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藤田観光・伊勢社長 単独インタビュー(前編)

 コロナ禍で2020年は複数のホテルや施設の営業休止を余儀なくされた藤田観光(株)(TSR企業コード:291046878、文京区、東証プライム)。 
 東京商工リサーチ(TSR)は、藤田観光の伊勢宜弘社長に、コロナ禍での対応やインバウンドの動向、今後の事業面での取り組みを訊いた。


―新型コロナ感染拡大から3年が経過した

 2020年1月、中国で新型コロナウイルス感染症の発生が日本で報じられた。その後、国内でも感染が確認され、クルーズ船での集団感染などもあり影響は拡大していった。間もなく、東京都がロックダウンする話も出た。   
 どのような特徴をもつウイルスか分かっていないことも多く、3月の2019年度の株主総会では、席をどうしたらいいかなど手探りの状態で行ったのが印象に残っている。その年は、出席する株主も大幅に減り、皆が未知のウイルスを恐れている状態だった。

―その後4月に緊急事態宣言が発出された

 緊急事態宣言で、お客様の動きが止まり、いつもは賑わっている銀座も人が歩いていない状態となった。やむを得ず全国的にホテルの一時休業や営業縮小を行った。婚礼はキャンセルや延期が多く発生した。その後もコロナ禍の収束は見えず、秋の予定が今度は来春にと、延期するお客様も多くいた。時間が経っても状況は改善せず、日を追うごとに業績は悪化していった。
 お客様に少しでも安心していただくため、衛生環境を強化し、各金融機関から借り入れを行い、何とか営業を続けてきた。10月からはGo To トラベルキャンペーンが開始され、それまでの我慢の反動からかお客様が増え、2020年はかろうじて債務超過にはならず、薄氷を踏む思いで年度決算を終えた。「債務超過だけは回避したい」という思いだった。

―行動制限は2021年も続いた

 1月~3月の第1四半期は、例年、春節によるインバウンドで賑わっていたが、これもまったく望めない。必然的に、第1四半期が終わった時には債務超過になることが見えていた。「どうにか資本対策をしなければ」と模索を続け、当社の重要な資産である太閤園(大阪)売却の話がまとまった。売却益が300億円以上あり、なんとかしのぐことができた。そして資金の確保と並行して進めていた固定費の削減の一環として早期希望退職を募り、応募した315名の仲間と別れることになった。社長として大切な資産を売り、仲間も失うということ、これが今までで一番忸怩たる思いだった。

―さらに資本注入も行った

 資本は厚くなったが、コロナ禍がどのぐらい続くかわからない。資本が減少する可能性も否定できないこともあり、2021年3月に日本政策投資銀行(DBJ)から発表された資本性資金の調達を協議した。臨時株主総会を経て9月に150億円の増資をした。配当は4%だったが優先株であるということで、やむなしと判断した。太閤園の売却と増資でコロナ前の自己資本比率まで復活した。
 ただ、2020年の営業利益が206億円の赤字、21年も158億円の赤字だったこともあり、この増資がなかったら、次のステップへは踏み出せない状況だった。

―2022年3月以降、国内の行動制限は徐々に緩和された

 2022年も赤字は継続していたが、徐々に回復してきた。マーケットも少しずつ改善してきたので、保守的にみても23年(12月期)はプラスになる見通しだ。具体的には言えないが、1月、2月の段階で、予想より良い状況。今後はマスクなしで行動できるようになり、5月に新型コロナウイルス感染症が季節性インフルエンザと同等の5類の扱いになることで、国内のお客様も少しずつ普通の生活に戻っていくと思う。

―コロナ禍での変化は

 Zoomなどにより、リモートで会議や商談ができるようになったことだ。今、ようやく出張も再開されているが、一時期、新幹線に乗って出張することが少なくなった。
 そのため、出張での利用需要の高かったワシントンホテルの稼働が大きく落ち込んだ。ただ、学びもあり、新しいニーズに沿った商品提供や、コロナ後を見据えた機械化や対人対面時間の低減のため、自動チェックイン機の導入を急速に進めた。今年7月にオープンする箱根ホテル小涌園はオールキャッシュレス。現金は一度も使わない。クレジットカードや二次元コード決済などで支払いをする次代のリゾートホテルだ。コロナにより厳しい状況をくぐり抜けてきた我々は、逆に言うと、コロナで変われたとも思う。

ホテル業界は大手を中心に稼働率も改善している

 国内マーケットと海外からのインバウンド、二つに分かれるが、国内は全国旅行支援がある。今まで出控えていた方が、お得なうちに旅行していただいたということでそれがプラスになった。
 今は海外も含めて、「良いものには高いお金を払ってもいい」という流れにはなっている。

―コロナ前に訪日観光客の半分を占めていた中国からのインバウンドが消失した

 当社の2019年のインバウンドシェアでは中国が約半分を占めていた。ところが、現状(3月上旬)は、中国本土からの入国は、入国規制強化の影響もあり、ほぼない。代わりに(2022年)10月以降、韓国からの観光客が増えている。1月は韓国でも旧正月の休暇期間があり、渡航される方がとても多かった。



取材に応じる伊勢社長

取材に応じる伊勢社長

―春節の動向は

 春節に入っても中国からのお客様が多かったという感触はない。メインは韓国からだった。日本には入国制限措置があったため、今年の春節は中国の人は多くがタイに行ったのではないかと思う。タイは中国本土からの水際対策は実施していない。中国の人口を考えると、需要増加のインパクトは何十倍も違う。
 ただ今は、まだまだエアラインが少ない。2019年の冬季、中国との便は週に1,300便弱ぐらいあったが、今(2023年3月初旬)は50便程度のみ。だが、それだけまだ増える余地がある。3月1日から入国制限が少し緩和されたと言っても、発着は成田、羽田、関空と限定的。エアラインが増えるのはこれから。便数が増え、各地方都市まで拡大されると、地方の観光地にもインバウンド客がどんどん増えると思う。

―エアラインに対するアプローチは

 大手航空会社については、すでにパッケージ商品がある。この便で行って、ここに泊って、ここに行って、と。自身でルートを作るダイナミックパッケージもほぼ定着した。我々もエアラインや旅行会社に対しては営業、アプローチを積極的に行っている。
 3月末の桜のシーズンには、桜目当ての外国人観光客がたくさんいらっしゃると考えている。桜をテーマにしたパッケージツアーも多かったが、直近2年はインバウンドの受け入れがなかった。日本の桜はとても商品価値があるし、海外の人から見ると絶対行きたいテーマだ。桜のシーズンには、訪日客が増えるだろう。

―インバウンドの回復に向けた課題は

 今、京都を含め大都市圏だけに集中しており、オーバーツーリズムになる土地もでてくるだろう。ただ、地方都市にも注目が高まっているように感じる。例えば、ニューヨークタイムズの記者が「2023年に行くべき世界の旅行先」として盛岡を取り上げた。今後、盛岡人気が過熱していくのではないか。わんこそばや街のアンティークなカフェを訪れたい外国人客は多く、さらに、岩手銀行の煉瓦造りの本庁舎は、東京駅を設計した辰野金吾氏が手掛けており、海外でも注目されている。コンパクトで、徒歩圏内に色々な観光スポットがあるのも良いという。今後、日本の隠れた観光地など、外国人が喜ぶような地域が多く発掘され、地方都市同士を結ぶ国内エアラインも増えていってほしい。当社としてもそうした地域に進出したいと考えている。

(続く)


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2023年4月5日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

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