• TSRデータインサイト

「ゼロ・ゼロ融資」利用後の倒産 2月は前年同月の2.5倍増 2020年以降の累計は681件に

~ 2023年2月「ゼロ・ゼロ融資後」倒産 ~


 2023年2月の 「実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)」を利用した後の倒産は、48件(前年同月比152.6%増)と大幅に増加した。2022年8月から7カ月連続で40件を上回り、2020年7月からの累計は681件に達した。
 新型コロナ感染拡大の経済対策だった「ゼロ・ゼロ融資」は、中小・零細企業の資金繰り緩和に貢献し、倒産抑制に繋がった。だが、その副作用で過剰債務を招き、業績回復が遅れた企業が新たな資金調達に苦慮するケースも少なくない。こうした企業の息切れが、倒産を押し上げている。


 産業別では、最多は居酒屋など飲食業(9件)を含むサービス業他が14件(構成比29.1%)。コロナ禍の行動制限解除後も客足が戻らず、一方で深刻な人手不足に加え、材料費や光熱費などの上昇が経営を直撃している。
 負債額別では、負債1億円以上が25件(構成比52.0%)で過半数を占めた。ゼロ・ゼロ融資などの支援策で過剰債務に陥った企業も多く、小・零細企業でも倒産時の負債が膨らむ傾向にある。

 「ゼロ・ゼロ融資」の返済は、今年春からピークを迎えるが、元本返済だけでなく利子払いも最長3年間の猶予期間が順次終了する。業績の二極化が鮮明になるなか、回復が遅れた企業にも物価高や賃上げ圧力が強まっている。
 政府は「ゼロ・ゼロ融資」の返済負担軽減のため、借換保証制度を2023年1月から開始した。だが、経営行動計画や収支計画、返済計画など、先行き不透明な企業は計画策定の実行が難しく、こぼれ落ちる企業のフォローも急務になっている。売上増に対する資金需要も増す時期だけに、過剰債務を抱えた企業の脱落がピッチを速める可能性も高まっている。

※本調査は、企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)」を受けていたことが判明した倒産(法的・私的)を集計、分析した。


2月の「ゼロ・ゼロ融資」を利用した倒産は48件、前年同月から2.5倍増


 2023年2月の「ゼロ・ゼロ融資」を利用した倒産は48件(前年同月比152.6%増)で、前年同月(19件)から2.5倍増となった。「ゼロ・ゼロ融資」を利用後の倒産は、2022年3月から急増し、その後もハイペースが続いている。
 「ゼロ・ゼロ融資」の元本返済と利払いは今年春以降、本格化する。このため、新たな返済猶予と同時に、過剰債務が負担となって新規調達が難しい企業の脱落ペースが一段と上がることも懸念されている。


ゼロ・ゼロ融資後倒産月次推移

【産業別】サービス業他が14件で最多


 産業別は、最多がサービス業他の14件で、全体の約3割(構成比29.1%)を占めた。このうち、居酒屋などの飲食店や持ち帰り飲食サービス業を含む飲食業が9件にのぼった。コロナ前の客足が戻らず、人件費や材料価格、光熱費の高騰で採算が悪化し行き詰まった。
 このほか、建設業9件(同18.7%)、製造業と卸売業が各8件(同16.6%)、運輸業4件(同8.3%)、小売業3件(同6.2%)、情報通信業2件(同4.1%)の順。
 農・林・漁・鉱業と金融・保険業、不動産業は、いずれも前年同月と同様に発生しなかった。



ゼロ・ゼロ融資後の倒産 産業別状況

【業種別】最多は飲食店


 業種(中分類)別では、居酒屋を含む「飲食店」が8件で最多だった。このほか、「食料品製造業」と「飲食料品卸売業」が各3件で続き、飲食関連業種が上位を占めた。
 「総合工事業」が6件で2番目に多かった。資材価格の高騰や人手不足が直撃した。
 このほか、建設業では「職別工事業」が2件、「設備工事業」が1件発生した。小・零細規模の多い業種だが、資材調達遅れに伴う工事延期、資材値上げなどの影響も大きい。

