 政府は、2009年施行の「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」に基づき、2009年度から2013年度までの間に「第三セクター等の抜本的改革」を推進した。2014年度以降も「第三セクター等の経営健全化等に関する指針」を策定し、三セク等の効率化・経営健全化等への取り組みを求めてきた。

 その結果、三セク等の法人数は2008年度から2024年度にかけ18.5%減少(8,729→7,113法人)した。法人数は減少する一方で、収益総額は2024年度に過去最大の7兆4,045億円に達したため、三セク等の経営改善が進み、収益力が強化されたようにみえる。

 しかし、2024年度に経常赤字の法人率は39.6%と過去5回の調査で40%前後を横ばいで推移し、黒字転換に至らない法人が減少する兆しは見えていない。

 地方公共団体からの補助金総額や借入残高、損失補償・債務保証残高は減少した。しかし、2024年度に地方公共団体から補助金を交付された三セク等は2,823法人で、決算が判明した三セク等の約半数(構成比47.6%)を占める。そのうち、2,632法人(同93.2%)が収益に計上した補助金は合計8,310億円にのぼり、収益総額7兆4,045億円の11.2%を占める。

 このほか、地方公共団体からの借入金は3兆4,397億円、損失補償・債務保証は1兆9,360億円と巨額に達する。三セク等が破たんすると、最悪の場合、地方公共団体が負担を強いられ、財政が破綻するリスクがある。

 一方で、第二セクター(私企業)が事業から撤退することで、三セクが解散する場合もある。日本三大銀山にも数えられる生野銀山を観光施設として運営している三セクの(株)シルバー生野(兵庫)は、筆頭株主である三菱マテリアル(株)が事業から撤退するため、2026年度で解散することになった。今後は朝来市が運営する。

 三セク等が地方公共団体に代わって公共性、公益性の高い事業を手掛ける意義は小さくない。ただ、補助金に依存しない自立した三セク等の在り方について、継続的に考える必要がある。


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