• TSRデータインサイト

2025年1-11月の「労働者派遣業」倒産 82件 通年では16年ぶりに90件台に乗せる可能性も

~ 2025年(1-11月)の「労働者派遣業」倒産 ~


 2025年1-11月の「労働者派遣業」倒産は82件(前年同期比41.3%増)で、2013年同期(85件)以来、12年ぶりに80件を超えた。通年では11月までに前年の68件を上回り、2009年の95件以来、16年ぶりに90件台が視野に入っている。

 負債総額は76億5,000万円(同28.1%増)で、2年ぶりに前年同期を上回った。負債1億円以上5億円未満が15件(同25.0%増)、5億円以上10億円未満が3件(同200.0%増)と中堅規模でも倒産が増えている。

 労働者派遣業の倒産は、1-6月は前年同月を上回ったが、7月から11月は一転、5カ月連続で前年同月を下回って推移している。ただ、大手と中小規模で待遇格差が広がり、派遣労働者が集まらずに“人手不足“が加速する中小事業者の倒産が相次いでいる。

 1-11月の「労働者派遣業」倒産のうち、「人手不足」に起因する倒産は10件(前年同期4件)と2倍に増えた。労働者派遣業もまた、派遣スタッフの確保が厳しくなっている。
 形態別では、破産が79件(構成比96.3%)と大半を占めた。人的・資金的リソースが乏しい労働者派遣業は、いったん経営が躓くと再建が難しくなっている。
※2025年1-11月の全国企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「労働者派遣業」を集計・分析した。


2025年1-11月は82件、30年間で3番目の高水準

 2025年1-11月の「労働者派遣業」倒産は、82件(前年同期比41.3%増)だった。1-11月比較では1996年からの30年間で、2013年の85件、2009年の83件に次ぐ、3番目の高水準となった。
 通年では11月までに前年(68件)を上回り、2009年の95件を超えるか注目される。
 1-11月は、2018年に74件まで増えたが、その後はコロナ禍の資金繰り支援などが奏功し、2021年の倒産は25件まで減少した。だが、コロナ関連の資金繰り支援が終了すると、その効果は時間とともに薄れている。
 同時に、コロナ禍を経て人手不足が深刻となり、労働者派遣業でも派遣スタッフの確保が難しくなっている。ここ数年は賃上げが広がり、派遣スタッフを確保するため、時給引き上げなどの条件提示を求められている。さらに、社会保険料の引き上げなどが収益に重く圧し掛かっている。
 資金余力が乏しい労働者派遣業は厳しさを増しており、今後はさらに淘汰が加速する可能性が高まっている。

労働者派遣業の倒産推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【破綻の構図】マツオインターナショナル~膨らんだ債務と抜本再生への移行~

婦人服ブランド「ヴィヴィアン タム」「慈雨(じう)」「t.b2」などを展開し、ピーク時には国内外で約400店を構えていたマツオインターナショナル(株)(TSRコード:292635265、以下マツオ)が12月11日、大阪地裁に会社更生法の適用を申請した。

2

  • TSRデータインサイト

交響楽団の収益悪化、来場者戻らずコスト上昇 ~ 綱渡りの自助経営、草の根のムーブメントへの期待 ~

交響楽団が存立の危機に立たされている。多くの交響楽団で収入が落ち込んでおり、赤字が目立つ。会場費や団員などの人件費、楽器の輸送コストなどが上昇のうえ、寄附金や補助金による収入は頭打ちで綱渡りの運営だ。東京商工リサーチは、3期連続で業績が比較できる20団体を調査した。

3

  • TSRデータインサイト

地場スーパー倒産 前年同期の1.5倍に大幅増 地域密着型も値上げやコスト上昇に勝てず

2025年1-11月の「地場スーパー」の倒産が22件(前年同期比46.6%増)と、前年同期の約1.5倍で、すでに前年の年間件数(18件)を超えた。

4

  • TSRデータインサイト

長渕剛さん側、イベント会社の破産申立に続き代表を刑事告訴 ~長渕さん「徹底追求」、イベント会社代表「横領でない」と反論~

歌手の長渕剛さんが代表を務める個人事務所の(株)オフィスレン(渋谷区)が、イベント運営を委託していたダイヤモンドグループ(株)(東京都中央区)の代表を業務上横領罪で刑事告訴したことがわかった。東京商工リサーチの取材で長渕さん側が明らかにした。

5

  • TSRデータインサイト

「ペット・ペット用品小売業」倒産が過去2番目の14件 実質賃金の低迷と物価高がペットの世界にも影響

2025年11月の「ペット・ペット用品小売」の倒産は、1件(前年同月ゼロ)にとどまったが、1-11月累計は14件(前年同期比27.2%増)に達した。

TOPへ