• TSRデータインサイト

10月は39件、年間400件台の可能性も ~ 2022年10月『後継者難』倒産の状況調査 ~

 2022年10月の後継者不在による『後継者難』倒産(負債1,000万円以上)は、39件(前年同月比2.5%減)だった。10月としては2年ぶりに前年同月を下回ったが、2022年1-10月累計は355件(前年同期比14.8%増)に達した。年間では前年の381件を超え、初めて400件台に乗せる可能性が出てきた。
 要因別では、代表者の「死亡」が19件(構成比48.7%)、「体調不良」が13件(同33.3%)と、この2要因で『後継者難』倒産の8割(同82.0%)を占めた。
 産業別は、最多が建設業の11件(前年同月比120.0%増)で、10月では初めて10件を超えた。次いで、製造業8件(同±0.0%)、卸売業(同20.0%増)とサービス業他(同45.4%減)が各6件の順。
 2021年の経営者の平均年齢は62.77歳(前年62.49歳)に上昇した。2022年の「後継者不在率」調査(約17万社対象)では約6割(59.9%)の企業で後継者がおらず、代表者の高齢化と後継者不在は事業承継に暗い影を落としている。
 規制緩和で銀行の投資専門子会社による企業買収が可能となり、少しずつ事業承継の壁は低くなりつつある。ただ、企業価値や事業性が乏しい小・零細企業の事業承継が難しい状況に変わりはない。また、資金力にも課題を抱える小・零細企業が、独自に事業承継や後継者の育成は難しい。今後、自治体や金融機関、商工団体が一体となって後押しする形で取り組まないと、人口減少が続く地域ほど地元経済の落ち込みが現実味を帯びてくるだろう。  

  •   ※本調査は「人手不足」関連倒産(後継者難・求人難・従業員退職・人件費高騰)から、2022年10月の『後継者難』倒産(負債1,000万円以上)を抽出し、分析した。

10月の『後継者難』は39件、10月では2年ぶりに前年同月を下回る

 2022年10月の『後継者難』倒産は39件(前年同月比2.5%減)で、10月としては2020年以来、2年ぶりに前年同月を下回った。また、負債1,000万円以上の倒産全体の6.5%(前年同月7.6%)を占めた。
 コロナ関連支援策が奏功し、企業倒産は抑制された状況が続いている。だが、ここにきて支援効果も薄れ、企業倒産は4月から10月まで7カ月連続で前年同月を上回り、増勢局面に入っている。
 ここ数年、金融機関だけでなく一般企業でも企業との取引に際し、代表者の年齢や後継者の有無、育成状況を重視するようになっている。
 ただ、事業承継や後継者育成は経営基盤が脆弱な中小・零細企業が独自に取り組むことは難しく、自治体や金融機関、投資ファンドなどとの連携も重要になっている。

後継者難1

【要因別】「死亡」と「体調不良」で8割

 要因別の最多は、代表者などの「死亡」が19件(前年同月比11.7%増)で、10月では4年連続で前年同月を上回った。構成比は48.7%で、前年同月の42.5%より6.2ポイント上昇した。
 体調不良」は13件(前年同月比18.7%減、構成比33.3%)で、5年ぶりに前年同月を下回った。
 代表者などの「死亡」と「体調不良」は合計32件(前年同月比3.0%減)で、4年ぶりに前年同月を下回った。構成比は82.0%で、前年同月の82.5%より0.5ポイント低下した。
 このほか、「高齢」が5件(同28.5%減)で、2年ぶりに前年同月を下回った。
 代表者の高齢化に伴い代表者などの「死亡」や「体調不良」は、事業を継続していくうえで、経営上のリスクとなっている。  

後継者難2

【産業別】10産業のうち、4産業が増加

 産業別件数は、10産業のうち、農・林・漁・鉱業と建設業、卸売業、不動産業の4産業で前年同月を上回った。
 最多は、建設業の11件(前年同月比120.0%増)で、10月では2年連続で前年同月を上回り、初めて10件超となった。構成比は28.2%で、前年同月の12.5%より15.7ポイント上昇した。
 このほか、卸売業が6件(同20.0%増)で2年連続、不動産業が3件(同200.0%増)で3年ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。農・林・漁・鉱業は1件(前年同月ゼロ)で、7年ぶりに発生した。一方、小売業は4件(前年同月比33.3%減)で2年ぶり、サービス業他は6件(同45.4%減)で5年ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。また、運輸業(前年同月2件)は2年ぶり、情報通信業(同2件)は4年ぶりに、それぞれ発生がなかった。
 製造業が8件、金融・保険業がゼロで、それぞれ前年同月と同件数だった。

