2024年度の道路貨物運送業倒産14年ぶり350件超 人件費高騰・後継者難が深刻度を増す
2024年度 「道路貨物運送業」倒産状況
2024年度の道路貨物運送業倒産は、件数が353件(前年度比2.3%増)で、4年連続で前年度を上回った。年度件数が350件を上回るのは、2010年度の369件以来、14年ぶり。ただ、2024年12月以降は4カ月連続で前年同月を下回り、年度後半は小康状態が続いている。
負債総額は494億1,800万円(前年度比17.0%減)で、3年ぶりに前年度を下回った。負債10億円以上が3件(前年度5件)、同5億円以上10億円未満が10件(同16件)に減少し、負債総額を押し下げた。
燃料費の高騰などによる「物価高」関連倒産は、111件(前年度比21.2%減)だった。
「人手不足」関連倒産は77件(前年度比60.4%増、前年度48件)と大幅に増加した。内訳は、「人件費高騰」が30件(前年度比87.5%増)、「後継者難」が22件(同83.3%増)、「求人難」が16件(前年度同数)、「従業員退職」が9件(前年度比125.0%増)。
道路貨物運送業の倒産は、「価格転嫁」と「人手不足」が大きなキーワードになっている。
東京商工リサーチが2025年2月に行った「物価高・価格転嫁」に関するアンケート調査では、コスト上昇分を「価格転嫁できていない(価格転嫁ゼロ)」と回答した道路貨物運送業者は9.7%で、全体の21.1%を11.4ポイント下回った。2024年度の「物価高」による倒産は大幅に減少しており、影響が周知され、燃料費高騰分の価格転嫁は末端の下請け業者にも徐々に浸透し始めた可能性がある。
一方、「人手不足」関連倒産は前年度の1.6倍と過去最多を大幅に更新した。前述の調査と同時期に行った2025年2月「人手不足」に関するアンケート調査では、人手不足で「負の影響がある」と回答した道路貨物運送業者は71.3%で、全業種のうち最も構成比が高かった。価格転嫁が進展しても、人材確保に苦戦し、業績向上が進まない運送業者は少なくない。
「人手不足」関連倒産の内訳をみると、人手不足による人件費高騰や経営者、ドライバーの高齢化による後継者難が特に深刻だ。ドライバーの確保や待遇改善のため、今後も人件費は右肩上がりで推移が見込まれ、運送業の収益を圧迫する懸念がある。健全な物流機能の維持のため、産業界が一体となって、価格や納期などの条件に対する理解や多重下請け構造の是正を進める必要があるだろう。