• TSRデータインサイト

2024年上半期(1-6月)「物価高」倒産 374件 製造業・建設業・運輸業など下請の多い産業で増加が顕著

2024年上半期(1-6月) 「物価高」倒産状況


 原材料や資材、水道・光熱などの価格高騰が、コロナ禍から業績回復が遅れた企業に打撃を与えている。2024年上半期(1-6月)の「物価高」を一因とする倒産は374件で、前年同期(303件)の1.2倍(前年同期比23.4%増)に増えた。
 一方、負債総額は1,185億6,100万円(同61.4%減)と、大幅に減少した。

 6月28日に一時、1ドル=161円と約38年ぶりの水準に円が下落し、7月に入っても1ドル=161円台の円安が続いている。輸入物価を中心に、物価上昇による企業収益への影響が懸念される。

 産業別では、最多は製造業の91件(前年同期比19.7%増)で、次いで、建設業83件(同38.3%増)、運輸業74件(同48.0%増)の順。円安による資材や燃料、エネルギーなどの価格上昇が続くが、下請けを中心とした中小企業は上昇分の価格転嫁が難しいことを示している。

 負債額は、負債1億円以上5億円未満が169件(同25.1%増)と、4割以上(構成比45.1%)を占めた。また、形態別は、破産が334件(前年同期比26.9%増)と約9割(構成比89.3%)を占めた。

 2024年上半期の「物価高」倒産は、6月を除く、1月から5月まで5カ月連続で前年同期を上回った。四半期別の平均件数は、2023年4-6月期が53件だったが、2024年は1-3月期は60件、4-6月期は64件と60件台で推移している。
 経済活動が平時に戻るなか、売上増で仕入が増加するが、物価上昇が企業の資金需要を押し上げている。また、コロナ禍支援の副作用で過剰債務を抱え、新たな資金調達が難しい企業も少なくない。物価高だけでなく、人件費や借入返済などで資金負担は増しており、金融機関は財務だけでなく、企業の将来性を見極め、企業の実情に見合った支援が求められる。

※本調査は、2024年上半期(1-6月)の企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、①仕入コストや資源・原材料の上昇、②価格上昇分を価格転嫁できなかった、等により倒産(私的・法的)した企業を集計、分析した。

「物価高」倒産月次推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【解説】秀和システムの法的整理、異変察知は「船井電機より前」

(株)秀和システム(TSRコード:292007680、東京都)への問い合せは、船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の破産の前後から急増した。ところが、あるベテラン審査マンは「ERIが弾けた時からマークしていた」と耳打ちする。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月27日時点) 上場企業「役員報酬1億円以上開示企業」調査

2025年3月期決算の上場企業の多くで株主総会が開催された。6月27日までに2025年3月期の有価証券報告書を2,130社が提出した。このうち、役員報酬1億円以上の開示は343社、開示人数は859人で、前年の社数(336社)および人数(818人)を超え、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

1-6月の「訪問介護」倒産 2年連続で最多 ヘルパー不足と報酬改定で苦境が鮮明に

参議院選挙の争点の一つでもある介護業界の倒産が加速している。2025年上半期(1-6月)の「訪問介護」の倒産が45件(前年同期比12.5%増)に達し、2年連続で過去最多を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

船井電機の債権者集会、異例の会社側「出席者ゼロ」、原田義昭氏は入場拒否

破産手続き中の船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の第1回債権者集会が7月2日、東京地裁で開かれた。商業登記上の代表取締役である原田義昭氏は地裁に姿を見せたものの出席が認めらなかった。会社側から債務者席への着座がない異例の事態で14時から始まった。

5

  • TSRデータインサイト

1-6月の「人手不足」倒産 上半期最多の172件 賃上げの波に乗れず、「従業員退職」が3割増

中小企業で人手不足の深刻な影響が広がっている。2025年上半期(1-6月)の「人手不足」が一因の倒産は、上半期で最多の172件(前年同月比17.8%増)に達した。

TOPへ