2022年にTSRホームページで「よく読まれた」ニュース
長引くコロナ禍で幕を開けた2022年。追い打ちをかけるようにロシアのウクライナ侵攻、物価高、エネルギー高騰、円安など、想定外の出来事に見舞われた1年も残りわずか。
2022年に東京商工リサーチ(TSR)のホームページに掲載された「TSR速報」と「データを読む」で何が一番読まれたか。2022年1~12月までのページビュー(PV)数ランキングで振り返る。
「TSR速報」、トップは神明畜産
企業の倒産・破たんを一報する「TSR速報」 のPV数トップは、「神明畜産ほか2社」だった。関連会社の「丸神運輸」も9位にランクインした。国内大手の豚・牛畜産業者で、畜産業では2011年の安愚楽牧場(負債4,330億円)に次ぐ、過去2番目の大型倒産だった。
負債規模とPV数は、必ずしも一致しない。
負債1.1兆円を抱えて民事再生法の適用を申請した「マレリホールディングス」は5位だった。事業再生ADRの内容が事前に漏れ、様々なメディアでその内容が報道されたことも影響した。一方、通所介護事業を全国でフランチャイズ展開していたステップぱーとなーの関連会社である「アジュールほか5社」は3位、元国会議員の浜田卓二郎氏が代表を務めた「弁護士法人浜田卓二郎事務所」は10位に入った。「TSR速報」は、知名度や話題性、影響力が閲覧数を左右していることがわかる。
「TSR速報」で「新型コロナ」関連が7件
上位10件では、「新型コロナ」関連の倒産・破たんが7件入った。コロナ禍の影響は全国津々浦々に広がり、2022年の「コロナ関連倒産」は時間の経過とともに増え続けた。2023年は倒産だけでなく、先送りされている休廃業と合わせ、その展開が注目される。
「データを読む」怒号の債権者集会がトップ
TSRが独自に取材したり、データを分析した「データを読む」では、TSR速報で3位の日本ロジステックの債権者説明会のレポートがトップだった。同社役員が主要取引先の楽天モバイル元従業員らと不正操作を行っていたことが発覚。怒号が飛び交う債権者集会の緊迫した模様を報じて、PV数を伸ばした。
2位は、赤色の「サクマ式ドロップス」で知られる「佐久間製菓の廃業」が入った。114年前に誕生し、野坂昭如氏の著書を映画化したアニメ『火垂るの墓』にも登場するドロップメーカーの廃業は一気にSNSで拡散した。テレビ、新聞も追いかけて注目を集めた。
3位には、急激な市場の拡大で注目された新電力大手の破産が入った。ホープの子会社である(株)ホープエナジーは負債約300億円を抱え破産し、2022年では負債第2位の倒産となった。電力需給ひっ迫と価格高騰で競争力を失った新電力の倒産は“電力難民”という言葉も生まれた。
倒産増加の兆しを伝えた記事が4位に
企業以外では、4位の「倒産増の兆し、建設業のコロナ破たんがジワリ増加」がPV数を伸ばした。新型コロナ関連の支援効果が薄れ始め、潮目の変化をいち早く伝えた記事だった。
5位には「上場企業の個人情報漏えい・紛失事故は、調査開始以来最多」が入った。大規模な個人情報流出が度々報じられ、企業の情報セキュリティに関心が高まるなか、情報管理のルーズさに警鐘を鳴らした。
2022年のPV数上位には、円安や情報セキュリティなど、コロナ外のテーマもトレンドに入った。
新型コロナ感染拡大への警戒感が薄まり、観光や外食などコロナ禍に直撃された業界でも巻き返しの機運が高まっている。ただ、2022年9月末で受付が終了した実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)は、コロナ禍の資金繰り緩和に寄与したが、一方で過剰債務という深刻な問題を招いている。
2023年にPV数を伸ばすニュースは、どの分野か。卯年が明るいキーワードで溢れる1年になりますように・・・。