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2022年は410件、2年連続で前年を下回る ~ 2022年「負債1,000万円未満の倒産」状況 ~

  2022年の負債1,000万円未満の小口の企業倒産は410件(前年比13.1%減)で、2年連続で減少した。コロナ禍当初の2020年は630件で、2003年以降の20年間で初めて600件台に乗せたが、コロナ関連支援が浸透するに伴い倒産は抑制されている。
 このうち、「新型コロナ」関連倒産は116件(同24.7%増)で、負債1,000万円未満の倒産の約3割(構成比28.2%)を占めた。

産業別は、最多が「サービス業他」の190件(前年比17.3%減)で、負債1,000万円未満の倒産のほぼ半数(構成比46.3%)を占めた。サービ業他では、通所・短期入所介護事業(2→10件)、労働者派遣業(6→7件)、理容業(2→4件)などで、前年を上回った。
次いで、「建設業」が81件(前年比20.8%増)、「小売業」が45件(同28.5%減)と続く。
原因別は、「販売不振」が275件(同20.2%減)で、全体の67.0%を占めた。以下、「他社倒産の余波」40件(同8.1%増)、「事業上の失敗」34件(同100.0%増)の順。
資本金別は、「個人企業他」を含む資本金1千万円未満が387件(同11.8%減)で、全体の9割超(構成比94.3%)を占めるなど、ほとんどが小・零細企業だった。
形態別は、「破産」が404件(前年比11.5%減)で、構成比は98.5%と大半を占めた。小・零細企業は資金力が乏しく、再建が難しく事業継続を断念する場合、破産を選択するケースが多い。
コロナ関連支援策は資金繰りを一時的に緩和し、倒産抑制に大きな効果をみせた。だが、2022年に入り支援策が縮小すると、効果も薄れてきた。さらに、2023年は「実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)」の返済もピークを迎えるが、円安や資源高による物価上昇、人件費上昇などで資金負担の増加が危惧されている。過剰債務に陥った中小・零細企業は多く、新たな資金調達に課題を抱えており、今後は廃業を含めた動きも活発になる可能性が高い。

  • 本調査は、2022年に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、企業倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない、負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。

倒産410件、2年連続で前年を下回る

 2022年の負債1,000万円未満の倒産は410件(前年比13.1%減)で、2年連続で前年を下回った。
2022年は3月、4月、5月、11月の4カ月を除く8カ月間で前年同月を下回り、落ち着いて推移した。
「新型コロナ」関連倒産は116件(前年比24.7%増、前年93件)で、負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は28.2%(前年19.7%)と約3割を占めた。
負債1,000万円未満の倒産は、小・零細企業がほとんどで資金力も乏しい。コロナ支援策の効果が薄れ、業績回復も見込めない場合、事業継続の断念につながりやすいようだ。

1000万未満

【産業別】サービス業他が約5割

 産業別では、10産業のうち、増加が3産業、減少が6産業、同件数は1産業だった。
最多は、サービス業他の190件(前年比17.3%減)で、2年連続で前年を下回った。構成比は46.3%で、前年の48.7%から2.4ポイント低下した。
このほか、小売業が45件(同28.5%減)で4年連続、卸売業26件(同33.3%減)と情報通信業20件(同13.0%減)が2年連続、運輸業が8件(同50.0%減)で3年ぶり、農・林・漁・鉱業が6件(同14.2%減)で5年ぶりに、それぞれ前年を下回った。一方、不動産業11件(同37.5%増)が4年ぶり、建設業81件(同20.8%増)が3年ぶり、製造業20件(同25.0%増)が2年ぶりに、それぞれ前年を上回った。金融・保険業は前年と同件数の3件だった。

業種別では、建築工事業17件(前年5件)、通所・短期入所介護事業10件(同2件)、労働者派遣業7件(同6件)、一般電気工事業6件(同3件)、不動産代理業・仲介業5件(同2件)。
このほか、建築リフォーム工事業(同3件)、ペット・ペット用品小売業(同1件)、理容業(同2件)が各4件。
はつり・解体工事業(同1件)、一般管工事業(同2件)、貨物軽自動車運送業(同2件)、酒小売業(同1件)、中華料理店(同2件)、お好み焼き・焼きそば・たこ焼店(同1件)、警備業(同ゼロ)が各3件と、それぞれ前年を上回った。

1000万未満

【形態別】消滅型の破産が98.5%

 形態別は、「破産」が404件(前年比11.5%減、前年457件)で、2年連続で前年を下回った。
ただ、負債1,000万円未満の倒産の98.5%を占め、前年(96.8%)より1.7ポイント上昇した。
このほか、民事再生法が3件(前年8件)で、2年連続で前年同月を下回った。
負債1,000万円未満の倒産は、ほとんどが小・零細企業で、資金余力も乏しく、経営再建や事業再構築まで手が回らず、事業継続を諦めていることが浮き彫りとなっている。

【原因別】販売不振が約7割

 原因別は、最多が「販売不振」の275件(前年比20.2%減)で、2年連続で前年を下回った。
負債1,000万円未満の倒産の約7割(構成比67.0%)を占めたが、前年の73.0%より6.0ポイント低下した。「既往のシワ寄せ(赤字累積)」は19件(前年比26.9%減)だった。
『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は294件(前年比20.7%減)で、2年連続で前年を下回った。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は71.7%で、前年の78.6%より6.9ポイント低下した。
このほか、「他社倒産の余波」40件(同8.1%増)と「事業上の失敗」34件(同100.0%増)、「運転資金の欠乏」12件(同9.0%増)が、それぞれ2年ぶりに前年を上回った。
一方、代表者の病気や死亡を含む「その他」が23件(同20.6%減)で、3年ぶりに前年を下回った。

【資本金別】1千万円未満が9割以上

 資本金別は、「1千万円未満(個人企業他を含む)」が387件(前年比11.8%減、前年439件)で、2年連続で前年を下回った。構成比は94.3%で、前年の93.0%より1.3イント上昇した。
内訳は、「1百万円以上5百万円未満」154件(同1.9%減、同157件)、「個人企業他」130件(同18.7%減、同160件)、「1百万円未満」66件(同16.4%減、同79件)、「5百万円以上1千万円未満」37件(同13.9%減、同43件)だった。
このほか、「1千万円以上5千万円未満」が23件(前年比28.1%減)で、2年連続で前年を下回った。「5千万円以上1億円未満」は3年ぶり、「1億円以上」は3年連続で、それぞれ発生がなかった。

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