• TSRデータインサイト

大型連休は「博物館・美術館」がオススメ? ~ 物価高でも魅力的な入館料が追い風、業績も回復 ~

 コロナ禍で打撃を受けた博物館・美術館が物価高のなかで健闘している。体験型やデジタル対応など新しい取り組みや、比較的安価な入館料で集客力を高めている。博物館・美術館を運営する143社の2024年(1-12月に迎えた本決算)業績は、売上高(経常収益)が前年比4%増、最終利益(当期一般正味財産増減額)が同4.5倍と好調だ。
 博物館・美術館は公益財団法人が運営を担っていることが多く、社会貢献の観点から赤字も珍しくない。さらに近年は光熱費などの物価高が重くのしかかる。だが、入館者のニーズを分析し、インバウンド向けに多言語対応するなどの経営努力で業績は回復している。
 テーマパークなど娯楽施設の入場料や利用料が高騰しているが、物価高でも入館料を抑えた博物館・美術館は大型連休(GW)に人気を集めそうだ。

経費上昇と経営努力

 博物館・美術館は、コロナ禍が直撃した。文部科学省「令和3年度社会教育統計」によると、1施設当たりの利用者数は「博物館」は2017年度間は11万6,131人だったが、2020年度間は5万2,611人と半減した。
 独立行政法人国立科学博物館(TSRコード:294984275)の光熱費は、2021年と比べて2023年は約2倍に高騰。2023年8月に1億円を目標にしたクラウドファンディングを実施した。約5万7,000人から約9億2,000万円が集まり、大きな話題となった。
 東京商工リサーチ(TSR)の企業データベース(約400万社)で、日本標準産業分類「博物館・美術館」を主業種とする企業のうち、2024年1-12月期を最新期として3期連続で売上高と利益を比較できる143社を抽出し、分析した。
 公益財団法人などの非営利団体が多く単純比較は難しいが、2024年の売上高合計は762億1,200万円(前年比4.4%増)、利益は65億4,600万円(同353.0%増)と回復している。2022年は赤字が78社(構成比54.5%)と半数を超えたが、2024年は62社(同43.3%)と11.2ポイント回復した。
 若干の値上げやインバウンド向け多言語対応に加え、趣向を凝らしたイベントなどで巻き返している。

博物館・美術館の業績 年次推移



 テーマパークなどの娯楽施設は大幅な値上げが相次ぎ、ガソリン代なども高騰しており節約志向も高まっている。今年のGWは飛び石連休だが、値ごろ感ある博物館・美術館が注目されるかもしれない。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年4月28日号掲載「取材の周辺」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【解説】秀和システムの法的整理、異変察知は「船井電機より前」

(株)秀和システム(TSRコード:292007680、東京都)への問い合せは、船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の破産の前後から急増した。ところが、あるベテラン審査マンは「ERIが弾けた時からマークしていた」と耳打ちする。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月27日時点) 上場企業「役員報酬1億円以上開示企業」調査

2025年3月期決算の上場企業の多くで株主総会が開催された。6月27日までに2025年3月期の有価証券報告書を2,130社が提出した。このうち、役員報酬1億円以上の開示は343社、開示人数は859人で、前年の社数(336社)および人数(818人)を超え、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

1-6月の「訪問介護」倒産 2年連続で最多 ヘルパー不足と報酬改定で苦境が鮮明に

参議院選挙の争点の一つでもある介護業界の倒産が加速している。2025年上半期(1-6月)の「訪問介護」の倒産が45件(前年同期比12.5%増)に達し、2年連続で過去最多を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

船井電機の債権者集会、異例の会社側「出席者ゼロ」、原田義昭氏は入場拒否

破産手続き中の船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の第1回債権者集会が7月2日、東京地裁で開かれた。商業登記上の代表取締役である原田義昭氏は地裁に姿を見せたものの出席が認めらなかった。会社側から債務者席への着座がない異例の事態で14時から始まった。

5

  • TSRデータインサイト

1-6月の「人手不足」倒産 上半期最多の172件 賃上げの波に乗れず、「従業員退職」が3割増

中小企業で人手不足の深刻な影響が広がっている。2025年上半期(1-6月)の「人手不足」が一因の倒産は、上半期で最多の172件(前年同月比17.8%増)に達した。

TOPへ