• TSRデータインサイト

2025年5月の「物価高」倒産 今年最少の45件 小・零細規模を中心に、形態別はすべて「破産」

2025年5月の 「物価高」倒産


 2025年5月の原材料高騰などに伴う「物価高」倒産は45件(前年同月比48.8%減)で、3月の55件を下回り、今年最少となった。40件台は2024年10月以来、7カ月ぶり。
 負債総額は79億6,700万円(同59.1%減)で、負債10億円以上が1件(前年同月3件)にとどまり、小規模倒産を中心に負債の小さい倒産が目立った。
 「物価高」倒産は資材や原材料など仕入コストの上昇が、価格転嫁の難しい小・零細企業の資金繰りを圧迫していることを示している。

 「物価高」倒産は、最多が飲食店の8件で、以下、道路貨物運送業7件、総合工事業5件と続く。労働集約型の業種が上位に並び、人手不足や人件費の上昇だけでなく、物価高騰によるコストアップが資金繰りに影響を及ぼしている。
 形態別では、45件すべて消滅型の破産(前年同月比43.7%減)だった。資本金別では、1千万円未満が32件(構成比71.1%)と7割を占めている。
 原材料や資材、エネルギーなど輸入財の価格高止まりが企業収益にのしかかっている。1ドル=143円前後で推移するが、トランプ米大統領の発言に左右される展開もあり、経営体力がぜい弱な小・零細企業を中心に「物価高」倒産はしばらく月間40件~50件前後で続くとみられる。

※本調査は、2025年5月の企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、①仕入コストや資源・原材料の上昇、②価格上昇分を価格転嫁できなかった、等により倒産(私的・法的)した企業を集計、分析した。

「物価高」倒産月次推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