• TSRデータインサイト

2024年上半期の「病院・クリニック」倒産は18件 過去20年で3番目、競合やコストアップが経営を圧迫

~ 2024年上半期(1-6月)「病院・クリニック」の倒産動向調査~

 2024年上半期(1-6月)の「病院・クリニック」の倒産は18件(前年同期比50.0%増)で、上半期では過去20年で2009年(26件)、2007年(19件)に次ぐ、3番目の高水準だった。
 内訳は、「病院」が3件(前年同期1件)、「有床診療所」が5件(同6件)、「無床診療所」が10件(同5件)で、参入障壁の低い「無床診療所」の倒産が件数を押し上げた格好となった。
 負債総額は、54億4,600万円(前年同期比67.1%減)で前年同期から大幅に減少、3年ぶりに前年同期を下回った。最大の倒産は(医)篤信会(長崎県)の負債11億7,000万円だった。負債1億円未満が6件(前年同期ゼロ)と小規模クリニックの倒産が増え、負債は小口化した。

 病院・クリニックの倒産は、熾烈な競争や経営者の高齢化、後継者不足、そしてコロナ禍後に上昇をたどる電気代や人件費など、複合的な要因がある。倒産した病院・クリニックで、業歴20年以上は13件(前年同期比85.7%増)と約7割(構成比72.2%)を占めている。長年のノウハウを蓄積しても、新たな病院・クリニックが開設され競合が激しさを増す一方、人件費や光熱費、設備更新費用などが収益を圧迫するケースが多い。後継者問題も深刻で、先行きの見通しがたたないまま倒産に至る病院・クリニックは今後も増加基調をたどる可能性が高い。


病院・クリニックの上半期(1-6月)倒産件数推移

※ 本調査は、日本産業分類の「病院」「一般診療所」の倒産(負債1,000万円以上)を集計、分析した。



上半期(1-6月)の病院・クリニックの倒産は18件、上半期では2009年、2007年に次ぐ3番目

 2024年上半期(1-6月)の病院・クリニックの倒産は18件(前年同期比50.0%増)で、前年同期を6件上回った。倒産形態は、「破産」が16件(構成比88.8%)、「民事再生法」と「取引停止処分」が各1件(同5.5%)で、再建を諦めた破産が9割近くを占めた。
 原因別は、最多が「販売不振」の8件(前年同期比14.2%増)。次いで、赤字累積など「既往のシワ寄せ」が6件(前年同期ゼロ)と続く。

 2023年の新設法人数は、「病院」が67社(前年比17.5%増)と足元では増加したが、集計を開始した2013年以降では、2013年(240社)をピークに減少傾向にある。一方、新規参入の障壁が低い「クリニック(診療所)」は940社(前年比1.0%増)で、過去10年で最多を更新した。中堅規模の病院は設備維持や人件費の負担が大きく、売上不振(収益不足)や赤字累積の苦しい経営に直面するケースもみられる。また、小資本で開業できるクリニックでは、コストと診療報酬のバランス維持が難しく、厳しい競争環境のなかで倒産が増えている。

 従業員数別の倒産件数は、10人未満が10件(前年同期5件)と半数を超え(構成比55.5%)、小規模の病院・クリニックの苦境が浮き彫りになった。

 地区別は、最多が関東8件(前年同期3件)で、このうち東京が6件と集中した。次いで、九州4件(同3件)、近畿2件(同ゼロ)、北海道・東北・中部・四国が各1件だった。


2024年上半期 主な「病院・診療所」の倒産(抜粋)


人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【解説】秀和システムの法的整理、異変察知は「船井電機より前」

(株)秀和システム(TSRコード:292007680、東京都)への問い合せは、船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の破産の前後から急増した。ところが、あるベテラン審査マンは「ERIが弾けた時からマークしていた」と耳打ちする。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月27日時点) 上場企業「役員報酬1億円以上開示企業」調査

2025年3月期決算の上場企業の多くで株主総会が開催された。6月27日までに2025年3月期の有価証券報告書を2,130社が提出した。このうち、役員報酬1億円以上の開示は343社、開示人数は859人で、前年の社数(336社)および人数(818人)を超え、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

1-6月の「訪問介護」倒産 2年連続で最多 ヘルパー不足と報酬改定で苦境が鮮明に

参議院選挙の争点の一つでもある介護業界の倒産が加速している。2025年上半期(1-6月)の「訪問介護」の倒産が45件(前年同期比12.5%増)に達し、2年連続で過去最多を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

船井電機の債権者集会、異例の会社側「出席者ゼロ」、原田義昭氏は入場拒否

破産手続き中の船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の第1回債権者集会が7月2日、東京地裁で開かれた。商業登記上の代表取締役である原田義昭氏は地裁に姿を見せたものの出席が認めらなかった。会社側から債務者席への着座がない異例の事態で14時から始まった。

5

  • TSRデータインサイト

1-6月の「人手不足」倒産 上半期最多の172件 賃上げの波に乗れず、「従業員退職」が3割増

中小企業で人手不足の深刻な影響が広がっている。2025年上半期(1-6月)の「人手不足」が一因の倒産は、上半期で最多の172件(前年同月比17.8%増)に達した。

TOPへ