• TSRデータインサイト

「後継者難」倒産 2月は過去3番目の多さ

~ 2023年2月「後継者難」倒産の状況 ~


 2023年2月の後継者不在に起因する「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は29件(前年同月比3.3%減)で、2月としては2年ぶりに前年同月を下回った。ただ、調査を開始した2013年以降では前年同月の30件に次いで、3番目の高水準だった。

 要因別では、代表者の「死亡」が16件(構成比55.1%)、「体調不良」が8件(同27.5%)で、この2要因で「後継者難」倒産の82.7%(前年同月90.0%)を占めた。
 産業別では、最多が建設業の7件(前年同月比30.0%減)。次いで、サービス業他6件(同33.3%減)、製造業(前年同月ゼロ)と小売業(前年同月比42.8%減)が各4件と続く。
 2022年の経営者の平均年齢は、63.02歳(前年62.77歳)と上昇が続いている。2022年の「後継者不在率」調査(約17万社対象)では、約6割(59.9%)の企業で後継者が決まっていない。
 また、2022年に休廃業・解散した企業の経営者は、60代以上が86.4%と高齢化が進んでいる。
 中小・零細企業は、人的・資金的な制約から事業承継や後継者育成への取り組みが難しいのが実情だ。こうした状況から、銀行は規制緩和で投資専門子会社を設立し、企業買収に動き出すが、やっと端緒についたばかりだ。倒産や休廃業・解散は、地域雇用の受け皿の消失に加え、地域経済の衰退を招きかねない。コロナ禍の出口戦略として、国や自治体、金融機関、再生ファンドなどが協力し、中小・零細企業の事業再生や事業承継に取り組むことが求められる。

※本調査は「人手不足」関連倒産(後継者難・求人難・従業員退職・人件費高騰)から、2023年2月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)を抽出し、分析した。

2月は2年ぶりに前年同月を下回る

 2023年2月の「後継者難」倒産は29件(前年同月比3.3%減)で、2月としては2年ぶりに前年同月を下回った。ただ、2月度では調査開始した2013年以降で、2020年(31件)、2022年(30件)に次いで、3番目の高水準だった。負債1,000万円以上の倒産に占める構成比は5.0%で、前年同月の6.5%より1.5ポイント低下した。
 企業倒産は、2023年2月まで11カ月連続で前年同月を上回り、低水準ながら増勢を強めている。それに歩調を合わせるように「後継者難」倒産も一進一退を繰り返しながら高水準で推移し、後継者不在は経営リスクの一つになっている。
 代表者が高齢であるほど業績悪化をたどりやすい。これは将来投資や事業再構築、時流に合わせた弾力的な経営が難しいことも影響している。後継者不在の経営者は、雇用確保や事業継続に向けた様々な選択肢と早い決断が求められる。


「後継者難」倒産推移

【要因別】「死亡」が5割超、「体調不良」を合わせると8割を超える

 要因別件数は、最多が代表者などの「死亡」の16件(前年同月比14.2%増、構成比55.1%)で、4年連続で前年同月を上回った。次いで、「体調不良」が8件(同38.4%減、同27.5%)で、2年ぶりに前年同月を下回った。
 「死亡」と「体調不良」は合計24件(前年同月比11.1%減)で、構成比は82.7%(前年同月90.0%)を占めた。
 このほか、「高齢」が4件(前年同月比33.3%増)で、2年連続で前年同月を上回った。
 代表者の高齢化が進む一方、後継者の育成を先送りするケースが多い。代表者が経営から資金面まで経営全般を担うと、代表者の「死亡」や「体調不良」などの不測の事態がそのまま事業継続を難しくする経営リスクになっていることを示している。

「後継者難」倒産 要因別

【産業別】10産業のうち、4産業で増加

 産業別件数は、10産業のうち、製造業、卸売業、不動産業、運輸業の4産業で、前年同月を上回った。
 不動産業が2件(前年同月比100.0%増)が2年ぶり、製造業4件(前年同月ゼロ)と卸売業3件(前年同月比50.0%増)が3年ぶり、運輸業が2件(前年同月ゼロ)で4年ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
 一方、最多の建設業は7件(前年同月比30.0%減)で、2月としては2年ぶりに前年同月を下回った。このほか、小売業4件(同42.8%減)とサービス業他6件(同33.3%減)も、それぞれ2年ぶりに前年同月を下回った。
 情報通信業は、前年同月と同件数の1件。農・林・漁・鉱業は、3年連続で発生しなかった。また、金融・保険業は、調査を開始した2013年以降の11年間で発生していない。

