• TSRデータインサイト

2024年度「飲み屋」さんの倒産 最多の276件 値上げが難しく、食材・光熱費の高騰などが直撃

~ 2024年度の「飲み屋」さんの倒産 ~


 2024年度の「酒場,ビヤホール(居酒屋)」と「バー,キャバレー,ナイトクラブ」など、飲み屋さんの倒産は276件(前年度比17.4%増)だった。2年連続で前年度を上回り、1989年度以降では、最多だった前年度(235件)を上回り、過去最多を更新した。 
 一方、負債総額は184億5,900万円(前年度比39.9%減)で、2年ぶりに前年度を下回った。

 コロナ禍が落ち着き、外国人観光客やサラリーマンの“ちょいと一杯“需要が戻り、街は賑わいをみせている。ただ、円安で食材や光熱費が高騰し、従業員確保でも人件費アップが避けられない状況に直面している。 
 馴染みさん相手の小・零細規模の飲み屋さんは、コストアップを価格転嫁するのは難しく、街の喧騒とは裏腹に経営は厳しさを増しているようだ。
 
 飲み屋さんの倒産は、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」が過去最多の185件(前年度比6.9%増)だった。会社の交際費が戻らない「バー,キャバレー,ナイトクラブ」も91件(同46.7%増)と大幅に増えて、15年ぶりに90件台に乗せた。

 資本金別では、1千万円未満が262件(同17.4%増)と94.9%を小・零細事業者が占めた。
 原因別では、販売不振が246件(同18.2%増)と全体の約9割(89.1%)を占め、客足が戻らない小・零細規模の飲み屋さんが押し上げている。

 小規模の飲み屋さんは、コロナ禍のゼロゼロ融資などの支援で膨らんだ過剰債務の解消が遅れ、そこに物価高、人手不足が押し寄せている。来店客の増加には値上げも容易ではなく、好調な飲食店と八方塞がりの飲食店の二極化で、このままでは倒産や休廃業が加速する可能性が高い。
※本調査は、日本産業分類の「酒場,ビヤホール」「バー,キャバレー,ナイトクラブ」の2024年度の倒産(負債1,000万円以上)を集計、分析した。


2024年度の飲み屋さんの倒産 過去最多の276件

 2024年度の飲み屋さんの倒産は、276件(前年度比17.4%増)で、前年度の235件を抜いて1989年度以降で最多を更新した。
 飲み屋の倒産は、コロナ禍で来店客が激減した2020年度は230件と最多に達した。その後は、休業・時短営業への補助金や雇用調整助成金、ゼロゼロ融資など各種支援策で抑制され、2022年度は161件まで減少した。だが、コロナ関連支援策の終了と同時に、物価高と人手不足に見舞われ、痛手を受けた小・零細規模の飲み屋さんが倒産を押し上げている。
 人件費や食材費、光熱費の上昇が続くが、メニュー価格への転嫁は来店客が落ち込むリスクを抱えている。新メニュー開発も難しい小・零細規模の飲み屋さんは、まだ苦難の道が続きそうだ。

飲み屋さんの倒産 年度推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