• TSRデータインサイト

2025年1月の「物価高」倒産61件 飲食店などのサービス業他が2.4倍増

2025年1月の 「物価高」倒産状況


 2025年1月の原材料などの価格上昇に伴う「物価高」倒産は、61件(前年同月比27.0%増)で、2カ月ぶりに60件台に増加した。
 負債総額は168億8,800万円(前年同月比60.6%増)で、前年同月の1.6倍に増加した。
 もともと収益力のぜい弱な中小企業は、物価高、人件費の上昇などへの対応力が乏しく、収益の内部蓄積も進んでいない。高止まりする物価が資金繰り悪化に直結する状況が続いている。このまま仕入価格上昇分の販売価格への転嫁が進まないと、事業継続が難しい企業の増加が懸念される。

 「物価高」倒産の資本金別は、1千万円未満の中小・零細規模が40件(前年同月比60.0%増)で、全体の6割以上(構成比65.5%)を占める。
 飲食店6件(前年同月3件)や持ち帰り・配達飲食サービス業4件(同ゼロ)を含むサービス業他が12件で、前年同月比140.0%増と大幅に増加した。消費者が対象の業種では、価格値上げが消費動向に直結しかねず、食材や電気、ガスなどのコストアップも価格転嫁しにくい環境にある。

 政策金利の引き上げ決定などで円高に振れつつあるが、物価安定への先行きは不透明だ。さらに、金利上昇は新たな収益悪化の要因にもなりかねない。このため、物価高に耐えられない企業の「物価高」倒産はしばらく増勢をたどる可能性が高い。
※本調査は、2025年1月の企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、①仕入コストや資源・原材料の上昇、②価格上昇分を価格転嫁できなかった、等により倒産(私的・法的)した企業を集計、分析した。

「物価高」倒産月次推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【解説】秀和システムの法的整理、異変察知は「船井電機より前」

(株)秀和システム(TSRコード:292007680、東京都)への問い合せは、船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の破産の前後から急増した。ところが、あるベテラン審査マンは「ERIが弾けた時からマークしていた」と耳打ちする。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月27日時点) 上場企業「役員報酬1億円以上開示企業」調査

2025年3月期決算の上場企業の多くで株主総会が開催された。6月27日までに2025年3月期の有価証券報告書を2,130社が提出した。このうち、役員報酬1億円以上の開示は343社、開示人数は859人で、前年の社数(336社)および人数(818人)を超え、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

1-6月の「訪問介護」倒産 2年連続で最多 ヘルパー不足と報酬改定で苦境が鮮明に

参議院選挙の争点の一つでもある介護業界の倒産が加速している。2025年上半期(1-6月)の「訪問介護」の倒産が45件(前年同期比12.5%増)に達し、2年連続で過去最多を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

船井電機の債権者集会、異例の会社側「出席者ゼロ」、原田義昭氏は入場拒否

破産手続き中の船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の第1回債権者集会が7月2日、東京地裁で開かれた。商業登記上の代表取締役である原田義昭氏は地裁に姿を見せたものの出席が認めらなかった。会社側から債務者席への着座がない異例の事態で14時から始まった。

5

  • TSRデータインサイト

1-6月の「人手不足」倒産 上半期最多の172件 賃上げの波に乗れず、「従業員退職」が3割増

中小企業で人手不足の深刻な影響が広がっている。2025年上半期(1-6月)の「人手不足」が一因の倒産は、上半期で最多の172件(前年同月比17.8%増)に達した。

TOPへ