 業種別では、前年同月に発生がなかった土木工事業と建築工事業が各2件、野菜作農業、木造建築工事業、木製建具工事業、はつり・解体工事業、一般電気工事業、電気配線工事業、冷凍水産物製造業、じゅうたん・その他の繊維製床敷物製造業、ゴム製履物・同附属品製造業、建築用金属製品製造業、各種機械・同部分品製造修理業、石油卸売業、鉄鋼一次製品卸売業、事務用機械器具卸売業、ジュエリー製品卸売業、野菜小売業、二輪自動車小売業、土地売買業、不動産代理業・仲介業、貸家業、写真業、ラーメン店、配達飲食サービス業が各1件だった。

後継者難3

【形態別】破産が9割超

 形態別件数は、「破産」が36件(前年同月比5.2%減)で、10月では2年ぶりに前年同月を下回った。構成比は92.3%で、前年同月の95.0%より2.7ポイント低下した。「特別清算」は前年同月と同件数の1件にとどまり、再建型の民事再生法と会社更生法はゼロだった。
 業績不振の企業は、後継者の育成や事業承継の準備まで手が回らず、代表者に不測の事態が生じた時には事業を継続することが難しく、ほとんどが破産を選択している。

後継者難4

【資本金別】1千万円未満が5割

 資本金別件数は、「1千万円未満」が20件(前年同月比16.6%減)で、4年ぶりに前年同月を下回った。構成比は51.2%(前年同月60.0%)で、8.8ポイント低下した。このほか、「1千万円以上5千万円未満」が19件(前年同月比18.7%増)で、2年連続で前年同月を上回った。「5千万円以上1億円未満」は3年連続、「1億円以上」は10月では2013年以降、発生していない。

後継者難5

【負債額別】1億円未満が7割超

 負債額別件数は、「1億円未満」が29件(前年同月比6.4%減)で、構成比は74.3%(前年同月77.5%)だった。内訳は、「1千万円以上5千万円未満」が14件(前年同月比46.1%減)で、2年ぶりに前年同月を下回った。一方、「5千万円以上1億円未満」は15件(同200.0%増)で、2年連続で前年同月を上回った。
 このほか、「1億円以上5億円未満」が8件(同11.1%減)で、4年ぶりに前年同月を下回った。「5億円以上10億円未満」は2件(前年同月ゼロ)で、4年ぶりに発生した。
 「10億円以上」は、3年連続で発生がなかった。

後継者難6

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

ゴールデンウィーク明け、「退職代行サービス」の利用は慎重に

長かったゴールデンウィークが終わる。職場「復帰」を前に例年4月の新年度からGW明けにかけ、退職する人の話題が持ち上がる。この時期の退職代行サービスの利用も増加するという。4月に実施した「退職代行に関する企業向けアンケート調査」から利用するリスクの一端が浮き彫りになった

2

  • TSRデータインサイト

トーシンホールディングスの「信用調査報告書」

5月8日に東京地裁に会社更生法の適用を申請した(株)トーシンホールディングス(TSRコード:400797887、名古屋市、東証スタンダード)を取り上げる。

3

  • TSRデータインサイト

2025年度「医療・福祉事業」倒産、過去最多 ~ 健康と生活を支援する事業者の倒産急増 ~

生活に不可欠な医療機関や介護事業者の倒産が急増している。バブル経済1988年度(4-3月)以降の38年間で、2025年度は金融危機、リーマン・ショックを超える478件と最多を記録した。

4

  • TSRデータインサイト

2026年4月「人手不足」倒産 33件発生 春闘の季節で唯一、「人件費高騰」が増加

2026年4月の「人手不足」倒産は33件(前年同月比8.3%減)で、3カ月ぶりに前年同月を下回った。 4月の減少は2022年以来、4年ぶり。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度の「早期・希望退職」 は2万781人 約7割が「黒字リストラ」、2009年度以降で4番目の高水準

2025年度に「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は46社(前年度51社)で、人数は2万781人と前年度(8,326人)の約2.5倍に急増したことがわかった。社数は前年度から約1割(9.8%減)減少したが、募集人数は2009年度以降で4番目の高水準となった。

TOPへ