• TSRデータインサイト

【速報】2024年度「経営コンサルタント」の倒産が過去最多 専門領域の分散化で“経営のプロ”の生き残り競争が激化

 2024年度(速報)の経営コンサルタント業の倒産が151件(前期比3.4%増)に達した。2005年に集計を開始以降で最多だった2023年度の146件を上回り、過去最多を更新した。
 “経営のプロ”のはずのコンサルタントだが、事業再生やDX支援、M&Aなど、専門領域の分散化と顧客ニーズが高度化し、最近のコンサルは差別化と専門性が求められている。資料集めや情報の整理などはAIに取って代わられ、単純な手続き代行や財務指導など、過去の経験則だけで生き抜くことは難しいようだ。

 経営コンサルタントの倒産は、原因別では販売不振や赤字累積などの「不況型倒産」が100件(構成比66.2%)で、7割近くを占めた。
 形態別では、「破産」が145件(構成比96.0%)と大半を占めている。また、「特別清算」5件と合わせた消滅型は150件(同99.3%)だった。一方、再建型の民事再生は1件にとどまり、コンサル会社は経営悪化や倒産により信用を失墜すると再建が非常に困難なことを示している。
 資本金別では、1億円未満が149件(同98.6%)と大半を占めた。さらに、従業員数別では5名以下の小規模事業者が142件(同94.0%)だった。コンサル業界は1人でも、少ない開業資金でもスタートでき、参入障壁は低い。ただ、人脈が途切れたり、継続的な案件取引が突然なくなるリスクもあり、中小コンサルタントの足元はぜい弱な企業が少なくない。
 2024年度のコンサルタントの倒産による負債総額は約131億円だった。負債額1億円以上は22件(構成比14.5%)にとどまり、平均負債額は約8,600万円と小規模な倒産が多くを占める。
 
 「経営コンサルタント業」の実績は、コンサルタントの経験や人柄、人脈などで大きく左右される。属人的な性質が強い分、如何に優秀な人材を確保し、顧客に高付加価値を提供できるかを問われている。後継者不足やDX支援など、中小企業が直面する課題は多様だが、高度化する顧客ニーズへの対応には、それ以上の専門的な知識が必要になる。このため、コンサル業界の生き残り競争が加速し、特色を打ち出せないコンサルの淘汰が続く可能性が高い。

※ 本調査は、日本産業分類(細分類)の「経営コンサルタント業」を抽出し、集計開始の2005年度から2024年度までの倒産を集計、分析した。


人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年度の業績見通しに大ブレーキ 「増収増益」見込みが16.6%に急減

トランプ関税、物価高、「価格転嫁」負担で、国内企業の業績見通しが大幅に悪化したことがわかった。2025年度に「増収増益」を見込む企業は16.6%にとどまり、前回調査(2024年6月)の23.3%から6.7ポイント下落した。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月20日時点) 役員報酬1億円以上の開示は117社・344人

2025年3月期決算の上場企業の株主総会開催が本番を迎えた。6月20日までに2025年3月期の有価証券報告書を510社が提出し、このうち、役員報酬1億円以上の開示は117社で、約5社に1社だった。

3

  • TSRデータインサイト

チャプター11をめぐる冒険 ~ なぜマレリはアメリカ倒産法を利用したのか ~

ずっと日本にいるのに時差ボケが続いている。  「マレリのチャプター11が近いから関連サイトをチェックし続けろ」と6月6日に先輩に言われて以降、私の生活はアメリカ時間だ。

4

  • TSRデータインサイト

代金トラブル相次ぐ、中古車販売店の倒産が急増

マイカーを売却したのに入金前に売却先の業者が破たん――。こうしたトラブルが後を絶たない。背景には、中古車価格の上昇や“玉不足”で経営不振に陥った中古車販売店の増加がある。倒産も2025年1-5月までに48件に達し、上半期では過去10年間で最多ペースをたどっている。

5

  • TSRデータインサイト

定量×定性分析 危ない会社は増えたのか?

2024年度の全国倒産が1万144件(前年度比12.0%増)と11年ぶりに1万件を超えたが、企業の倒産リスクはどの水準にあるのか。東京商工リサーチが企業を評価する「評点」と「リスクスコア」のマトリクスからみてみた。

TOPへ