• TSRデータインサイト

2025年「介護事業者」倒産 過去最多の176件 「訪問介護」の倒産が突出、認知症GHも増加

~ 2025年「老人福祉・介護事業」倒産動向 ~


 2025年の介護事業者(老人福祉・介護事業)の倒産は、176件(前年比2.3%増)で、2年連続で最多を更新した。コロナ禍前の2019年(111件)と比べ、約6割増えた。求人難15件を中心に「人手不足」倒産が29件(前年比45.0%増)と最多を更新した。
 特に、3年連続で最多を更新した「訪問介護」が91件(同12.3%増)と突出し、全体の件数を押し上げた。一方、2024年に過去2番目の件数だったデイサービスなど「通所短期入所」は45件(同19.6%減)、2024年に最多だった有料老人ホームも16件(同11.1%減)と減少に転じた。

「老人福祉・介護事業」の倒産件数(年次推移)

 2025年に「訪問介護」が突出した背景は、マイナス改定の影響が大きい。ヘルパー不足に加え、ガソリン代など運営コストの上昇も資金繰りを圧迫している。また、デイサービスや有料老人ホームは減少したが、高止まりしている。政府の人件費支援などはあるが、介護業界の人員確保やコスト上昇への対応は自助努力だけでは追い付かないレベルまで深刻さを増しており、2026年も倒産が続く可能性が高い。

  介護保険法が施行された2000年以降の介護事業者の倒産を集計した。主な3業種のうち、最多は「訪問介護」の91件(前年81件)で、3年連続で最多を更新して増勢に歯止めがかからない。
 次いで、デイサービスなどの「通所・短期入所」45件(同56件)。2022年に最多を記録し、2025年も過去3番目の高水準となった。「有料老人ホーム」は16件(同18件)で、2024年の最多から減少に転じた。ただ、過去2番目の件数で高水準に変わりはない。
 認知症老人グループホーム(GH)や特別養護老人ホーム、介護老人保健施設など「その他」のうち、認知症老人GHが9件(同2件)と急増した。住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)との競争や物価高、職員不足で、定員まで受け入れられないケースもある。

 介護事業者の倒産原因は、売上不振(販売不振)が140件(構成比79.5%)で、約8割を占めた。利用者の獲得競争や人手不足から利用率の落ち込みが大きい。形態別では、破産が160件(同90.9%)、特別清算が14件(同7.9%)で続き、再建見通せない消滅型が98.8%と大半だった。
 倒産事業者の規模は、資本金500万円未満(個人企業他含む)が128件(同72.7%)、負債1億円未満が141件(同80.1%)、従業員10人未満が142件(同80.6%)と、事業規模の小さい小・零細事業者がほとんどを占めている。

 政府は、介護職員の処遇改善のため賃上げ支援を進めるが、他の産業の賃上げペースに追いつけないでいる。また、生産性向上の取り組みによる処遇改善の加算をうまく活用できない小・零細事業の脱落も懸念される。国や自治体は、高齢者のニーズに沿った介護サービスの提供や介護離職を防ぐためにも、倒産抑制の取り組みと同時に、一層の運営効率化への支援を強化することが必要だろう。
※ 本調査は、「老人福祉・介護事業」を対象に集計した。内訳は、訪問介護事業、通所・短期入所介護事業、有料老人ホーム、その他に分類。本調査は、介護保険制度が始まった2000年から、負債1,000万円以上の倒産を集計している。

2025(令和7)年 老人福祉・介護事業 都道府県別倒産状況

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【最新決算】 私立大学、半数以上が赤字に転落 売上高トップは順天堂、利益トップは帝京大学

全国の私立大学を経営する545法人のうち、半数を超える287法人が直近の2025年3月期決算で赤字だったことがわかった。  

2

  • TSRデータインサイト

2025年「介護事業者」の休廃業・解散653件 苦境の「訪問介護」が押し上げ、過去最多を更新

2025年の「介護事業者」は、倒産以外で事業を停止した「休廃業・解散」が653件(前年比6.6%増)に達し、 4年連続で最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

融資慣行に変化、「事業性融資推進法」が施行目前~ 金融庁・大城健司参事官 単独インタビュー ~

2026年5月「事業性融資の推進等に関する法律(事業性融資推進法)」がスタートする。「企業価値担保権」の導入により、企業の実力や将来性、無形資産を含む事業全体を担保にした融資が可能になる。 事業性融資を推進する背景や想定される課題を金融庁総合政策局の大城健司参事官に聞いた。

4

  • TSRデータインサイト

ジュピターコーヒーに民事再生開始決定、承継店舗が判明

1月5日に東京地裁に民事再生法の適用を申請したジュピターコーヒー(株)(TSRコード:292914610、文京区)は1月13日、同地裁から民事再生開始決定を受けた。また、スポンサーが承継予定の47店舗がわかった。

5

  • TSRデータインサイト

「不動産業」 上位4%の大手がシェア約8割 地価上昇と活発な実需・投資が追い風に

売買を主力とする主な不動産業6,090社の最新期決算(2024年7月期-2025年6月期)は、売上高が17兆3,430億円(前期比7.9%増)と好調だったことがわかった。純利益も1兆3,063億円(同6.8%増)で、純利益率7.5%と高収益を持続。7年間では売上高、利益とも最高を記録した。

TOPへ