プライム上場343社と同一商号、全国3,323社 ~ 住所一致でなければ設立可、同一商号への送金ミスに注意 ~
プライム市場に上場する約1,600社のうち、343社に法人格の位置や表記が全く同じの「同一商号」企業があることがわかった。累計は全国で3,323社に達する。
商業登記法は、すでに登記されている商号を同じ住所に登記することを認めていない。ただ、住所が一致しなければ、設立や移転登記をすることができる。
商号(企業名)は、会社の顔だ。奇跡的な偶然による一致が大半とみられるが、狙いすました場合はトラブルも起こり得る。
東京商工リサーチの企業データベース(DB)から、プライム上場企業と「同一商号」企業を分析した。
3月26日現在のプライム上場1,570社の商号と、法人格の位置や漢字などの表記(大文字小文字含む)が完全に一致する企業を抽出した。事業実態を確認できない企業は排除した。
商業登記法は第27条で、「商号の登記は、その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、その営業所の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、することができない」と定めている。ただ、法人格の位置が異なったり、漢字やひらがな、大文字小文字などが一文字でも違ったり、本社住所が1番地でも異なると登記申請が可能だ。
また、会社法でも第8条で、「不正な目的をもって誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない」と定めており、悪意を持った設立は法律に抵触する恐れがある。
「同一商号」企業は3,323社
プライム上場企業と同一商号は全国に3,323社あった。最も「同一商号」企業が多かった上場企業名は(株)アイル(TSRコード:571062172)の163社。1991年2月に(株)アイルの商号で設立し、システムやWEBなどソリューション事業を手掛け、好調な業績を維持している。
2番目に多かったのは、(株)ステップ(TSRコード:360148980)の128社。神奈川県を地盤とする学習塾「STEP」を運営している。
3番目は、(株)アークス(TSRコード:010045376)で106社だった。北海道や東北で食品スーパーを展開している。以下、4番目は、総合アパレルの(株)ワールド(TSRコード:662058453)の95社、5番目が自転車小売チェーンの(株)あさひ(TSRコード:570261422)の82社と続く。
同一商号は、カタカナが上位に入り、漢字商号は比較的少なかった。
なお、同一商号が確認されないプライム上場企業は1,227社で、住友不動産(株)(TSRコード: 290185050)や三菱地所(株)(TSRコード: 291022472)、(株)メルカリ(TSRコード: 300054394)など多くのプライム上場企業は唯一の商号だ。
業歴、9割超がプライム企業長く
プライム上場企業と「同一商号」企業の3,323社の設立日を比較した。プライム上場企業の方が先に設立されているケースが93.0%を占めた。大手有力企業への憧れや成功にあやかり、同一商号に決めたケースも想起させる。
プライム上場企業と「同一商号」産業を産業別でみると、78.0%が異なり、22.0%は同一産業だった。同一産業では、サービス業他が251社、製造業186社、小売業91社で続いた。
産業より細かな業種別でみると、3,323社中52社(構成比1.5%)の業種が一致した。最も一致数が多かった業種は、受託開発ソフトウェア業の16社、純粋持株会社の9社、建築工事業(木造建築工事業を除く)の7社など。
商号だけでなく業種まで同じの52社は奇跡的な確率で生まれた可能性もある。


都道府県の一致は1割超、27社は市区郡も
本社地(事業実態上、必ずしも登記上とは限らない)も比較した。都道府県が同一だったのは、432社(構成比13.0%)だった。最多は東京都の326社。以下、大阪府の56社、愛知県の16社、神奈川県の11社と続く。
本社地の都道府県が同一だったのは11都府県のみ。地方では、地元のプライム上場企業と同一商号にすることは波風が立つのを避けたのかもしれない。
さらに市区郡まで調査対象を広げた。この結果、27社がプライム上場企業と商号も本社地の市区郡も同じであることがわかった。
最も多かったのは、東京都港区の7社。次いで、新宿区の4社、大阪市北区と東京都千代田区、東京都中央区、品川区がそれぞれ2社あった。
商号が同一で、市区郡まで一致していると、第三者からは見分けがつきにくいこともある。


各企業は商号を含めてブランドイメージを大切に育てている。「東京商工リサーチ」は未上場だが、1892年の創業で、現在の商号になった1974年以降、変更していない。「同一商号」企業はない。
大手と同じ商号を不審に思い、本社地などをチェックする人はどれだけいるだろう。同一商号の会社が、善くも悪くも近くにいることを気に留めることが必要だ。
最近、経営者を装って経理担当者に送金を指示し、騙し取られる被害が多く発生している。ある経理担当者は、取引のあるプライム上場企業から口座番号の変更依頼がきて、口座名も同社名だった場合、「忙しいと詳しいチェックをせずに登録口座を変更してしまう可能性がある」と危うさを指摘する。
プライム上場企業を含めて有名企業は、自社やグループ会社と「同一商号」企業がどこにあるのか確認する必要もありそうだ。また、取引する企業も口座変更の依頼などがあれば、折り返しでの確認を徹底すべきだろう。
チェック態勢を整備し、送金トラブルを未然に防ぐ対策が必要な時代を迎えている。