「退職代行」からの連絡、企業の3割取り合わず 有給や退職日の交渉などの通知を3割が経験
~ 2026年4月 企業の「退職代行」に関するアンケート調査 ~
ことし2月、大手退職代行サービスの代表らが弁護士法違反の疑いで逮捕された。4月に入り、退職代行の話題も出始めたが、弁護士や労働組合以外の「退職代行」業者から連絡があっても、3割(30.4%)の企業が非弁行為が含まれる可能性があり、取り合わないことがわかった。
なお、退職代行から連絡を受けた企業の3割(30.4%)で、残業代請求や退職日に関する調整などの「非弁行為」に触れる可能性のある通知を受けた経験をしていた実態が明らかになった。
退職代行は、メディアやSNSなどで広く知られるようになった。だが、退職代行サービスには非弁行為の危険性が指摘されている。東京弁護士会は2024年11月、「退職代行サービスと弁護士法違反」と題した注意喚起で、「退職代行サービスの利用を考える際には、退職だけでなく、退職に関係して発生する法律的な問題にも目を向ける必要がある」と呼び掛けている。こうした動きを背景に、退職代行への目はますますシビアになってきた。
東京商工リサーチ(TSR)は3月31日~4月7日、インターネットで企業向けに「退職代行」についてアンケート調査を実施した。
2024年1月以降、「退職代行」業者を利用した退職があった企業は8.7%で、前回調査(2025年6月)から1.5ポイント増加した。また、(採用活動で)前職での退職代行の利用がわかった場合、採用しないと回答した企業は26.0%だった。
退職代行業者の事件後も、業者からの連絡に変化はないと回答した企業は37.7%だった。
企業側では、「退職代行からの連絡に取り合わない」「利用歴があると採用に慎重になる」など、姿勢に変化が生じている。サービス利用者は一度立ち止まり、退職代行の手法に法的問題がないか確認が必要なフェーズに入ってきたようだ。
※2026年3月31日~4月7日、インターネットで企業向けアンケート調査を実施し、有効回答6,425社の回答を集計、分析した。
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義。退職代行に関するアンケートは3回目。
Q1.2024年1月以降、貴社では「退職代行」業者を利用した従業員の退職がありましたか?(単一回答)
■全企業で8.7%、大企業は21.3%で経験
全企業では、「正社員・非正規社員であった」1.5%(6,425社中、100社)、「正社員のみであった」6.4%(417社)、「非正規社員のみであった」0.7%(47社)で、「退職代行を活用した従業員の退職があった」企業は合計8.7%(564社)だった。
規模別では、大企業21.3%(445社中、95社)に対し、中小企業7.8%(5,980社中、469社)で、大企業は中小企業の2.7倍多かった。
大企業で退職代行の利用が多いのは、退職手続きが整備され、退職代行でもしがらみなく退職しやすい心理が働いているとみられる。

業種別 各種商品小売業が最多
Q1で退職代行を利用した従業員の退職があった企業の業種別(母数10社以上)は、最多が「宿泊業」の24.1%(29社中、7社)だった。
次いで、警備会社なども含まれる「その他の事業サービス業」の19.4%(154社中、30社)が続く。
消費者と直接対面し、シフト制などの多い宿泊業で利用の割合が高かった。

Q2. 貴社では弁護士や労働組合以外の「退職代行」業者から連絡があった場合、どのように対応していますか(想定していますか)?(単一回答)
全企業で「退職代行」業者から連絡があった場合の対応は、「業者を間に挟んで、従業員との退職手続きを進める」が41.3%(4,105社中、1,696社)で最多だった。次いで、「非弁行為が含まれる可能性があるため取り合わない」が30.4%(1,248社)、「業者からの連絡内容に従う」が28.2%(1,161社)だった。
規模別では、大企業は「業者を間に挟んで、従業員との退職手続きを進める」が50.0%(278社中、139社)で、「非弁行為が含まれる可能性があるため取り合わない」が21.9%(61社)だった。中小企業は「業者を間に挟んで、従業員との退職手続きを進める」が40.6%(3,827社中、1,557社)で、「非弁行為が含まれる可能性があるため取り合わない」が31.0%(1,187社)だった。

「非弁行為が含まれる可能性があるため取り合わない」産業別では不動産業が最多
Q2で「非弁行為が含まれる可能性があるため取り合わない」と回答した企業の産業別は、最多が不動産業の38.9%(131社中、51社)だった。次いで、運輸業の34.3%(166社中、57社)、建設業の34.2%(656社中、225社)と続く。
最も低かったのは製造業の27.8%(1,054社中、294社)だった。

Q3.貴社の採用(選考)活動に、求職者の「退職代行」の利用歴は影響しますか?(単一回答)
採用(選考)活動に、求職者の「退職代行」の利用歴の影響は、全企業で「利用歴が分かった場合、採用に慎重になる」が49.3%(5,256社中、2,595社)で最多だった。
次いで、「利用歴が分かった場合、採用しない」が26.0%(1,368社)、「利用歴は採用に影響しない」が23.7%(1,250社)、「利用歴が分かったら、採用に積極的になる」が0.8%(43社)だった。

Q4.今年2月、大手「退職代行」業者の代表らが弁護士法違反の疑いで逮捕されました。この事件以降、「退職代行」業者からの連絡に変化はありましたか?(複数回答)
「退職代行」業者からの連絡の変化は、全企業で「『退職代行』業者からの連絡は多くなく、比較できない」が60.8%(319社)で最多だった。次いで、「特に変化はない」が37.7%(198社)、「法令を遵守している点を強調するようになった」が2.2%(12社)、「連絡があった際の説明が丁寧になった」が1.5%(8社)、「弁護士からの連絡が増えた」が0.5%(3社)と続く。

Q5.東京弁護士会は、「退職代行」は非弁行為が含まれる危険性を指摘しています。貴社では、弁護士や労働組合以外の「退職代行」業者から連絡の際、以下の内容について通知されましたか?(複数回答)
退職代行業者からの通知内容は全企業で、「退職意思の取次のみだった」が66.6%(274社)で最多だった。次いで、「未消化の有給休暇の取り扱い」が18.7%(77社)、「退職日の交渉」が17.2%(71社)、「未払い賃金や残業代の支払い」が9.9%(41社)、「退職金の取り扱い」が6.3%(26社)と続く。(複数回答あり)
なお、 「退職意思の取次のみだった」以外で、残業代請求や退職日に関する調整などの非弁行為に触れる可能性が含まれる通知を受けた企業は30.4%(411社中、125社)と、3割に達した。
