• TSRデータインサイト

人手不足と希望退職、退職代行も入り乱れる労働市場=2025年を振り返って(12)

 人手は余剰か、不足か――。2025年は人手不足がより鮮明になった。2025年1-11⽉の「⼈⼿不⾜」関連倒産は359件(前年同期⽐34.4%増)に達した。年間で300件を超えるのは、調査を開始した2013年以降初めてだ。官主導で始まった賃上げは、新規採用だけでなく、退職防止のためにも、稼ぐ力が乏しい中小企業まで賃上げを迫られた。
 その一方で、上場企業では早期・希望退職は勢いを増した。2025年は11月10日までで41社が募集に踏み切った。前年同期に比べ社数は約2割減少(前年同期比18.0%減)したが、対象人数は1万1,045人(前年同期8,534人)と約1.2倍に膨らんだ。年齢構成の最適化や中長期的な競争力強化のため、黒字でも構造改革に取り組む点が大きな特徴だ。
 いわゆる「黒字リストラ」で、業績悪化に伴う人員削減とは性質を異にする。企業は単にコスト圧力の回避だけでなく、DX浸透や事業ポートフォリオの見直しなど、構造変化を踏まえて中長期的な収益力の再設計を進めている。業績が黒字であっても、さらなる競争力確保のために組織を軽量化し、選択と集中に邁進する。利益率や資本(資産)効率の向上を求める市場の声に経営陣が応えた構図だが、高めた先に何があるのか首を傾げたくなる事例もある。
 また、退職代行の利用も目立った。TSRが6月に実施した調査では、大企業の15.7%が「退職代行を利用した従業員の退職があった」と回答した。人手不足が深刻化するなか、転職市場が活況を呈し、今の職場の改善を待つよりも、より良い待遇を求めて早々に転職へ舵を切る若者も増えている。果たして、その先が 楽園なのか誰もわからない。大手のモームリの運営会社が非弁行為の疑いで家宅捜索を受けた一方、弁護士法人が格安でマーケットへの訴求力を高めている。業界は第二の“過払い金訴訟”マーケットを追い求めているのか。

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

コロナ破たんが3カ月ぶり150件超え 累計1万3,877件に

3月は「新型コロナ」関連の経営破たん(負債1,000万円未満含む)が162件判明し、2020年2月の第1号の発生から累計1万3,877件に達した。

2

  • TSRデータインサイト

「塗装工事業」の倒産143件 23年ぶり高水準 イラン情勢で塗料価格が急騰、価格転嫁に注目

塗料などの資材高騰に加えて、慢性的な人手不足、顧客の争奪戦などが長引き、塗装工事業者の倒産が急増している。2025年度は143件(前年度比22.2%増)で、過去20年で最多だった。統計を開始した1989年度以降では、2002年度の162件以来、23年ぶりに140件を超えた。

3

  • TSRデータインサイト

退職代行「モームリ」、運営会社の代表変更

退職代行「モームリ」を運営する(株)アルバトロス(TSRコード:694377686、横浜市)は、公式ホームページの代表取締役を変更した。

4

  • TSRデータインサイト

「イタメシ」「韓国料理」など専門料理店の倒産最多 ~ インバウンドの取りこぼしと輸入食材の高騰 ~

イタメシ、韓国料理、フレンチ、タイ料理など専門料理店の倒産が急増している。2025年度(4-3月)の倒産は2月までにバブル期の1988年度以降、最多の85件に達した。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度「円安」倒産70件、前年度に次ぐ高水準 卸売業、小売業を中心に、45カ月連続で発生

2025年度(4-3月)の「円安」倒産は、70件(前年度比16.6%減)だった。2022年度以降の円安局面では初めて前年度(84件)を下回ったものの、2022年(36件)の約2倍と高水準が続いている。

TOPへ