【負債額別】負債1億円以上が過半数


 負債額別は、最多が「1億円以上5億円未満」の18件で、約4割(構成比37.5%)を占めた。
 以下、「1千万円以上5千万円未満」14件(同29.1%)、「5千万円以上1億円未満」9件(同18.7%)、「10億円以上」5件(同10.4%)、「5億円以上10億円未満」2件(同4.1%)の順。
 1億円以上が25件(同52.0%)で、過半数を占めた。



ゼロ・ゼロ融資後の倒産 負債額別状況

【形態別】破産が8割を占める


 形態別では、最多は消滅型の破産が39件(構成比81.2%)で、全体の8割を占めた。特別清算は発生がなく(前年同月比±0.0%)、消滅型は破産のみだった。
 一方、再建型の民事再生法は4件(構成比8.3%、前年同月ゼロ)発生した。
 産業用機械製造の(株)トガシ技研(山形、負債56億円)、温泉旅館経営の(株)丸峰観光ホテル(福島、同20億7,600万円)が民事再生法を申請した。

【従業員数別】10人未満が6割


 従業員数では、最多は5人未満が23件(構成比47.9%)で、約半数を占めた。
 次いで、10人以上20人未満が11件(同22.9%)、5人以上10人未満と20人以上50人未満が各6件(同12.5%)で続く。前年同月に発生のなかった50人以上300人未満は2件発生した。
 このほか、300人以上の倒産は、前年同月と同様に発生しなかった。

【地区別】最多が関東の21件


 地区別では、最多が関東の21件で4割超(構成比43.7%)を占めた。
 次いで、東北と近畿が各8件(同16.6%)、九州が5件(同10.4%)、北海道と中部が各3件(同6.2%)で続く。北陸と中国、四国はゼロだった。

 都道府県別では、東京都が11件で最多。以下、埼玉県が6件、福島県と大阪府が各4件、北海道、宮城県、静岡県、福岡県が各3件と続いた。 

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

政策金利引き上げ 「1年は現状維持」が59.6% すでに「上昇」が52.0%、借入金利は上昇局面に

企業の59.6%が、これ以上の政策金利の引き上げに「待った!」を希望していることがわかった。今後の望ましい政策金利の引き上げ時期は、「向こう1年は現状維持」が59.6%で最多だった。「引き下げ」も23.6%あり、企業経営の観点では利上げを望む声は少数(16.6%)にとどまった。

2

  • TSRデータインサイト

中小企業の12.2%が事業資金を個人名義で調達 保証債務に上乗せ負担、債務整理や廃業を複雑に

事業資金を代表者名義で調達したことのある中小企業は12.2%に達することがわかった。政府や金融界は「経営者保証ガイドライン」(適用開始2014年2月)や「事業再生ガイドライン」(同2022年4月)などを通じ、企業が抱える債務を整理する際に個人保証が足かせにならないよう取り組んでいる。

3

  • TSRデータインサイト

2025年「早期・希望退職募集」は 1万7,875人 、リーマン・ショック以降で3番目の高水準に

2025年の「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は43社(前年57社)で、募集人数は1万7,875人(同78.5%増)に達したことがわかった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年7-9月の客室単価 1万6,975円 稼働率80%超え 人手不足の解消が課題

ホテル運営の上場12社(13ブランド)の2025年7-9月期の平均客室単価は、1万6,975円(前年同期比8.9%増)で前年同期を上回った。7-9月期で、13ブランドの平均が前年を上回るのは3年連続。平均稼働率は83.9%で前年同期を2.9ポイント上回り、 稼働率も3年連続で上昇している。

5

  • TSRデータインサイト

【最新決算】 私立大学、半数以上が赤字に転落 売上高トップは順天堂、利益トップは帝京大学

全国の私立大学を経営する545法人のうち、半数を超える287法人が直近の2025年3月期決算で赤字だったことがわかった。  

TOPへ