 業種別では、前年同月に発生がなかった土木工事業が2件、木造建築工事業、土工・コンクリート工事業、一般管工事業、めん類製造業、プラスチック製容器製造業、溶融めっき業、電気計測器製造業、パッケージソフトウェア業、一般貸切旅客自動車運送業、一般貨物自動車運送業、自動車卸売業、肥料・飼料卸売業、男子服小売業、自動車(新車)小売業、花・植木小売業、不動産代理業・仲介業、不動産管理業、日本料理店、劇団、訪問介護事業などが各1件で、前年同月を上回った。

「後継者難」倒産 産業別

【形態別】破産が8割超

 形態別件数は、消滅型の「破産」が25件(前年同月比10.7%減)で最多だったが、2年ぶりに前年同月を下回った。
 一方、「特別清算」は2件(同100.0%増)で、2年ぶり前年同月を上回った。また、再建型の「民事再生法」は1件で、2月としては2013年に調査を開始した以降で初めて発生した。
 代表者が経営全般を担っている企業は、後継者の育成や事業承継まで手が回らない場合、代表者に不測の事態が生じると事業継続に支障をきたし、破産を選択する傾向が強い。

「後継者難」倒産 形態別

【資本金別】6年ぶりに1千万円以上が半数超

 資本金別件数は、「1千万円以上」が15件(前年同月比87.5%増)で、2月としては3年ぶりに前年同月を上回った。構成比は51.7%(前年同月26.6%)で、2017年(66.6%)以来、6年ぶりに半数を超えた。
 一方、「1千万円未満」は14件(前年同月比36.3%減)で、2年ぶりに前年同月を下回った。

「後継者難」倒産 資本金別

【負債額別】1億円未満が6割超

 負債額別件数は、「1億円未満」が19件(前年同月比17.3%減)で、2月としては2年ぶりに前年同月を下回った。
 「1億円以上5億円未満」は8件(同33.3%増)、「5億円以上10億円未満」は2件(同100.0%増)で、1億円以上の構成比は34.4%と、大半は1億円未満が占めている。
 「10億円以上」は、5年連続で発生がなかった。

「後継者難」倒産 負債額別

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

破産の全東信、20年前から粉飾決算か=600億円超の債務超過のおそれ

決済代行を手掛けていた(株)全東信(TSRコード:575448075、大阪市中央区)の破産劇の裏側がわかってきた。東京商工リサーチ(TSR)の取材で、業績悪化を隠すために、多額の預金の架空計上に手を染めていた実態がみえてきた。

2

  • TSRデータインサイト

全東信の破産、焦付不可避と機会損失 ~外食団体、「セーフティネット保証1号」適用を要請~

クレジットカード決済代行を手掛けていた(株)全東信(TSRコード:575448075、大阪市中央区)の破産の余波が広がっている。7月6日に負債1,259億円(2025年3月期決算時点)を抱え、大阪地裁から破産開始決定を受けて以降、取引金融機関が取り立て不能等を次々と開示している。

3

  • TSRデータインサイト

全東信の粉飾、資本と営業権と不動産から読み解く

大手決済代行の(株)全東信の粉飾は見抜けたのか。破産したいま、過去の決算書を基に違和感を指摘するのは難しくない。預金残高の水増しや債権の架空計上など、全東信はありきたりの手口に手を染めていた。

4

  • TSRデータインサイト

準自己破産の全東信、近畿産業信組が219億円貸出

大手決済代行の(株)全東信(TSRコード:575448075、大阪府)の資金調達先が東京商工リサーチ(TSR)の取材で判明した。

5

  • TSRデータインサイト

止まらない建設業の倒産、職別工事が総合工事を抜く ~ 施工力が「希少資源」、動き始めた内製化 ~

2025年の建設業の倒産は、2,014件(前年比4.6%増)で、4年連続で前年を上回り、2013年(2,421件)以来、12年ぶりに2,000件を超えた。 コロナ禍の2021年に1,065件と2000年以降では最少を記録。その後は増勢に転じ、わずか4年で約2倍に増加した。

TOPへ