• TSRデータインサイト

2024年10月の「ゼロゼロ融資」利用後の倒産40件 5カ月連続で前年同月を下回り、今年2番目の低水準

2024年10月度「ゼロゼロ融資」利用後の倒産状況


 2024年10月のゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)を利用した企業の倒産は、40件(前年同月比21.5%減)だった。1月と並ぶ今年2番目の低水準で、5カ月連続で前年同月を下回った。
 10月の企業倒産は909件(前年同月比14.6%増)と増勢が続くが、ゼロゼロ融資を利用後の倒産は小康状態をみせている。

 10月のゼロゼロ融資を利用後の倒産は、従業員数別で10人未満が33件(構成比82.5%)を占め、負債額別では負債1億円未満が27件(同67.5%)と約7割を占めた。いずれも小・零細規模の企業を中心にしている。

 コロナ禍の金融支援策は、倒産抑制に劇的な効果を発揮したが、売上が落ち込む中の借入増で副作用として過剰債務を生み出した。さらに、コロナ禍が落ち着くと同時に押し寄せた円安で、原材料高や燃料高騰などが物価高を招き、人手不足(人件費高騰)も企業収益を圧迫。事業規模が小さいほど価格転嫁は難しいだけに、収益改善が遅れた企業は融資返済の負担が増している。

 政府は返済開始に伴う中小企業の破たんを防ぐため、「コロナ借換支援」などの各種資金繰り支援を2024年6月まで実行した。7月以降は、経営改善・再生支援に重点を置いた支援に移行し、信用保証協会は「経営力強化保証制度」を設けて保証料を減免した制度融資を始めた。これらの施策は倒産抑制に一役買っているが、抜本的な経営改善に至らず倒産先送りとの指摘もある。

 これから年末に向け資金需要が高まる時期を迎える。だが、収益改善が進まず過剰債務を解消できない企業は、売上増に見合った資金需要に対応できず黒字倒産に追い込まれる可能性も危惧される。金融機関の貸出金利が上昇局面に入り、中小企業への抜本的な支援と同時に、企業側も自発的な経営改善への取り組みが急がれる。

※本調査は、企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」を受けていたことが判明した倒産(法的・私的)を集計、分析した。


2024年10月度の「ゼロゼロ融資」利用後倒産は40件、5カ月連続で前年を下回る

 2024年10月度の「ゼロゼロ融資」利用後の倒産は40件(前年同月比21.5%減)で、前年同月より11件減少した。月次では6月以降、5カ月連続で前年同月を下回って推移している。
 負債総額は91億5,600万円(同37.1%減)で、3カ月ぶりに前年同月を下回った。単月としては、6月以来、4カ月ぶりに100億円を割り込んだ。

ゼロゼロ融資利用後倒産 月次推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

中小企業の賃上げ率「6%以上」は9.1% 2025年度の「賃上げ」 は企業の85%が予定

2025年度に賃上げを予定する企業は85.2%だった。東京商工リサーチが「賃上げ」に関する企業アンケート調査を開始した2016年度以降の最高を更新する見込みだ。全体で「5%以上」の賃上げを見込む企業は36.4%、中小企業で「6%以上」の賃上げを見込む企業は9.1%にとどまることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

次世代電池のAPB、経営騒動の舞台裏 ~ APB・大島麿礼社長 単独インタビュー ~

次世代リチウムイオン電池「全樹脂電池」の開発や製造を手がける技術系ベンチャーのAPB(株)が注目を集めている。大島麿礼社長が東京商工リサーチの単独取材に応じた(取材日は4月10日)。

3

  • TSRデータインサイト

コロナ禍で急拡大の「マッチングアプリ」市場 新規参入のテンポ鈍化、“安全“投資で差別化

20代、30代の若者を中心に、恋活や婚活、恋愛の真面目な出会いを求めるマッチングアプリの利用が広がっている。マッチングアプリの運営会社はコロナ禍を境に急増し、社数は6年間で5.6倍になった。2019年3月末の5社から、2025年3月末は28社と6年間で大幅に増えた。

4

  • TSRデータインサイト

丸住製紙(株)~ 倒産した地元の“名門”製紙会社の微妙な立ち位置 ~

2月28日に新聞用紙の国内4位の丸住製紙(株)(四国中央市)と関連2社が東京地裁に民事再生法の適用を申請してから2週間が経過した。負債総額は約590億円、債権者数は1,000名以上に及ぶ。愛媛県では過去2番目の大型倒産で、地元の取引先や雇用への影響が懸念されている。

5

  • TSRデータインサイト

介護離職者 休業や休暇制度の未利用54.7% 規模で格差、「改正育児・介護休業法」の周知と理解が重要

団塊世代が75歳以上になり、介護離職問題が深刻さが増している。ことし4月、改正育児・介護休業法が施行されたが、事業規模で意識の違いが大きいことがわかった。

TOPへ