• TSRデータインサイト

高市政権の誕生とトランプ関税=2025年を振り返って(3)

 2025年は、日米ともに「政治の季節」だった。まず、1月に第2次トランプ政権が誕生したばかりの米国から、4月2日に突然の発表がなされ、世界を驚かせた。
 トランプ大統領があらゆる輸入品に対し、大幅な関税引き上げを発表したからだ。さらに自動車などには更なる関税を課すことを表明した。関税が課されることは事前に予告されていたものの、予想を大きく上回る関税率に各国が対応に追われた。

 この「トランプ関税」について、東京商工リサーチ(TSR)は、国内企業に複数回アンケート調査を行った。最新の2025年8月調査では、自社への影響について「影響は生じない」が67.2%と最多だった。だが、自社への影響とは裏腹に、日本経済については、「景気を少し後退させる」が69.6%、「大きく後退させる」が16.3%にのぼり、合計86.0%が景気後退を懸念する結果となった。「自社は何とかなるが、日本全体は心配」という複雑な心理が企業を覆う。

 トランプ関税に関連して求める支援策では、中小企業は「低利または実質無利子・無担保融資」や「返済義務のない給付金」など資金面の要望が強かった。 一方で、大企業は「省力化・デジタル化の補助金」や「政権動向の情報提供」など、業務効率の向上や情報の見極めを重視していることが明らかになった。企業規模で求める支援の質が異なる点も特徴だ。

 国内では10月に新政権が誕生した。10月の「経済政策に関するアンケート」調査では、石破前政権の経済政策について、「評価する」は28.0%にとどまった。「評価しない」と回答した約7割の企業では、「物価高対策」を評価しない企業が80.7%と突出した。長引く物価高や急速に進む円安への対応が不十分という見方が広がった格好だ。

 こうした見方を反映し、新総裁に期待する政策では、「物価の安定」が43.1%で最多で、「内需拡大の推進」が38.6%で続いた。企業が求めるのは華々しい新政策より、「物価安定」と「内需回復」を軸にした「足元の立て直し」といえるだろう。

 物価高、人手不足への対応やDXなどの省力化投資など、企業が抱える課題は山積している。トランプ関税の影響も、これからジワリと広がる可能性がある。
 2026年は日米の政権交代に揺れた2025年から抜け出し、企業が足元の経営を着実に立て直せる年になるのか。物価・為替・需要という経済基盤を、どれだけ安定させられるかがカギになるだろう。

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

塗装工事業の倒産が急増、ナフサ供給の陰で ~ 1-4月の倒産、1989年以降で過去4番目 ~

塗装工事業の倒産は、2026年1-4月累計で48件(前年同期比26.3%増、前年同期38件)に達した。1989年以降、2002年の49件に次ぐ4番目の高水準だ。

2

  • TSRデータインサイト

居酒屋の倒産が過去最多ペース、1-4月は5割増 ~ 宴会・飲み放題の価格上昇、客離れ誘発も ~

2026年1-4月の「居酒屋」倒産は88件(前年同期比54.3%増)と急増した。1989年以降、同期間の倒産は2024年の59件を大きく上回り、最多を更新した。東京商工リサーチの企業データベースから1-4月の「居酒屋」倒産(負債1千万円以上)を抽出し、分析した。

3

  • TSRデータインサイト

2026年4月の「税金滞納」倒産40件 中堅以上の企業で増加、破産が9割超

2026年4月の「税金滞納(社会保険を含む)」倒産は、40件(前年同月比100.0%増)で、1-4月の累計は70件(前年同期比12.9%増)となった。コロナ禍で、納税猶予などの措置があった2021年1-4月の8件の8.7倍と大幅に増加した。

4

  • TSRデータインサイト

あいちFGと三十三FGが統合に向け基本合意 メインバンク取引企業数が国内16位の金融Gに

金融グループの統合が加速してきた。あいちFG(あいち銀行、1万1,302社)と三十三FG(三十三銀行、7,544社)が経営統合に基本合意したと発表した。

5

  • TSRデータインサイト

2026年4月「人手不足」倒産 33件発生 春闘の季節で唯一、「人件費高騰」が増加

2026年4月の「人手不足」倒産は33件(前年同月比8.3%減)で、3カ月ぶりに前年同月を下回った。 4月の減少は2022年以来、4年ぶり。

TOPへ