• TSRデータインサイト

病院、介護事業者の倒産急増=2025年を振り返って(7)

 コロナ禍で文字通り社会を支えた病院や介護事業者の倒産が、過去最多ペースで推移している。9月末、総務省は公立病院の8割が赤字という衝撃的なデータを公表した。
 人件費などの運営コストの上昇が背景にあるが、公立病院だけでなく福祉インフラも直撃している。

 病院・クリニックの倒産は、2025年1~11月で33件に達し、過去20年で2009年同期の40件に次ぐ高水準だ。コスト増に歯止めが掛からず、運営原資となる診療報酬とのバランスが崩れて収益が悪化するケースが目立つ。地方自治体や業界団体は、2026年度の診療報酬改定の大幅な引き上げを要請している。だが、財政制度等審議会は、「開業医の報酬水準の高さは国際的にも際立っている」とメリハリをつけた改定を滲ませる。

 介護では、訪問介護事業者の倒産が急増している。倒産は11月までに85件で、これまでの年間最多だった2024年の81件をすでに上回った。倒産や廃業の増加で、訪問介護の空白地帯は100自治体を超える。大手が進出しない地域で、訪問介護を支えていた小規模事業者を人手不足やコスト高、報酬のマイナス改定が襲っている。

 2025年4月、改正育児・介護休業法が施行されたが、大企業と中小企業には温度差がある。東京商工リサーチ(TSR)が4月に実施した企業アンケートでは、過去1年間で発生した介護離職者うち、介護休業や介護休暇を利用していない割合は54.7%だった。中小企業の3割は、仕事と介護の両立支援の「取り組みや整備した制度はない」と回答し、規模による制度化の格差が顕著だ。
 高市政権は、現役世代の保険料と報酬改定の難しいバランスをどう保つのか。インフラは底割れ寸前だ。

病院・クリニック・訪問介護の倒産推移(1‐11月)

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

ゴールデンウィーク明け、「退職代行サービス」の利用は慎重に

長かったゴールデンウィークが終わる。職場「復帰」を前に例年4月の新年度からGW明けにかけ、退職する人の話題が持ち上がる。この時期の退職代行サービスの利用も増加するという。4月に実施した「退職代行に関する企業向けアンケート調査」から利用するリスクの一端が浮き彫りになった

2

  • TSRデータインサイト

トーシンホールディングスの「信用調査報告書」

5月8日に東京地裁に会社更生法の適用を申請した(株)トーシンホールディングス(TSRコード:400797887、名古屋市、東証スタンダード)を取り上げる。

3

  • TSRデータインサイト

2025年度「医療・福祉事業」倒産、過去最多 ~ 健康と生活を支援する事業者の倒産急増 ~

生活に不可欠な医療機関や介護事業者の倒産が急増している。バブル経済1988年度(4-3月)以降の38年間で、2025年度は金融危機、リーマン・ショックを超える478件と最多を記録した。

4

  • TSRデータインサイト

2026年4月「人手不足」倒産 33件発生 春闘の季節で唯一、「人件費高騰」が増加

2026年4月の「人手不足」倒産は33件(前年同月比8.3%減)で、3カ月ぶりに前年同月を下回った。 4月の減少は2022年以来、4年ぶり。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度の「早期・希望退職」 は2万781人 約7割が「黒字リストラ」、2009年度以降で4番目の高水準

2025年度に「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は46社(前年度51社)で、人数は2万781人と前年度(8,326人)の約2.5倍に急増したことがわかった。社数は前年度から約1割(9.8%減)減少したが、募集人数は2009年度以降で4番目の高水準となった。

TOPへ